誓約魔法
10話目です。
チェイスは、協力すれば私をここから連れ出すと言ったが信じられずにいた。
「お前にとっても悪くない話だろ?どの道ここにいても3日の命だしな」
「どういう事!?何でっ!」
チェイスは呆れた目で私を見て言った。
「やっぱり昨日聞いてなかったな。領主が帰ってきたら新しい魔道具の実験をしに‘森’に行くって話だったろ?」
「……‘森’に行く事しか聞いてなかった……でも、何でそれで‘3日の命’なの?」
「最近、新しい魔道具が開発された。その魔道具は、装着した者に魔物を引き寄せる為の物らしい。それで魔物が大量にいる魔の森で実験するのさ。そこにお前を連れて行くんだ……お前なら分かるだろ?」
私は、頭が真っ白になった。
「…………………………私が魔道具を持つのね」
「あぁ……」
(私は、父にとって娘でもなんでもないのね……ただ実験に使える道具……だからといってチェイスの言葉を信じられるの?彼等にとって私は……)
「チェイスさん、1つ聞いてもいいですか?」
「チェイスでいい。何だ?」
「どうして私を助けるの?私は、あなたたちにとって、‘仲間を拐った男の娘’でしょう?」
私は、チェイスの顔を見るのが怖くてうつむいた。
「はぁ~あのなぁその答えはさっきお前自身が言ってたじゃないか」
「……え?」
私は彼の言葉に顔を上げた。
そこにあったのは、とても穏やかな笑顔だった。
「‘自分自身でどうしようもない事で’ってやつだよ。お前があの男の娘って事はお前が決めた事じゃないし、お前自身が俺たちに何かしたわけでもない。まして、お前はまだ幼い子どもだ……言動はともかくな……お前の何を恨むんだ?」
――ツウー
私の頬に涙が流れた。
「と言っても、すぐに信用できないよな。なんなら誓約魔法を使ってもいいぞ」
「ぐすっ……誓約魔法……分かった。今回は使わせてもらう………解除」
私は、涙を拭いながら答え、『障壁』を解除した。
念のため、自分に薄い『障壁』をかけている。
誓約魔法とは、契約を交わした者が‘契約を破らない’事を神に誓う魔法で、契約内容を紙に書いた物が誓約書となり、もし破った場合は誓約書に書かれた罰を受ける事になる魔法だ。
チェイスにやり方を教えてもらい、さっそくやる事にした。
「「誓約魔法」」
「1つ、私はチェイスの仲間を救出するのに協力する」
「1つ、俺と俺の仲間は‘ベイリー家の長女’に、いっさい危害を加えない。また、仲間の救出がなされた時、‘ベイリー家の長女’の脱出に協力する」
「「1つ、契約が破られた場合、破った者の‘一番大切なモノ’を失う事になる。これをもって誓約とする」」
――パァッ
私たちが誓約書を読み上げると、誓約書が光だし最後には消えてしまった。
「なぁ……脱出だけでいいのか?ちゃんと行きたいとこまで連れてくし、仲間だって探すだけでいいんだぞ?」
「救出した後は国に連れて帰るんでしょう?追手が来るかもしれないし、戦力は多い方がいいわ。私は……何とかするから、それと魔法も得意だから救出にも協力できると思うしね」
「………そうか」
私が笑顔で答えると、チェイスは何か考え込んでいた。
沈黙に耐えられなくなったので話しかける事にした。
「ねぇ、それでいつ探しに行くの?」
「あぁ、すまない。今夜にでも探してもらいたい。昼間は領主出迎えの準備でバタバタしてるからな。俺が1人で来れたのもそのおかげさ」
「分かった。チェイスが迎えに来るの?」
「そうだな……仲間と打ち合わせしておく、夕食も俺が持って来るから、その時話すって事でいいか?」
「分かった」
「じぁあ、そろそろ戻る」
チェイスはそう言って部屋を出ていった。
――グゥ~
「………取り合えずごはん食べよう」
読んでくれてありがとうございます。
次回、「捜索」です。




