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俺、魔王っす  作者: きー
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ゴブリンキング

 この森を少し行ったところにはコボック村というのどかな村がある。水資源に恵まれており、稲作が行われている。主な作物は米だ。その自然との調和風景はさながら芸術的であった。


 そんな争いとはまったくの無関係な村が魔物に蹂躙されている地獄と化していた。


「こりゃ酷いな……」


 ゴブリンやスライムなど、魔物のランク自体はそう高くはないが、ここまで大量にいると流石にBランク相当、軍隊が必要となるレベルにまでなってしまいそうだ。


「しかしなぜこんな場所に集まってるんだ?餌目当てだとしてもここまで統率がとれてるとなると、人為的なものとしか思えない。もしくは……」


 そう彼らは不自然なほど息があっていた。まるで軍隊のように隊長が存在しているような。


「ゴブリンキング、いやもっと賢い……」


 村の奥に集められた村人の生命反応を策敵してそう独り言をする。

 ゴブリンキングは単騎でBランク相当の魔物であるが、基本周りにゴブリンやスライムなどの雑魚モンスターを抱えているため、それを合わせてB+ランク、王国騎士団が出るレベルにはなっているだろう。しかし知能は高くないため作戦など取れないし、ましてや対象を生け捕りにするなどということは決してしない。


「従魔か。そうなるとかなりの実力者だな…」


 従魔とは魔物使いによって使役された魔物のことだ。おそらく今回はゴブリンキングを使役してその周りのゴブリンたちも操っているのであろうが、ゴブリンキングを使役するレベルとなると少なくともAランク、国一つを滅ぼすレベルの実力はあると想定できる。


「まぁどうでもいいけど。とりあえずボア丸、その子達を任せた!」


「ボウ!!」


「《空歩》」


 空歩は足に触れる空気を一瞬だけ凝固させ地面と同じように走ることのできる魔法。燃費が悪いため一般の魔法使いは使わないが、逢坂龍馬の莫大な魔力量からすると些細なものである。


 そのまま一直線に村の中央部、人が生け捕りにされている場所へと向かう。

 そこにはやはりゴブリンキングがいた。銀色の鎧に身を包んでいる状態で。


「やはりゴブリンキングか。それに見たところ帝国兵士の鎧だな。ということは魔物使いは帝国のもの、あるいは帝国と協力関係を結んでいるものってことか。」


 空歩を解除し、地上に降り立つ魔王。


「ゴブリンキング、悪いが村人を解放してやってくれないか?」


 約2.5mの巨体を前にひるむことなく小柄な少年は頼みごとをする。周りのゴブリンたちがいっせいに棍棒を振りかぶったが、ゴブリンキングがそれを制した。


「ナンダ人間カ?ドコカラアラワレタ?」


 術者の能力が高ければ従魔は人間の言語を理解することができる。これで主人の実力が高いという推測は当たった。


「上からだ。で、お前は何をしてるんだ?」


「ココニ人間ヲ集メル。ソレガ主様カラノ命令。」


「主人の目的は?」


「ワカラナイ。ダガ、帝国之馬車ヲ待テト言ワレタ。」


「やはり帝国絡みか……で、お前の主人の名前は?」


「アス……人間、ナゼ俺ハオ前ニ喋ッテイルンダ?」


「ちっ、さすがに阻まれたか……」


 魔王たる逢坂龍馬の能力《精神誘導》を発動しゴブリンキングに尋問していたのだが、やはり術者が妨害したみたいだ。


 ゴブリンキングが身近にあった自分の背丈くらいある黄金色の特大剣を握り締め振りかぶる。


「なるほど破邪の大剣か……」


 破邪の大剣、対魔族用に作られた聖属性を付加してある大剣だ。この大剣で傷を負った魔族は将来その傷が癒えることはないというものなのだが、重すぎて並みの人間ではまず扱えないという残念武器だ。ゴブリンキングに持たせることによって力の方は解決できるが、聖属性の恩賞を受けるためには人間の神に対する信仰がなければいけない。どの道使えない代物だ。


「死ネ侵入者!!」


 周りのゴブリンが一斉に棍棒を振り回す。そしてその中央にいた逢坂は当然魔物の群れに埋め尽くされてしまった。


「温いぞ《覇》!!」


 覇は魔力を持つものなら誰にでも使用できる初級魔法。魔力を衝撃波として具現化し放つものであるが、変換効率が非常に悪い。一般人ならせいぜい猫騙し程度にしか使えない。一般人程度ならだが……


 周りの雑魚ゴブリンが数十メートル近く吹き飛ばされた。そして前にしているのが只者ではないという結論を下したのかゴブリンキングの全身に力が入った。


「主様ヲ御守スルタメ、コノ命ニ代エテモウオォォォォォ!!!」


「お、おう……」


 そこまで気合入れられてると流石に倒しにくくなる……


「《覇ざ……」


 ゴブリンキングが技を発動する前に逢坂が手刀で両腕を切り落とした。


「どこでその技を教わった?」


 きわめて小さい声で、しかし威圧的にそう尋ねた。


「グ、ギャァァァアア腕ガァァァッァア!!!」


「質問に答えろ。それは勇者が使っていた奥義だ。勇者にしか使えないはずだ。」


「コ、コノ技ハ……」


 それから続きを言い終えることなくゴブリンキングは内側から破裂した。


「術者もえぐいことをするな……一度帝国にいかなければならなくなった。」


 魔王城に帰るのはまだ随分先だな…と落胆しながらもとりあえずは村人を解放した。

がんばって後一話……

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