3話
「基本的な説明は以上になります。何か質問はありますか?」
ナビさんが笑顔でそうたずねてくるが、大体の内容はすでに知っていたので特に質問はない。
ありがとうナビさん。あなたのその素敵な笑顔は忘れません。
「質問が無いようでしたら、次に祝福をお選びいただきます。」
ナビさんがそう言うと、目の前にメニュー画面が現れた。
祝福とは、プレイヤーがALOを始める一番最初に貰えるスキルの事である。
スキルの習得率は個人差がある為、人によっては何十回も戦闘を行っても武器系のスキルを得ることができなかったり、何度鍛冶を行っても身につかなかったりする可能性もある。
その為、チュートリアルの時点で好きなスキルを1つだけ自動で手に入れることができる。これを祝福と呼ぶ。但し、初期スキルが進化した上位のスキルや、派生スキル、強力すぎるスキルは選択できない。
又、ギフトで手に入れたスキルと、自分で身に付けたスキルには何も違いはないので、自分のこれからのプレイスタイルに合ったものを選べばよいとされている。
目の前に表示された画面にはずらりとスキルの名前が並んでいる。
wiki先生によると、戦闘職なら武器スキル、生産職なら自分の行いたい生産活動のスキルが鉄板。とのこと。
又、β版ではなかったスキルが正式版では増えるとの情報もある為、事前に決めずにリストを見てじっくり選ぶのも手。とあった為、俺はまだ祝福をどれにするかは決めていなかった。
…ん~、戦闘職はもちろん、生産職でも素材集めとかで戦闘技術はある程度いるだろうし、とりあえず武器スキルが無難かな………ん??
メニューいっぱいに並んだスキル名と睨めっこしていると、一番下の端っこにあった文字に目が留まった。
【 ランダム 】
何だか素敵な響きだ。
「ナビさん、質問いいでしょか?」
「はい、どうされました?」
「祝福のリストにランダムってのがあったんですが、これは…?」
「はい、その名の通りランダムでスキルが決まります。自分でスキルを選べませんが運が良ければリストの中に無いスキルが手に入る可能性もあります。完全に運任せとなりますのでよく考えて決めて下さいね。」
ナビさんの答えを聞いた俺はすぐさま、いや、ナビさんがしゃべっている最中にランダムを選択した。
だってランダムなんてすごいロマン感じるじゃん!レアスキルの可能性だってあるわけだし。
もし仮にレアスキルじゃなくても余程はずれってことはないだろう。システム上頑張ればスキルは身につけれるわけだし。
「…レイン様の判断ですので私からは何も言えませんが…。ランダムで選ばれたスキルはこの後ALOに降り立ってから確認可能となります。」
…ナビさんからの視線が若干冷たくなったような気がする。
「では、以上で私からの説明は終了です。最後にもう一度、質問等はありませんか?」
ナビさんはNPCなのか運営の人なのか、実際の人なら彼氏はいるのかとか聞いてみたいが今聞くようなことではないよな。
「大丈夫です。ありがとうございました。」
そう言うとナビさんはニコリとほほ笑み、
「それではALOで素敵な生活を送ってくださいね。」
と笑顔で送り出してくれた。
徐々に目の前が白くなっていき、ナビさんの姿が見えなくなった。
【プレイヤー レイン を転送します】
視界の端にメッセージが映り、足元に人一人が入れるほどのサイズの魔法陣が現れた。
そして魔法陣から光が溢れ俺を包み込んでいく。
時間にしておよそ5秒。光が消え俺の目に飛び込んできたのは、現実世界と見間違う程のリアルな街並みだった。
しばらくの間、俺はそのまま動けなかった。
それぞれの家や店、町ゆく人々、町の喧騒、全てがリアルすぎて、呆気にとられてしまった。
感動したというよりは呆然としてしまった。
wikiに、異世界に来たつもりで と書いてあったが、まさにその通りだと心から思った。
だが何時までもボーっとはしていられない。
我に返った俺は早速メニュー画面を開いてみる。
「メニューオープン」
ちなみにこのメニュー、プレイヤーのみが使える魔法という扱いだそうだ。
魔法関係のスキルを鍛えていくと唱えなくても念じるだけでメニュー画面が開くようにもなるそうだが、まだまだ先の話だな。
俺はメニュー画面からスキルの項目を選択する。
「さて、どんなスキルが手に入ったかな?」
習得済スキルの表示画面を開くとそこにあったのは…。
「……………、集中…?」
wikiにそんなスキルは載っていなかった。又、祝福のスキル一覧にもおそらく無かった。
どうやら俺は、正式版より導入されたレアスキル?を手に入れたようだ。