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種は天国産らしい

その後青年はグリモワールの忠告もあり緑と名乗る事に決めた。

通り名はともかく真名は大きな影響を持ち、Aの奴隷と名付けられば本当に奴隷のように逆らえなくなり、いさむと名付けられば勇ましくなるのだ。

更に名付けた者は名付けられた者や物に他より強い影響力を持つのだ。

かといって自分でつけることは出来なず、グリモワールは道具が主では逆だと言う。


名は置いておき、地形を作る。

初めての地形操作から5時間は資源系の地形は制限されているが力の消費無しでよいらしい、お試し期間のつもりだろうか?


命を狙う侵入者がやってくるらしい。

当然分かり易い地形にしてやる義理など無い。むしろ地形だけで迷って野垂れ死ぬようなやつを創ってやろう。


まず本の中からオブジェクトの【岩】を選ぶことにする。

形は変えられるようだ。

特に大きさや形に制限は内容な上、お試し期間だからか変更に応じて消費魔力が変わる事もない。

最大の物で100メートルの高さと20メートルの直径の柱状の岩をいくつも創りクレイドル全体を巨大な石の森にする。

さらに柱石の頂上や罅や穴から【清流】を流す。

これだけ水があれば植物も大いに繁る事だろう。

グリーンと言うぐらいだし森と相性は良さそうだというのもある。

一つ一つはせいぜい小川程度だが一つの柱石に対して一つから三つはあり、すでに低い場所は水没を始めている。

「なあ、この水って何処から流れ出てきてんの?」

「読んだそのまま水の源で水源だ。」

「いや、俺達の世界には質量保存の法則って物があってな。」

「それはお前らの世界の法則だろう。

此の世にはそんなもの無い。

なにも無い所から物質が生まれるし、取り入れたエネルギーより多いエネルギーを発する事もある。」

「マジかよ………。」

「私からも聞いて良いか?」

「良いけど何を?」

「このままだとクレイドル全体が沼か湖になるぞ。

お前の種は水中に適応したとは言えないはずだが?

もちろん大型だからある程度の水位を無視できるだろうがこれでは水が溜まる一方だぞ。」

「あ~、排水忘れてた。

何か無い?

ほら水が何も無いところから出てくるみたいに何も無い所へ消えていくようなヤツ」

「なら【ダストシュート】があるぞ」


【ダストシュート】はただのダストシュートではない、放り込んだ物が跡形もなく消え失せる超ダストシュートだ。

その【ダストシュート】を地下に設置する。

この際地下河川や地底湖を創りダンジョン風にしてしまおう。

緑は木属性だから水属性とは相性が良さそうだ。

やってくるらしい侵入者達も森の中に洞窟があり、妙に人型に配慮された地形だったなら何かあると目を引き付けるはずだ。

地上への出入り口は東西南北と中央で合わせて五つだ。

中央の出入り口は最深部か隠し通路からしか入れないようにする。

水路は直径約20メートルが最大の【洞窟】で、湖は10メートル級の怪魚が余裕を持って泳げる広さの【広場】で確保する。

水路内に水面まで60センチ位の深さに半円形の【岩の足場】を用意して置し、骨の内部のように支えて魚達のスペースと強度を確保し、地底湖には【岩の足場】を格子状に創る。中央の入り口に繋がる最深部には最も大きく深い湖を創った。

ここにボスのような特別強力なモンスターを置くつもりだ。

流れが強くなりすぎないように階層のように水平をメインにして階層間の移動には水面から出た足場とウォータースライダーを創る。

資源系の地形操作は制限されているがそれはつまり鉱脈といった資源を創る事ができると言う事だろう。

此の地形は足場と舟による運搬が両立できるはずだ。

特に魚人みたいなモンスターを用意出来ればなお良い。


谷や柱のような岩のある地表を一階、水路と地底湖で作られ地表の谷や穴から水が流れ込む地下を地下一~四階と呼ぶ事にする。

ここまでで四時間ほどだ。

ほとんどは脳内地図での作業だったので細かい調整には直接出向く必要があるだろう。


少し休むと生物の作成に取り掛かる。

生物の創造はオリジナルの生命体を創るまではある程度以上高位の生命体は制限されているがやはり無料だった。

まず様々な草の種と苔の胞子と木の苗を植え付ける。

これらには特に特性は持たない。

生態系の下地を作ろうという訳だ。


植え付けられた植物達は時間を早回ししたかのように凄まじい勢いで成長しだした。

「うおおぉ!!

な、な、何じゃこりゃぁ!?

天国産か!?

いや、生き物だよな。」

「何故腹を押さえてから手のひらを見る?

ああ、聞きたい事は流石に分かるぞ。

生命体を創造する時一々種や赤子から育てるのは大変だろう?

創造したばかりは未発達だがすぐに成体まで成長する。

その分の力は創造に織り込み済みで、消費する力を調整すれば成熟具合も調整出来る。」

「今更だがつくづくどうかしてるよ…」

生物の創造には時間制限がないのでゆっくりと見回る。






地上はごく普通の森だ。

石の柱を除けば。

木はまばらだが間には草むらがあり、柱石と川は苔と藻に覆われている。

設置した水源が【清流】だからだろうか?

川や池は透き通っている。

それに影響されての事か森全体も清らかな雰囲気だ。

「そうだ!

鮎だ鮎!

此の川ならいけるだろ。

いや、創った奴の一匹…五匹は食おう!」

「鮎か?

…………

香魚の事か、鮎そのものも可能だが魔物の鮎、消香魚ステルススウィートフィッシュの方が美味いし生き残り易いぞ。

鱗は周囲に溶け込むよう鏡のようになっていて匂いもほとんどしないがステルスには程遠い。今のお前なら普通に気づけるし捕まえられるだろう。

焼くとよい匂いがするらしいな。」

「じゃあそいつ頼む。」

本のページがパラパラとめくられ、やがて止まると目の前に五匹の消香魚が現れ活きの良さを示すかのようにピチピチと跳ねる。

川も見てみればさっきまでいなかった消香魚が泳いでいる。

鱗がキラキラと光ってうまそうだ。

服を破ってしまってからドレイクのままでいたのでその優れた嗅覚が幽かなはずの匂いを鮮明に伝えてくる。

緑はなりふり構わず大口を開けて噛みついた。

普通の香魚と違い、消香魚は50センチもあるがドレイクには一口だ。

「美味すぎる!!」

緑はあっという間に五匹を平らげた。

その後

ダイアウルフ(魔狼)

狼を強化したかのような魔物。子馬ほどの大きさが有り、より洗練された連携を実践し、単純な能力でも通常の狼を大きく上回る。

ウォーディア(軍鹿)

角の形に複数の型があり、盾型が列を成し間から槍型が攻撃し剣型が斬り込む等軍の手本になったと言う与太話があるほど。

アームドクラブ(武装蟹)

分厚く硬い甲殻と力任せに鉄板をねじ曲げる鋏で武装したかのようなのでこの名がついた。

シーカーコブラ(大毒蛇)

飾りの模様が眼のようなので見る者と名付けられた。毒に注意。また締め付けも併用されると一人では詰む事が多い上、忍び寄って奇襲して来るので実際の戦闘能力以上に危険。

ホーンラビット(角兎)

角の生えた兎、運動能力は兎と対して変わらないがより少ない食料で生き、より素早く増える。

グランドビー(大地蜂)

10センチ位の巨大な働き蜂、同じく10センチ位の羽の無い蟻のような働き蜂の二種類がいる。蜜や小さな軽い獲物は飛ぶ働き蜂が巣作りや重い獲物は飛ばない働き蜂が担当

キラーホーネット(殺人蜂)

30センチの巨体と10センチの短剣のような針と毒に高い攻撃性を持ち危険。弱った個体ではあるがムーンベアを獲物にする事もあるほどで、獲物はその場で千切って肉団子にして運ぶ。狩りとは別に巣だけでなく餌場や通り道に近くだけで襲いかかってくる。専門のハンターがいるほど。

コボルト(犬猿)

犬のような外見だが骨格は猿に近い。巣穴を掘ったり石を投げたり手は掴む事に使える。

ムーンベア(月熊)

年齢を重ねるほど胸の模様が満月になっていき強くなる。満月になると今度は新月になっていき衰えていく。だいたい15~20年ほどの寿命。

ゴーストモス(幽蛾)

通常の魔法や検査では検知出来ない程弱いが、幻覚作用と毒性のある鱗粉を撒く。とはいえ長時間晒されれば少なからず影響を受けるが検知出来ないので通常の魔法での解毒は出来ない。高い隠密関係のスキルやアリビティを持つ。蜜がメインだが血も吸う。

スライム(魔粘菌)

全ての細胞が全ての役割を担える。雑食性の極みで生物由来で時間さえあれば何でも溶かして食べ、何にでもジュース感覚で食べられてしまう。


等更に生態系を多様化させていると激しく動いているページの中に生体地形という見出しから始まるジャンルを見つけた。

「ん?

この生体地形ってどんなの?

地形と呼べるほど大きい木とか細菌の群体とかあるの!?

ジ○リのシシ○ミの森とかラピ○タの大木とか後世界樹とか創れるの!!!?」

「いや…創れるが……そんなに好きなのか?

大木が。」

「うん!

その通りだ!

子供の頃から好きだったんだよ!

木の中とか上に一体化した家とかの絵本が………?

…あれおかしいな?

好きだった…うん…

好きだったんだけど……何も思わない。

いややっぱり木と一体化した家に住んでみたいし大樹にロマンを感じるしあの絵本も良いと思うけど…。

どうなってんだ?

大樹が好きになったのはあの絵本の影響なんだけど。」

「縁が切れても考えや感じ方が変わるわけではない。

何処から何処までが思い入れ等の縁かお前自身の人格か等私には分からんがな。」

「……………

……………

……………

こう言われて考えてみれば何か自分でも何処までが自分かなんて分からないな。」

(自分とは何か?

これは此処にくる直前まで考えていた事だな。

今思えばこの本に対する感情の変化も不自然な気が…。

いや思い出を無い。

これは俺の精神がいじられている証拠に間違いない。

……………

……………

マア、イイカ。

オレハオレ、マチガイナイ。

うん、問題は何も無いか。)

(体も能力も心も存在理由も、何もかも始めから用意されている私には分からんな。

緑が今どんな事を思っているのかなど。

まあ、私はすでに緑の物なのだ。

ただ使命を果たすのみでいい。)

「さあ、憧れていた大樹を創れるがどうするんだ?」

「ん、ああ!

創るぜ!

世界樹!!」

「今は出来ない。」

「期待させてそれかよ…

あっ、じゃあこの特大フィトルタリア(祭壇之樹)ってのクレイドルの中心に植えてよ。

そこを俺の家にしよう。

ピエルブ(聖母草)を寝床にしてさ、後川を流そう。

トイレは下流に木々で周りから見えない場所を創って中流はゴミ捨て場にすれば上流からなら綺麗な水が飲めるはず。

排水口は滝にすれば音も響かないだろうし。

周りはケラスピルゴス(摩天桜)を並べて間はクルヴィクソス(檻樹)を寄生させて埋めよう。

中心はいつか世界樹植えるから空けとけよ、いや所々小島を残して後は水没させちゃえ。

そうだな、もの○け姫のシシ○ミとの初遭遇地点をイメージしたかんじで頼む。」

「ふむ、最後の部分をもっと具体的にイメージしろ。

そう、そうだ。

これなら私が代理できる範囲内だ。」

そこまで言うと本は激しくページを動かした。

やがて緑はゴゴゴゴゴゴという地響きと共にどんどん盛り上がる茶色い塊を木々の間から見た。

同時に心身ともに疲れを感じた。

体は重く普通に疲れ、心はやる気が出ない。

おそらくフィトルタリアは地形でもあるため無料ではないからだろう。

地形の無料時間をすでに切れている。

「魔力使うのってこんなに疲れんだな……。」

「正確には命力といって存在が其処に在ろうとする力だ。

使い果たす事は奪い取られでもしない限り無いが無くなると消えるから気をつけろよ。

どんな力も休めば少しは回復する。

フィトルタリアの上にピエルブを用意してあるから其処で寝ろ。」

「……彼処の上まで?

めんどくせー。」

「ピエルブの別名は聖母草だ。

その名の如く聖母に抱かれているかのようにとか母の中の胎児のようにとかとにかく素晴らしい気持ちで寝れるらしいぞ。」

その情報に心引かれたかノタノタと緑は歩き始めた。

(情けない……いや初めての命力消費で自由に使える分の半分以上は使った割にはがんばっているか。)

フィトルタリアの根元まできた緑はこれまたノタノタと高さ50メートルはある幹に爪を食い込ませて登り始めた。

フィトルタリアは祭壇之樹の異名の通りに台形の祭壇のようになっている。

150メートル程の上面には持ち上げられた地表が乗っていた。

元々上には葉は無いので困る事は無いだろう。

緑は教えられてもいないのにフラフラと誘われるようにピエルブの群生地へと歩いていくとバタリと寝転んた。

本は主が寝静まった後も言われた通りに創造を続けたが回復した片端から命力を消費するので緑は数日間目を覚まさず、そんな事に気付かない本は緑は寝坊助と判断した。

大蜥蜴はコモドドラゴンみたいな感じ

地竜といっても天竜(飛竜)に対してであって地属性というわけでは無い。

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