ザ・説明回
「なぁ、もう一度この世界について教えてくれねぇかな」
実際に魔法を理解し使い傷を治して青年は認識を改めていた。
この本は荒唐無稽な事ばかり書かれているが全て嘘ではないと。
何より本の話しを信じるならこの世界に来る直前まで危惧していた人間は運命の奴隷なのかという考えはまったくの杞憂だった事になる。
楽しむためと試すためと言っていた(書いていた)という事は全てを設計した創造神ですら把握出来ないなら人は実験動物やペットではあるが少なくとも自由意志はある筈だと思えた。
そして与えられた物を貪る家畜となっていた青年を自分の意志で生きる生き物に戻してくれたようにも思えたのだ。(当然ながら通常の人は殺され掛けたことをそんな風に好意的に捉えない)
自分の他に本以外いないという寂しさもある。
その上傷を治して貰った(方法を教えて貰ったのだが)となればコロリと落ちてしまったのだ。
青年は普通有り得ないことだが嵌められて殺され掛けた事を言った通りに水に流すと本心から思える程だった。
『ここに光るまで触れ。
途中何度か痛むが動くな。』
「あ、そういやお前の名前は何だっけ。」
『製品名グリモワールだ。
お前は名を覚えていないだろうし、誰かに名付けられないように自分で考えておいた方がいい。』
「え?…あ!」
『ほらさっさと手を出せ。』
「あ、うん。」
手をつけている間に何度か小さな痛みが走ったが青年はそれどころではなく、名だけでなく家族や友人との思い出が思い出せないかと必死に考えていた。
父親の職業は分かる、母親の年齢も分かる、兄の学校も分かる、妹の誕生日も分かる。
分かるがどんな事があったとかどう思ったかが思い出せない。
それで違和感が無い。
そんなはずがないと考えてもまったく思い出せない。
『ほら終わったぞ。
世界を渡ったんだ。
縁なんかとっくに切れている。』
またステータスのページが開いた。
通り名 無し
真名 無し
職業 クレイドルの主
種属 魔物・竜系・ドレイク種・グリーンワースドレイク
レベル 126
ステータス
STR44
VIT42
DEX23
AGI31
INT40
SEN28
MEN42
スキル 殴打1 走り2 罵倒3 ラッシュ1 肉切骨断2
アリビティ
アドレナリン1
命力循環2
吸魔2
木属性3
変温1
トンプソン器官1
人化80
毒牙(感染症)1
「変わってんぞ?」
『今お前が考え込んでいる間に改変の仕上げをしたんだ。
最後の仕上げは何故だか私達に任されている。
私達グリモワールは道具だ。
だが選別を兼ねてか、仕えるか道連れにして死ぬかを選べる機会を与えられている。
始めのお前に仕える等我慢できん。
だが今のお前ならもう少し様子を見ようという気にもなる。
ああ、そうそう私を使ってくれれば文句はない、悪事だろうと何だろうとな。
道具は使って貰うだけで幸せだ。
どのような用途だろうと最後まで使われれば本望だと思っているさ。
何故道具にこんな意志や権利を与えたのかは私も知らん。』
「フーン」
おちたと言ってもさすがに騙されてすぐに無条件で信用はしない。
だが青年が死ぬと死ぬというのは本当だろう。
犬の糞っ垂れの時に言ってたしなと其処まで考え、そこで疑問を覚えた。
「なぁあの野郎は何だったんだ?
それとさっき見た後何もしていないのにレベルアップすごいな」
『始めに言った創造の代理だ。
実行にはお前の許可が必要だったから私が設定した後音声入力にしてからとにかく言わせた。
それでさっきの奴たが、あれはコボルトだ。
モンスターと呼ばれる中では最弱だが殆どを制限された世界の出身でまだ制限を一つも外していない上一度も本気で戦った事も無いのに勝つとはな。
いきなりドレイクになれたのもそこら辺を評価されての事だろう。
ワースとは言え竜種だし揺り籠の主だという事で強化されているし、中身がこんな素人でも小さなの森の一番良い縄張りを取れるぐらいに強くぞ。
レベルは非力な人から竜になったんだ、当然上がるさ。
代理創造は創造の細かい部分を変わりにやるという事だ。
実在する種は記録してあるから魔力と生命力を使えばすぐ出来る。
新種もどの器官を何処を足すとか言えば後は私がやる。
後新種は創造者たるお前には逆らわない、いや逆らう気になれないと言うべきか。
創る時に作者の願望か大きな影響を与えるからでな。
まあ創造者からの影響に刃向かう事が何が何でも出来ない訳ではない。
何かの拍子に疑問を持つこともある。
忠実である事を望みながら創ったなら一族丸ごと滅べと命令されても疑問は抱かないが。』
「こんがらがりそうだな。
と言うより説明長いなお前。もっと省略出来ないのか?」
「作られたばかりの私にそんな事期待するな。
必要な情報と省略すべき情報の区別がつかんのだ。
それでは次だ。
人化を解け。
アリビティも元々ある器官のように使えるはずだ。
何となくで出来る。ドレイクの身体に慣れる必要がある。
動かせる事と使いこなす事は別だからな。」
何となく伸びをするような感覚ですぐに変化が訪れる。
目線が上がり体の各部がゴツゴツと盛り上がり服ビリビリと音を立てて破けて布の切れ端に変わる。
(やっちまったーー!服、脱いどきゃよかった。)
後悔している間も変化は続き巨大な蜥蜴になった。
頭部は恐竜(中でも鳥竜)のようだが兜のような甲殻で覆われいる。
上顎と下顎それぞれ二本ずつの毒牙を備えているがそれに意味があるか疑問に思うほど顎も牙も凶悪だ。
前肢は手首から先を除いて人の腕と同じ様な骨格だが大きく発達している。
爪は切り裂いたりと言うより尖ってはいるが太くウォーハンマーや杭のような鈍器を彷彿とさせ、鱗も背中のように大きく厚い重武装だ。
そしてそれでもなお素早く力強く動かす筋肉、それら全てを支える頑強な骨。
戦闘から移動までメインは前肢となるだろう。
後肢は爬虫類の良くある横に出た足では無く哺乳類良くある真下へ伸び踵が高い足だ。
前肢に比べると頼りなく小さいがそれなりに使えるので退化した訳では無さそうだ。
爪はスパイクのようで鱗も動きを邪魔しないようにか薄く小さい。
尻尾は腹側も甲殻で覆われている。
硬さと重さを持つそれは巨大な金棒ようでまともに食らえば今の青年も無事では済まないだろう。
鱗は滑らかで葉のような緑で顔や背中、肘拳等ところどころには樹皮の甲羅や甲殻とも言うべき物で覆われている。
少しぎこちないが初めてとは思えない動きだ。
『お前の種属だがグリーンワースドレイクは最下位のドレイクが木属性を得た種だ。
自分の体だからわかるとは思うが大きく特に前肢が発達したトカゲの容姿をしている。
お前の記憶で言えば骨格はティガレ○クスに近い。
木属性だから体は単純だが隙なく強化されていて、MENの低い生物は乗っ取ってやる事も可能だ。
周りの植物の根や枝を動かして相手を縛り付け足り出来るし、擬似的な生命を与えて岩や骨をゴーレムを作って使役したり道具類や装備を自己治癒させる事も出来るな。
夜属性を持っていれば合わせてアンデットを作り出せる。
後木の吸収の属性力があるから周りのから色々吸えるぞ。
触れたり噛み付いきながらの方が良いが。
コボルトとの戦いを見た限り木で再生と強化をしながら肉弾戦が性に合うだろう。』
グリモワールはその後も様々な事について教えた。
物質界と霊質界が重なり合うように現世を作る事でしっかりした存在と混沌とした可能性が両立している事、属性は概念の数だけ存在し明確な強弱は無い事、五大属性(火、水、土、木、金)が主流である事などだ。
そろそろドレイクに慣れてきて自動車のような勢いで走っている。
体に慣れるだけで無くスキルに走りが有ったしそれのスキルアップも兼ねている。
やがて端にたどり着いた。
地平線と思っていた線はそこで切り取られたかのような断崖絶壁だった。
遠くを見れば遥か彼方にブロックのような物が浮かんでいる。
そのブロックは火山や湿地、青年のいるブロックと同じ様な草原など様々だ。
『別にお前だけという訳じゃない。
まあ同時に此処から出ても出現する場所も時間も違う事だろう。
互いに遠くから眺める事しかできん。
さあ、私達も始めるぞ。
お前は木属性だからな、地形は森のたぐいが良いだろう。』
グリーンワースドレイク
魔物・ドレイク系・ドレイク種
ドレイクの最下位ワースドレイクが木属性を獲得した種。階級は
ワースドレイク
レッサードレイク
ドレイク
ハイドレイク
グレータードレイク
木の生命の属性力で肉体面が全体的に強化されたが火の攻撃力や土の頑丈さ等のようなこれといった長所が無い。隙が無いとも言う。
魔法面ではただの木程度なら縄張りの中なら(魔法ではよそ者だとか昔からの主といった立場や役割が影響する)戦闘に使える程扱える。
生命に干渉する他一時的に与えたりも出来る。
木の吸収の属性力で存在するだけで吸い取り生命の属性力を撒き散らす。意志を持った(しっかりとしたまとまりを持った)対象からは集中したり触れたりしなけば難しい。
生命の属性力は存在するだけで与えるので木属性の強い存在がいると吸われて与えられて強い繋がりが出来る。そうして出来た繋がりを利用してより強く支配する。
大抵はそこそこ強めな捕食者と言う立場。大型肉食獣の縄張りの中にいる小型肉食獣と言った立場で3m弱。小さい訳ではないが強い訳ではない。
主人公は揺り籠の主なので強化されていて高さは普通に立って2mに届き、全長は5mを超える。でかいだけで無く中身も別物で人の頭脳も持つのでワースドレイクとは言えドレイクより強い。だがこの位の強化は揺り籠の主なら誰でもされているしそれでも死ぬ。
皮は優秀な皮鎧になり鱗は個体によって形が違うので一概にいえない。
樹皮状の甲殻は木のようにしなる。木材の上位互換と言うべき。
牙や爪は武器やアクセサリーにする事が多い。
全ての部位に言える事で木属性と相性が良い。