(´・ω・`)↓ (`・ω・´)
(鬱だ…死のう。)
青年はうずくまって指で土を弄っている。
ようするに完全に拗ねていた。
それでも本を手に持って時々めくっている辺り、寂しいのだろうか?
彼はその後
彼が揺り籠の主になった事
魔法などこの世界に適応できるよう体と心、遺伝子と魂を作り直している事
地形や生態系や眷属を創らなければならない事
クレイドルが外と繋がれば命を狙われる事
以上を伝えられたが馬鹿馬鹿しいと本気にせず、また信用できないと疑ってもいたので反抗の意も込めて無視して、それでも救いの手を差し伸べてくれるかもと期待し手放す事も閉じる事も出来ないのだ。
そしてそのまま数時間がたった。
『はぁ、仕方ありませんね。実行と言って下さい。
はいでも許可する等でもいいです。』
「はあ?
その前に俺を帰せよな。」
『言って下さい。
たった一言です。
ここで私の機嫌を損なう事はよい策とは言えませんよ。』
「…許可する。」
ぼそっと小声で呟いた。
すると目の前で光が集まって、人型になっていく。
「えっ。」
すぐに光が消えていき何かが残った。
悪態すらつけないままそいつは完成してしまった。
犬が立ち上がったような形、血走った目、毛がもつれた毛皮、鋭い牙と爪、せいぜい1m程度の背丈、毛皮の上からでは分かりにくいが筋肉質な体。
爪牙から察するに肉食
目を見れば明らかに友好的では無い。
とっさに彼は逃げ出した。
生まれたばかりだからろうか?
しばし呆然とした後逃げ出した彼を見て涎を垂らし腕を振り回しながらながら追う。
「おいおいおいおい!!?
ふざけんなよコラ!
どういうつもりだ!
ああぁ!?
何とかしろよ!!」
今日も口の悪さは絶好調のようだ。
時間稼ぎとして犬に傘を投げつけるが全く効いていない。
『貴男はさっきまで何をしていましたか?
拗ねて私なり救助隊なりに助けて貰うことを待っているだけでしたね。
いずれ命を狙われる事も伝えましたが来るかも分からない助けを待つだけでしたね。
今もそうですただ助けを求めて何とかして貰う事しか考えて居ませんよね。
何処かの誰かが危険に晒されているのではなく、あなた自身が死に掛けているのです。』
犬モドキは中々縮まらない距離に苛立ったか二足歩行から四足歩行に切り替えてスピードを上げた。
『それでも立ち上がらないなら私を使う持ち主に相応しく無い。
死ね。
お前が死ねば私も死ぬが貴様に使われるよりはましだ。』
あいつがとうとう追いついた。
「ヴォウ!」
右足のくるぶしに激痛が走る。
「いってええぇ!
クソっ…なんかしたか?
こんな目に会うような事?。」
地面に倒された、見れば踝が真っ赤に染まりでこぼこになっている。
噛まれたか。
そいつは赤い口内を血で更に紅く染めて首へ飛びかかる。青年はとっさに左手を間に差し込む。
「か、がが、ぐぐぐ、ぶっくうぅ。」
口を噛み締めて痛みを堪える。
叫んで転げ回る余裕は無い。
今も殺し合っているのだから。
ある程度の知能のある生物は追い詰められると恐怖のあまり固まって目を瞑るか、死に物狂いで逆に襲い掛かるか、に別れると言うがこの青年はどれだろうか?
(な、何とかしないと死ぬ!何とかってどうする?こいつを何とか、何とか…止めないと、そうだ!殺せば止まる!)
どうやら二つ目だったようだ。
同時にポケットに入った鹿の角を思い出す。
それを握り左手に食い付いているそいつに叩きつける。
何度も
「人様に食い付くほど腹減ってんだろ!?」
「ギャイン!」
そいつが離しても
「食えよ!」
「キャンキャン!!」
そいつが動かなくなっても
「おい!?腹一杯食えよおおぉ!」
そいつの形が変わっても
「はあ、はあ、生きてる。
生きてるなあ。
今までで一番生きてる感じかも。」
いつの間にかあいつは赤い湿った塊に変わっていた。
『良くやった、褒めてやる。
始めの醜態で見捨てていたが意外とやるな。』
本が勝手に浮き目の前でページを開いた。
「て、手前ぇ忘れてねぇからな。
あいつを出したの手前ぇだろ?」
『ほう、だが治療したく無いのか?
今は脳内麻薬で痛みは無いが次第に痛覚が戻ってくるぞ?
此処には病院どころか私とお前しか居ない。
』
鏡があれば彼はアドレナリンの影響で自分が目を限界まで見開いて、目の回りに隈が出来ている事に気が付いただろう。
「ちっ、この野郎。
水に流してやるからどうするか教えろよ。」
本のページがパラパラとめくられていき開いたページには…
通り名 無し
真名 無し
職業 クレイドルの主候補
種族 魔物
レベル 86
ステータス
STR7
VIT5
DEX12
AGI7
INT16
SEN8
MEN13
スキル
殴打1 走り1 罵倒3 肉切骨断2 ラッシュ1
アリビティ
アドレナリン1
「何んだよ、これ。」
『お前をこの世界を創った者から見た評価さ。』
「ゲームかよ。」
『ふん、笑えんな。
実際この世界は見て楽しむ為の物だしお前の世界も曖昧さを極力排除してどうなるかという興味本位で創られた物だ。
まあそれはいい。
それよりもスキルを触って水属性か木属性に触れ。
怪我にはこいつが良い。』
様々な情報が書いてあるページの下の余白を文字が流れていく。
他にする事も無し、今度は素直に従う。
スキルを触るとページが勝手にめくられて様々なスキルが書かれたページが開いた。
幸い属性はごく始めの辺りにあったのですぐに見つかった。
火 変化と活性
五行の一つ。
物質と霊質の持つ性質が似通っているため同じ魔力でも相乗効果により高い効果が得られるが、似通っているがために対抗手段で軽減されやすい。
物質の火は物理的な影響力に乏しく熱等が効かない場合対抗手段は少ない
変化には活性も含まれ様々な力を引き出す。
侵食の力や加工の力等も持つ。
最初の属性は無料。
水 鎮静と循環
五行の一つ。
水と言っても魔法の水は自然界の水より強く属性力を持つ。
攻においては水でありながら鎮静により自然界の氷よりも急激に熱等エネルギーを奪い、循環(循環させる→運搬する)により同量同圧の水よりはるかに力強く押し流す。
守においては鎮静で属性力を弱め、循環で逸らし巻き込む。
水自体も物理的な影響力を持つので属性力が通らない相手にも一応使える。鎮静で痛みや毒等を静めたり、循環で傷や出血等を戻す治療を使える。
最初の属性は無料。
土 基礎と不動
五行の一つ。
魔法の土石は基礎と不動の力により同じ材質でも自然界の土石よりはるかに硬くて重い。
あくまでも術者が生み出した存在であるため術者にとっては加工し易く軽くて動かしやすい(他の存在にも言える)。
不動の力のおかげかいわゆる「溜め」がし易い。
物理的な影響力が強いので属性力が通らない相手にも対抗できる。
封印や地形操作や固定等戦闘以外でも使える。
最初の属性は無料。
木 生命と吸収
五行の一つ。
生命の力で周囲の生命体や予め用意しておいた種や細菌を使役する。一から生命体を創り出したり高位で有ったり意志を持っている生命体を支配下に置くのは難易度が非常に高く、通常は周囲の意志を持たず低位の生命体を選んで操ったり普段から世話したりじぶんの一部を与えたりして縁を深めた生命体を使う。
生命の力は与える力としての性質が強くそういった戦闘より治療や品種改良に使われる事が多い。
吸収の力はまさに奪い取る力であり戦闘が主な使い道。
最初の属性は無料。
金 結果と純化
五行の一つ。
結果の最たるものが死であり、純化の力で死に特化させる事で非常に高い殺傷能力を持つ。
結果の力は作物の豊穣(他の属性で豊穣にしようとすると水や土壌、作物そのもの等に干渉して豊穣になる条件を整えるが金の結果は確率に干渉する)からギャンブルの大勝ちまで術者次第で望む結果を呼ぶ。
純化の力は海水からの塩の精製や道具類を他の用途を捨てる代わりに特定の用途に高い効果を持つようにしたりと幅広く使える。
金属性とはいうが実際に金を創る事はかなり消耗する。
金鉱山を持たない国では金作りに特化した、技術は勿論純化属性により自活能力も捨てて特化している術者を抱えている国もある。
免疫や消化吸収や呼吸も捨てるためちょっとした鉱山並みの維持費がかかる。
金属を生み出すので土同様物理的影響力に優れる。
最初の属性は無料
下にまだ続いていたがきりがないし五行の中なら選ぶことにする。
生命が怪我には良いかもと木属性を選び確認が出たのではいを選ぶ。
・・・
・・・
「何も起きねぇぞ。」
『傷をどうやって治そうかと考えてみろ。』
(取りあえずこのくらいの傷なら木の生命の属性力を集めて置けばいいかな。
後さっきの奴の残した死体も少しは魔力あるかな。それから木の吸収の属性力で魔力を吸収しながらなら今の魔力でも充分かな…ん?)
『気付いたか、それがスキルやアリビティの習得だ。
スキルやアリビティは神がそれだけの技術や能力を持っていると認めるとそれ相応の加護が与えられる。
というのが外の人類の考え方だ。実際は少し違って世界が曖昧さを残しているから高い技術や能力を持つとそれに合わせて世界に置ける自身のスペースが広がってその新しく得たスペースを使って更に強化されるとでも言えばいいのか?
人間レベルでは理解は難しい。
そういえばこういった形で習得して勘違いしないように言って置くと出来るからスキルやアリビティを得られるのであってスキルやアリビティがあるからできる訳ではないぞ。
できる奴にしか得られないから分かりにくいが。
今のスキルやアリビティ習得はスキルやアリビティと認めてもらえるだけの技量や能力を直接付け加える訳だ。』
(説明長いなこいつ、要するにスキルやアリビティは実際の技術や能力と連動しているって事かな。)
少し痛みが戻って来たのか顔をしかめながら彼は残った肉塊に手をつけしばし動きを止める。
すぐに変化が起き、彼の傷の辺りの肉がうごめいた。
あっという間とはいえないがそれでも目に見える早さで傷が治り始めた。
STR 力強さ
そのまま力の強さでより重い物を持てたりする
VIT 生命力
どの程度の傷まで生命を維持できるかと傷の治りやすさだけで無く環境への適応力も含める
DEX 正確さ
細かい動きや思い通りの動きが出来るか
TOU 丈夫さ
物理的頑丈さで免疫も含める
AGI 素早さ
機動力で踏破性能や最大速度や加速力や小回りなどを含める
INT 思考力
脳の処理能力や記憶力でその思考力をどう使うかや思考回路は別
SEN 敏感さ
感覚の鋭さ、第六感や魔力等も含める
MEN 精神力
霊理的な頑丈さ、魔力面でのTOUと言うべきで魔法の攻撃や呪いだけで無く感情や衝動も抑える