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世界の壁とかそんな感じの物は仕事しろ

一人の少年が歩いている。

いや青年が、と言うべきか。

青年は雨も降っていないというのに片手で傘を差しもう片手で本を読んでいた。

それなりの道の混み具合だが青年の周りは人が避けていた。

青年が悪臭を放ったりチンピラのような格好をしているわけではない。

だが持ち物がおかしい。

傘は良い、今は止んでいるがにわか雨が降っていたから。

周囲もおそらくは青年は読書に集中して気がついていないのだろうと考え少々スペースをとって邪魔と思いながらも本に視線を向ける。

その本にはでかでかと題名が書かれていた。

題名は…


魔術理論入門書


それに気がついた人は変人への笑いや動揺を隠しながらそっと距離を広げた。

だが青年は決してオカルトを信じたり好むわけではない。

普段は頭を空にして読むマンガ程度でしか触れはしない。

青年は信仰する宗教すら(この国では一般的だが)無く、物理学を信仰していると言える程だ。

魔術など空想と捉えてそれを疑う事も無い。

普段なら。青年は友人から言われたのだ。

「ふ~ん、でもさ本当に科学者達が言うみたいに全てに法則があってそれに従っていて例外の無いならさ。

魂みたいな非科学的な物は無いならさ。

オレらって本当に自分で考えているのか?

意識は脳の電気信号なんだろ?

意識はプログラムで、細胞は物理法則で決まった通りに動いているって事じゃん。」


青年が学んだ事では否定できなかった。

だが青年はそんな事が真実だと認められなかった。

そういう事情で青年はこのような怪しげな本に手を出したのだ。






青年のしかめた表情から察するにどうやら本の内容は期待外れだったようだ。

まるで魔術が周知の技術であるかのように扱われ他にも様々な空想が前提としてあるので何かの設定資料集かと考えていると足が何かに引っかかった。

「うわ!と、痛!!」

反射的に前に手を出そうとしたが両手に物を持っている事を考えて手を止めた、しかしそうすればまともに転ぶはめになる事までは頭が回らなかったようだ。

思わずのけぞったので顔は無事だったが体の前面を叩き付けてしまった。

恥ずかしさに駆られてとっさに辺りを伺う。


するとそこは見渡す限り草原だった。


「あ?え?

えーっと…え?」

理解できない。

芝生だ。

地平線まで見える。

(日本にこんな場所あったのか?日本すげぇな。これで平坦な土地ないとかマジか?

いや日本?

歩いてたら外国とか海は仕事しろ。)

後ろを振り返れば同じように地平線がある。

いや石も所々見える。

すぐ後ろにある石が躓いた石だろう。

(ここ何処?

いや帰れんのか?)

帰れない。

その考えに至って恐怖が、感情が、追い付いてくる。

「クソっクソっ意味分からん!

どうすんだよ、何かねぇかな、無かったらぶん殴るぞ!」

動転しながらも何か手懸かりか希望を求めて持ち物を確認する。

割としっかりした傘、着ているジーンズとTシャツとフード付きパーカーと下着、先ほどまで読んでいた本、少し寂しい財布、携帯電話、田舎にいる祖父が裏山で拾ったと送ってきた20センチ程で二股の鹿の角だ。(今日はこれを友人に自慢し…見せに行ったんだ。

何故あんな話になったかは不明だな。)

誰かに助けを求めようと電話をかけようとするが携帯電話は圏外。

「マジかよ!?

肝心な時に使えねぇとかしんじらんねぇ!

ハッハッハ最高のショーだと思わんかね?

てめぇはそうだろうよ!」

独り言を言っているとはよほど混乱しているのだろう。

悪態を吐きつつ放り投げる。

そして本を手に取り開く。

『やあ♪元気?此処はクレイドル。

君は異世界に招待されたよ!

君は法則に支配された世界で法則の例外を求めていたから魂や魔法がある世界に送ったよ!

お礼は要らないよ。こっちにも利があるからね。

まあ、細かい事は後にして生き残り方を知りたい?

知りたい人はページをめくろう!』

「ああぁ!?

ど、どうゆう事だよ!

クソっ本の癖に!

あ~~もう!

ますます意味分からん。」

書かれている内容が変わっているが青年は気にしない。

いや、そんな余裕もないのか?

めくる。

『貴男の担当をさせていただきます。グリモワールと言います。

貴男は神の力によって異世界に送られます。

此処は異世界で生きる為の準備期間と異世界での拠点として用意された空間でクレイドルと言います。

私の機能はこうした説明と相談、各種創造の代理、望む形への変形、神の信号を受信する事です。』

先程までとは違う文面が浮かぶ。

「そんな事より戻せよ!

元の場所に!」

当然本相手に話しても意味はない、パニックもここまで酷いとカウンセリングが必要かも知れない。

『不可能です。』

意味があった。

「ああぁん!?

納得のいく説明があるんだろうな!?」既に青年の中では本は話が出来る物に分類されたようだ。

誰ひとりいない事は幸運だったかも知れない、さもなくば本を本気で怒鳴りつけている人として通報されたかも知れない。

『帰還に関しては貴方に情報制限が、私には行動制限が、それぞれ掛けられています。目的から推測すると私の作者は帰還させるつもりはないでしょう。

当然その目的は貴方の権限では開示されません。』

か、帰れない?

ハハハ、

\(^o^)/<オワタ

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