「愛する事はない」と言ったら静かに破滅した
結婚式の後の寝室。
白い花で飾られたその部屋で、夫となるファブルの声が響き渡った。
「君を愛する事はない」
言われた花嫁のエレナはさっと顔を上げて、ファブルの端正な顔を見上げる。
ロドリグ公爵家の若き貴公子は、社交界でも人気の高い令息だ。
それなのに。
「なるほど」
暫く目を伏せてエレナは脳を超高速で回転する。
公爵家の教育を受けているファブルが、色恋沙汰でそんな事を言い出す筈はない。
だが、これは由々しき事態である。
きちんと確認を取らないといけない。
「愛する事が出来ない、という意味で宜しいでしょうか」
再び視線を上げて尋ねると、ファブルは面食らった顔をして呆然と頷いた。
「あ……ああ、まあ、そういう事になるな」
「承知いたしました。一先ず本日は私室へ下がらせて頂きます」
スッと立ち上がって淑女の礼を執ると、慌てた様にファブルは手を伸ばした。
「大丈夫か」
そう問われて、エレナは少しだけ微笑む。
まさか自分の方が大変なのに気遣ってくれるとは思わなかった。
「旦那様も大変でございましょう。でも、きっと大丈夫です。何とか方法を見つけますので」
「いいや、そういう意味では……夢は見ないでくれ」
夢は見るな、という事は楽観的な状態では無いという事だろう。
エレナは表情を引き締めた。
彼が子供を作るのは、きっと絶望的なのだ。
色々な医者にかかって、それでそんな境地に至ったのだろう。
これ以上追い詰めてはいけない。
「はい。かしこまりました。どうぞ、ごゆっくりお休みくださいませ」
再び、嫋やかに微笑むとエレナは寝室を後にした。
重い扉が閉まると、初夜を見守りに来た小間使いが驚いたように顔を向ける。
エレナは声を潜めて小間使いに囁いた。
「旦那様はお疲れの様ですの。でも、明日は公爵夫妻に大事な話をしたいとお伝え下さいませ」
「承知いたしました。お付きの侍女と侍従に言伝しておきます」
両手を身体の前で揃えて丁寧にお辞儀をした小間使いは静かに踵を返して立ち去った。
侯爵家から連れて来た侍女のナディアが、低い声で挨拶をして前に立つ。
「お疲れ様でございました。お嬢様のお部屋までご案内いたします」
「ええ、お願い。……ああ、明日から大変な事になるわ」
溜息混じりの呟きに、ナディアは恭しく会釈を返し、二人は与えられた私室へと引き上げたのである。
公爵令息ファブルには、将来を共にしたい女性がいた。
ただし、彼女は伯爵家の庶子で、母親は伯爵家の小間使いに過ぎない。
この国では庶子の扱いは低く、親が例え貴族であっても嫡出子でなければ正当な後継ぎになれないのだ。
当然、遺産配分も当主が特別な配慮をしない限り、受け取れる額は少ない。
そのような状態だから、結婚となると難しい。
例え家を継げない次男や三男であっても、庶子を娶る事は出来ないのだ。
実際に出来ない事もないが、少なくとも社交界にそのまま居座ることは出来ない。
人々から後ろ指を指される存在となってしまうからだ。
そういった相手を愛するなら、郊外の別宅などに住まわせてひっそり囲うのが定石だった。
社交界に出入りするなどあり得ない暴挙となる。
平民に嫁ぐのであれば、問題はない。
もしくは、正式に正妻との間に養女として迎える事で戸籍を直す事は出来るが、そちらは正妻が拒否すれば終わりである。
他にも色々と身分を昇格させる方法はあるが、どれも人脈と財力が物を言う。
ファブルが成し遂げる前に、両親が見つけてきたのがデイトナ侯爵令嬢エレナだった。
人気の貴公子として名高いファブルから見ても、エレナは美しい令嬢だ。
蜂蜜色の柔らかく波打つ髪に、茫洋とした淡い海の色の瞳は、誰からも羨ましがられる花嫁で。
このまま彼女と結婚してもいいかもしれない、と思う程には魅力的だった。
しかし、ずっと肌を重ねて愛を紡いできたマリエルを見捨てる事も出来ないし、今更離れたくもない。
結婚式が終わった夜。
色々と考えた末に、ファブルは口にした。
「君を愛することはない」
「なるほど」
まるで老獪な政治家の様に、唇の下に優雅に指を添えて、エレナは目を伏せた。
正直、その反応はファブルの予想外だったのである。
低位貴族の令嬢であれば、怒るか泣くかと感情を露わにするだろう。
高位貴族の令嬢でも、静かに窘めるか、離縁の手続きに向かうはずだ。
しかし、彼女は思案した後で言った。
「愛する事が出来ない、という意味で宜しいでしょうか」
確認。
何故確認を?
と思ったが、驚いてファブルは肯定した。
エレナは、事態の収拾に動くわけでもなく、部屋に下がる旨を口にしてさっさと部屋を後にしたのである。
何がしたいのか、どうするつもりなのか、ファブルには一切分からなかった。
ただ彼女は、最後まで取り乱す事も無ければ、冷たくする事もなく。
穏やかに、少し残念そうな、憐れむような、奇妙な視線を向けて去って行った。
部屋に残されたファブルは、首を傾げながらも寝台に潜り込む。
彼女が泣いたり怒ったりすれば、宥める事も考えていた。
その上で、皆が羨むエレナを抱く事もあったかもしれない。
彼女の交渉次第では、子供を作る事も、頭の隅では考えていた。
悶々と思い浮かべるが、彼女はさっさといなくなってしまったのである。
「はぁ……憂鬱だな」
明日の朝が問題だ。
今日の初夜の不備を知れば、両親が黙っていないだろう。
何度も対峙してきた、マリエルとの仲についての言い争いが、また再燃するのだ。
力が及ばなかったせいで、マリエルの出自の洗浄も出来ず。
ついには両親の見つけて来た相手と結婚をしてしまったせいで、雁字搦めだ。
「やはり、子供を作って、マリエルは外に囲うしかない、か」
流石に庶子との子は私生児として届けられ、教会も法律も公爵家に入れる事を阻むはずだ。
せめて、ファブル自身がエレナとの間に子供を作る事を条件に、マリエルを外で囲う事を許して貰おうとファブルは目を閉じる。
きっと、うまくいくはずだ。
翌朝の朝餐の席は、静かだった。
と言っても、公爵夫妻は至極機嫌がよく、穏やかにエレナと話している。
彼女は昨日の初夜の件を言わなかったのだろうか?とファブルは訝し気に周囲を見るが、今日は弟のレイドも一緒に食事を摂っていた。
まるで何事もなかったかのように、家族の中に溶け込んでいるエレナと、問題が起きていなさそうな平和な風景。
敢えてファブルは地雷に踏み込む心算はなかった。
問題がなければ、起きるまで静かにしておく選択をしたのだ。
その選択が間違いだと気づく頃には、全て終わっているとは知らずに。
「そうそう。わたくし達、早目に領地に戻る事にしたのよ」
口火を切ったのは公爵夫人だ。
にっこりと有無を言わせない様子で。
「ファブル、貴方は王都でのお仕事もあるでしょう?ここに残って王都での仕事をお願いね」
「はい。領地で何か問題でも?」
聞き返すと、ぴきりと公爵夫人の笑みが険しくなった。
何故だか分からず、目を瞬いていると、レイドが横から口を出す。
「領地というか、色々と今後の問題があるからね。領地には俺も一緒に戻る事になったんだ。それに、義姉上も」
「エレナも……?何故だ」
「領地の事も学ばなくちゃいけないだろう?領民達へのお披露目だよ。兄上は忙しいだろうから」
そう言われれば、ファブルは頷くしかなかった。
領地での差配をするなら、領民達と交流を持った方が良いのは分かっている。
ファブルは王都で過ごす事が多いが、公爵である父はきっちりと王都での社交期間以外は領地で過ごしてきたのだ。
そろそろ、自分もその生活に移行するのかと思っていたのだが。
エレナをちらりと見れば、穏やかに微笑む。
「わたくしも領地でお義母様やお義父様、それにレイド様にも色々と習ってまいります。ご心配なく」
「そうか。家族と仲良くやれているようで、嬉しい」
何故か疎外感を感じながらも、ファブルはそう、口にした。
少し違和感はあるが、これは悪くない。
マリエルと会う時間が増えるし、郊外の別荘の幾つかを巡ってマリエルの気に入る場所を彼女の為に与えられる。
居場所が決まれば、噂にならない程度に通えばいい。
流石に、王都の公爵邸に連れ込むような馬鹿は出来ないが、それでも。
級友たちを巻き込めば、王都で連れ歩くのも、郊外で水遊びするのも悪くない。
ファブルは満足げに頷いて、まるで逃げるように王都から去って行く妻と家族を見送ったのである。
エレナとレイドは二人で出歩き、領地に馴染んでいた。
公爵家の若奥様と呼ばれて、領民達と交流をしながら、エレナはのんびりと夫妻の元で領地経営を学んだのである。
ファブルから子供が作れない事を告白されたエレナは、初夜の翌朝にはすぐ公爵夫妻に報告をしていた。
二人が一瞬苦々しい顔をしたのは、手を切らせたはずの愛人の存在の所為だ。
だが、夫妻は瞬時に決断した。
長男への期待はもう無に帰したのだ、と。
だからこそ、対外的にも愛人の事はエレナに明かさない事にした。
勘違いは勘違いのまま。
妻にも出来ない庶子を優先する様な跡取りよりも、健康上の理由で子供が作れない男と思わせておいた方が精神衛生上良いだろう、と夫妻は目を見交わした。
散々言い聞かせた結果がこれなら、下手に露見して外に堂々と愛人を囲って通われるより良い方法がある。
目の前のエレナは健気に公爵夫妻に訴えた。
「繊細な問題なので、ファブル様を問い詰めたり、追い詰めたりなさいませんよう」
「わたくしが、お義母様とお義父様に選んで頂いた公爵家のお血筋の方の子供を産みます」
両家の事を思っての最大限の配慮に、夫妻は頷いたのである。
相手に選ばれたのは弟のレイドだ。
長男のファブルはマリエルとの出会いで色に走ってしまったが、次男のレイドは男友達と遊ぶ方が楽しいという年頃である。
家門の問題だといえば、すぐに察した。
そして、領地で二人はお互いの事を知り、子供を作りながらもお互いの心を近づけていったのである。
どちらかといえば文官よりのファブルよりも、レイドは武官よりで学園でも騎士科に通っていた逞しい青年だ。
金の髪に灰色の目は、兄弟だけあってファブルとよく似ていたが。
昔から父について領地で狩りだ冒険だと馬を駆っていた事もあって、領民にもよく知られている。
だからこそ、エレナの同行役にもぴったりだった。
最初は友人の様に、けれど子供を作る為に肌を重ねるようになったら急速に、恋人の様に親しくなっていく。
若い二人の間には、すぐに子供が出来た。
公爵夫妻は胸を撫でおろし、領民達はお祝いに駆け付ける。
そんな中、エレナはレイドの手を握って散歩をしながら微笑んだ。
「レイ、子供が出来たら王都に帰る予定だったでしょう?でも、もう一人子供がいた方が良いと思うの」
貴族にとって後継ぎが少ないと次はと急かされる。
親戚筋から養子を取る事も出来るが、血筋がきちんと認定出来ないと取り潰しになる事もあるのだ。
レイドはうん、と頬を赤らめながら頷いた。
「そうだな。兄弟がいた方が安心だ。それに、君ともっと一緒に居られるし」
「ええ、レイ。……でも、ずっと一緒にいて欲しいわ」
頷いた後で腕に頬ずりをしながら見上げるエレナに、レイドは力強く頷き返す。
「勿論。結婚出来なくても、ずっと、一生側に居る」
「じゃあ、二人だけの結婚式をしましょう、わたくしたち」
エレナの可愛らしい思いつきに、レイドはぎゅっとエレナを抱きしめる。
「二人だけで愛を誓い合うのも、悪くないな」
花冠に草の指輪、胸ポケットには花冠と同じ野花を差して。
レイドが昔、秘密の場所にしていた森の中の小さな湖の畔で、二人は愛を誓い合った。
「栄える時も滅びる時も、二人で共に過ごそう」
「はい、レイド様。白髪になっても、お側におります」
公爵夫妻とエレナ、レイドが王都に戻ったのは三年が経とうとしている頃だった。
その間、ファブルが領地へ行ったのは一度きり。
だが、社交界では別荘に行くファブルを領地へ行くものと勘違いしていた人も多い。
ファブルも敢えて愛人の居る別荘に行く、などと吹聴する事はなかったので実情を知るのは親しい友人くらいしかいなかった。
けれど、何よりファブルを驚かせたのは、エレナが子供を抱いて帰って来た事だ。
「何故、誰、の……」
驚愕に固まったファブルから遠ざけるように、公爵夫人は冷たい視線を残して、子供とエレナを別室へと連れ去っていく。
代わりに憤怒の表情を浮かべた公爵がファブルの視線を遮るように目の前に立った。
「書斎に参れ」
有無を言わせぬ語勢に、ファブルは不安に苛まれつつも書斎に向かう。
重厚な扉を開ければ、そこには弟のレイドが先に座っていた。
そこで初めて、疑心が確信に変わっていく。
あの子供が、実の弟と妻の子供であるという事実に。
「まさか、父上」
「選んだのは、お前だ、ファブル」
父親が目の前に置いたのは、一枚の書類だった。
生前譲位。
公爵位は現在父親が持っている。
だが、一度ファブルにその爵位を譲らなくては、エレナが公爵夫人という名分を失くしてしまう。
それだけのために、爵位を譲り受けてすぐに、彼女が生んだ息子に領地と財産を譲るという書類だ。
「言って下されば、私は」
「相談もなく、往生際も悪い。独断で彼女に対して不義を働いたお前になんの信用がある」
初夜の後、何も言われなかったのは問題が起きていなかったからではなかった。
寧ろ、頭の上を通り過ぎて、親に切り捨てる決断をさせていたのだ。
なのに、気づかないまま、愛人との日々を謳歌していた。
「お前が愛人に与えた別荘で暮らすが良い。お前の健康上の理由で隠居するのだから、世話係として彼女を雇うという名分は既に出来ている。伯爵家も了承した」
健康に問題なんてない。
けれど、書類にはそう、書いてあるのだ。
贅沢とはいえないまでも、衣食住において不自由はない。
ただ、幽閉と何ら変わりはないのだ
旅行や遠出も出来ず、別荘の敷地から一生出られない。
今更、社交界に戻る顔などなかった。
もしも、この事が周囲に広まれば大きな醜聞となって公爵家自体が白眼視される。
財産が減れば、安泰な生活からも遠ざかるのだ。
大人しく署名するしか道は残されていなかった。
震える指でペンを取り、歪んだ字で署名を済ませる。
「愛する者と過ごせるのだから、お前の夢見た結末だろう」
冷たい、父の声にファブルは顔を上げる。
確かにマリエルは愛らしい。
一緒にいるのも、楽しかった。
だが、美しい妻エレナを手放す代償に見合うかどうか、問われれば分からない。
社交界での華々しい生活を捨てるに足るかどうかも。
だが、もう遅かった。
成就しない事は分かっていたのだから、最初から素直に子供を作っておけば良かった。
マリエルを妻にする事は諦めて、外で囲うべきだったのだ。
ただ、マリエルの言動に迷わされて、自分に酔って決断してしまったのが間違いの元だった。
「もういい。荷物は追って運ばせる。先に別荘に行くと良い」
糸が切れた凧のように、ふらふらと足元が頼りない。
公爵家という、名誉ある家から、切り離されてしまったのだ。
除籍されて、無一文で放り出されなかっただけマシなのは分かっている。
後から廊下に出た弟が静かに呼びかける。
「兄上」
振り返って見れば、レイドは静かに会釈をした。
「感謝する」
嫌味でも当てつけでもない。
嘲笑や蔑みでもない。
だからこそ、ファブルの胸により深く残酷に突き刺さった。
何も返せないままのファブルの横を通り過ぎて、レイドは庭へと出る硝子戸を出て行った。
外では、日傘を差したエレナが幼子と庭を歩いている。
覚束ない足取りで、エレナの衣装を掴んで歩く幼い子供はそれだけで可愛らしい。
大きな日傘の下で椅子に座る母の腕には、小さな赤ん坊が眠っていた。
本当なら、自分が得る筈だった幸せの全てが、そこにある。
光の中の美しい風景を、ファブルは廊下の暗がりから見る事しか出来なかった。
眩しく照らされているのは、窓から差し込んだ足元の陽光だけ。
彼らの幸せのおこぼれとして、生かされる自分のようで、ファブルは口を歪めた。
やり直したいと言えるはずもない。
エレナとは何も始まらなかったのだから。
子供を抱き上げるレイドと、微笑み合うエレナ。
柔らかい子供の笑い声が、いつまでもファブルの耳から離れなかった。
マリエルは夢見ていた。
いつかは物語のように、公爵夫人になれるのだ、と。
そんな日が訪れることは無いと知らされて、床にへたり込んだ。
「う、うそでしょ?だって、私だって伯爵家のお嬢様なのに……」
「だが、庶子だ。庶子とは結婚出来ないと言っただろう」
何度繰り返したか分からない問答。
国の重鎮や王族、高位の聖職者の伝手があれば別だが、伯爵家の庶子を受け入れる相手を探すのは困難だった。
そもそも、伯爵家以下の低位貴族の養女になったところで、公爵家とは釣り合わない。
高位貴族の養女にするとしても、大きな利点がなければ、交渉にすらならないのだ。
公爵家との縁続きとなる利点はあるが、わざわざ養女を迎えるよりは実子を嫁がせることを選ぶだろう。
「でも、レイド様が相手なら、エレナさんもレイド様と再婚すればいいじゃない。それで、私達も再婚すれば…」
「一度私と結婚している以上、エレナが実の弟であるレイドに嫁ぎ直す事は出来ない」
法律上、血のつながりが無くても許されないのだ。
婚姻を無効にするには、初夜をしていないという証明が必要不可欠となる。
しかし、既に正式な後継者としての子供がいる以上、婚姻無効にも出来ない。
それをもし、自分の子供では無いと言ってしまえば、両家の面目も潰れるし大きな醜聞となる。
「ここで、二人で暮らすしかないんだよ」
今までは天国だったはずの別荘は、今はもう牢獄にしか感じられなかった。
諦めきれないマリエルは、往生際悪く首を振る。
「私と貴方に子供が出来ればいいのよ!そうしたら後継ぎとして公爵家に認めて貰うわ!」
「……それでも庶子だよ。君と私は結婚していないし、出来ないのだから」
まるでそれは、二人でいる事よりも公爵夫人になりたいと叫ばれているようで、ファブルは改めて落胆した。
甘い幻想を持っていたのは、結局自分だけだったのだと。
ぶつぶつと何かを繰り返し言っているマリエルは知らない。
公爵家と伯爵家の密約によって、既にマリエルには不妊薬を盛られているという事実を。
実る事の無い果実を夢に見ながら、優しい檻で朽ちていく未来しかない。
ファブルは別荘の窓から見える庭に、目をやる。
そこにはあの天国のような幸せな家族はいなかった。
騒ぎ立てることなく、静か~~に処理されたお話。モンブランの上の方の栗部分だけ食べたいひよこでした。
追記※
感想&モンブラン情報ありがとうございます!栗部分も好きですが、そうなんです、山の部分が好きで…滑らかよりも、ざらざら食感なやつが。チューブ気になります。甘露煮や渋皮煮も好きだけど、むき栗で我慢しときます。




