【初投稿】Q.殺人犯は誰?
皆様はじめまして。
ミステリを書いてみました。拙いところあるかと思いますが、どうぞ温かい目で見て、そして推理してくださればありがたいです。
トリックまで予想してみてくださいね。コメントもお待ちしております。
追記:ヒント1を投稿しました。
追記:ヒント2を投稿しました。
追記:ヒント3を投稿しました。
追記:解説を追加しました。
_____王宮に人殺しが現れたらしい。
それは悪戯な王子の虚言でもなく、過労で精神を病んだ女給の妄言でもない。
「キャアアアア!!」
その証左となったのは、早朝にけたたましく上がった女給の叫び声。
彼女が見たのは、第一王位継承者、エレン王子の無惨な死体であった。
「この王宮の中に必ずやエレン王子を殺した不届き者がいる!!」
エレンツェ国王の御前に集められたのは、ざっと5名程だった。全員、昨夜から、あるいは昨夜以前に面識のある人たちだ。
「お前たちは昨夜の国際交流パーティへ招かれ参加した者たちで間違いないな。トラフェル国王女カナン、ツィーリー国王女マーリィ、アラスタス国王女メロン、ヘレイネ国王女テレス、そしてトロエ国王女カールミン」
カールミンは頭を垂れながらほとほと呆れていた。とんだとばっちりを喰らったものだ。会いたくもないデブのお見合いをさせられた上に、殺人事件に付き合わされることになるとは。
「いくら王女であろうと、ここは我が国の管轄である。犯人は直ちに我が国の法にて裁かれるだろう。今、己の罪を自白するならば、公開処刑は免れるが?」
エレンツェ国王の声に応えるものは誰一人おらず、沈黙が続く。私には関係のないことではあるが、当然真っ赤な嘘であろうとこの場の誰もが理解していた。
「……おらぬか。最後の機会を自ら逃すとは、愚かなものだ」
「発言をしても?」
手を挙げたのはメロン王女。翡翠のドレスにブロンドのふんわりとした髪を持つ、心穏やかと評価される王女だ。
「よかろう。許可する」
「その……エレンツェ国王は私どもの中にエレン王子を殺した犯人がおられると仰られていますが、暗殺者が入り込んだという可能性はないのでしょうか?」
その問いにエレンツェ国王は気持ち悪い口を豪快に開けてひとしきり笑う。
「我らの警備を愚弄しているのか?」
「い、いえ、そのような意図は……!」
「ありえん。特に昨晩は国際交流パーティということで、普段よりも厳重な警備を敷いていた。鼠一匹も通れぬ道にどう人間が入るというのだ」
「そ、それはご無礼をお聞きしました」
さっと一歩下がるメロン王女に視線を向ける。その顔色は見えないが、その頬に汗が滲んでいた。
「お前たちが一晩過ごす為に与えた部屋は既にメイドが確認したが、不審物は見られなかった。よって、お前たち五人は平等に怪しい。疑わしきは罰せよということで、このままではお前たち5人を罰することになるだろう」
「そんな、証拠もなしに!」
今までぐっと堪えたようにダンマリだったカナンが焦った様子で申し立てた。赤のドレスとゴールドのロングヘアの、強気な女性だと聞き及んでいる。
「そうだ証拠はまだ見つかっていない。我としても全員を処刑するというのは好ましくない。自ら隣国との縁を切ることになりかねんからな。そこでだ」
乾いた手で玉座の肘掛けを叩く。
「今日の午後6時。お前たちにそれぞれ、5人のうちから最も息子を殺害したと疑わしい者1人を選んでもらう。最も疑わしいとされた者を今回のエレン王子殺害の犯人として、公開処刑させてもらう」
「成程。それが現状でしたのね。叩き起こされたもので、途中から眠っていましたわ」
「あんた、度胸あるわね……」
王宮のとある廊下。
美しい艶のココア色の髪に檸檬色のドレスを身につける女性が欠伸をひとつ。マーリィ王女だ。彼女とは国が遠く、あまり存じていなかったのだが、のんびりしたというか、楽観的というか……心の強い女性のようだ。
「だって眠かったんですもの。むしろ、カールミン王女は眠くなかったんですの?だって徴集されたのは5時ですわよ?」
「あの雰囲気じゃ、まさか眠たいとは思えないわね……。気分が悪かったわ」
「まあまあ、それはお気の毒」
何を他人事のようにほざくのか。命が関わっているのになんともリズムを崩される王女だとカールミンはため息をついた。
「それで……犯人を探す為に証拠を集める時間が今ということですわね」
「そうだけど、正直証拠なんか要らないわよ」
「あら。それはなぜ?」
こてりと首を傾げるマーリィ。本当に脳内がお花畑のようだ。
この世界、正直者が馬鹿を見る。
「口裏を合わせて誰か1人を犯人に仕立て上げればいいのよ。エレンツェ国王の話を聞くに、犯人候補の5人で怪しい人を投票するということだった。ということは、協力できるということ。適当な理由をでっちあげて、1人に票を集中させましょう」
「まぁ……あなた、悪役令嬢みたいなことを仰るのね」
「侮辱しているのかしら。立派な 知 恵 ですけれど」
言い返すが、マーリィは特に気にすることはない。代わりに、またこてりと首を傾げる。
「誰を犯人にするの?」
「あら、話が早いじゃない」
「私も死にたくないもの」
「いい?テレスよ」
即答したことにもまた疑問を持ったらしい。マーリィが少し眉を顰めたのを察してカールミンは続ける。
「あの子は無口で弱気なお嬢様なの。後で言い返されても丸め込めるわ」
「まぁ!本当に酷いことを思い付きますわね!」
「知恵よ。知、恵。」
丁寧に訂正する。マーリィも自分が安全に生き残る為にはと納得したようで、渋々と頷いた。
「そういう訳で、あなたはカナンとメロンにテレスに投票するように口裏を合わせてきなさい。間違っても使用人やテレスがいるところで話しちゃ駄目よ」
「カールミン王女はどうしますの?」
「現場状況から適当な理由をでっちあげるわ。あなたたちは私の推理に納得したように頷いて、同調して、そのままテレスに投票するだけ」
「……分かりましたわ。そういう風に伝えておきます」
性格を知らないということでこの作成に乗って貰えるかは不明だったが、上手くいったようだ。メロンは平和主義でこの画策を嫌うだろうが乗らない理由がなく、カナンも強気だが気高いという訳ではない。テレスへ投票してくれることだろう。
さて、どう推理するか。カールミンは死体現場へと向かった。
死体現場……王子の寝室には白いドレスに白い髪のテレスと医者の姿があった。丁度医者の話を聞いているところらしい。
カールミンはにっこりと口角をあげて、テレスと医者の側へ寄る。
「状況はいかがかしら?」
テレスは背後からの声に驚いたように肩を震わせて振り返る。
「……ちょうど、死亡診断が……終わったみたいです……」
「えぇ。勿論、カールミン様にもお伝えします」
曰く、死因は胸を正面から刃物で貫かれたことによる刺殺。それ以外の外傷として、頭を強くぶつけた跡があるようだ。
「もうひとつ。これを私からお伝えしたことはエレンツェ様にはくれぐれもご内密に…」
エレン王子はお父様に秘密で違法薬物を頻繁に多用されていたのだとか。止めようにも横暴な彼に誰も口出しができなかったらしい。
「使用跡は?」
「いくつも腕に注射跡がありますが、なにぶん多すぎて昨夜に使われたかどうかは……」
「ふぅん」
さりげなくテレスを見る。テレスの国は自然豊かで使い方を間違えれば毒薬になる薬草の産出国として悪い噂があった筈だ。
王子の部屋に忍んで酒で酔わせ、注射を腕に打って錯乱状態にさせて頭を打って気絶させ、そのまま一突き_____
(上々ね)
「……王子の寝室、は……鍵、かけられてて。窓も内鍵しかないし、閉まってるので、密室でした」
(そんなこと知るものですか。真実は隠してしまえばいいのよ。誰が皆私に同調するのだから)
部屋をぐるりと見る。乱れたシーツの上の死体、庭へ繋がる締まり切った窓、少し傾いた壁掛けの絵画、ゴミ箱の中の使い捨て注射器、ナイトテーブルの上の2本のワイン瓶。
(ワイン瓶!)
丁度いい。これで酔わせたことにしましょう。
「凶器は見つかっていないの?」
「女給によると、調理場の包丁が一本消えているそうです。現在の場所は不明ですが、恐らく凶器かと……」
恐らく。まだ不確定な要素だということにほくそ笑む。
「十分よ。ありがとう」
カールミンは軽くお辞儀をして部屋を去る。
王子の部屋にはぽつり、医者だけが残されていた。
凶器が不確定ということは凶器になり得るものをこれが凶器だと言い張ることのできる状況だということ。カールミンは庭へと移動した。
庭は広く、王宮の一階の個室、廊下の窓と繋がっている。しかし窓の位置は高く、手がギリギリ届くくらいだ。
鋭い剪定鋏があれば、人の胸を突き刺すことができるだろう。見つけて持っていき、テレスの寝室の見えづらいところにあったと主張しよう。
庭倉庫の鍵は空いており、なんなく開くことができた。ジョウロ、シャベル、種、肥料、剪定鋏_____いいえ、大きすぎる。庭木用ね。もっと、間引きの為の手頃なのが_____
中を漁るも、不幸にも手頃な大きさの剪定鋏は見つからない。暫くカールミンは目を凝らしたが、やがてため息を吐いて倉庫の扉を閉めた。
(いいわ。別に見つからなくたって、どうにかなる)
室内に戻ろうとして顔をあげると、ふと室内に繋がるひとつの扉が開けられる。見ると、髪を纏めた女給がなにやら木箱を持って庭に出てくる。
女給はカールミンに気がつくと、慌ててお辞儀をした。
「何をしているの?」
近づいて聞くと、女給は慌てて答える。
「今日の料理で出た生ゴミを畑に埋めて、お野菜に栄養を与えようと思いまして」
木箱を見ると、中には野菜のヘタや魚の内蔵、リンゴの芯など、生物が底に溜まっていた。
「重くないの?」
「近いから問題ないですよ。ここの扉の先が調理場なんです」
昼は5人のみで食事した。
マーリィはカナンとメロンに事をしっかり伝えたのだろうか。それは分からないが、食事の時間は昨夜のパーティのように和気藹々としたものではなく、冷え切っていた。出来立てで温かいはずのスープも、今は嫌に生ぬるい。
「美味しいですわね〜」
マーリィはこの空気の中でもみままらしい。白身魚を口に入れては毎度ほっぺたが落ちそうだと頬に手を当てる。
「そういえばみなさんは、昨夜、パーティが終わった後はどうしていましたの?」
マーリィの突然の問いは犯人を探し当てる上でもっともなものだ。カナンが、メロンが、マーリィが、テレスが、カールミンが順に答える。
「パーティが終わってそれぞれ2階の自室に戻ることになったのが20時半頃。私はいつも22時頃には寝ているから、終わってすぐに1階の共用浴槽で身を清めたよ。自室に戻る廊下でエレン王子とすれ違ったから、その頃には確実に生きていた。その後にメロンと少しだけ話して、別れてからはずっと部屋だよ」
「私も、早めに身を清めようと思って……。部屋でホットミルクをゆっくり飲んで、それから共有浴槽に移動している時、カナン様の後ろ姿を見ましたので、お声がけしました。多分、入れ違いかな?と思います……。あ、私もエレン王子のお姿は確認しました。入浴後はメイドさんにパーティで美味しかったスイーツを頼んで、もう一度持ってきてもらって食べていました。22時頃の話です」
「わたくしはパーティの後、エレン王子に寝室へ来るように呼ばれましたの。呼ばれたのでついていったのですが、お酒を出されて少し待っていろと言われて部屋を出られたのですが、わたくし、もう待つのが苦手で苦手で!エレン王子が戻ってこない間に寝室に帰っちゃいましたわ。21時半……のちょっと前のあたりですわね。浴槽に入ってからお部屋に戻りましたわ」
「……ずっと、部屋、です。特には……。ぁ、でも、21時半頃に、大きな音……聞きました」
「私はパーティの後はすぐに部屋に戻ったわよ。あぁ、そういえばメロン。あなたが頼んだスイーツ、最初こっちに持ってこられたのよ。部屋が違うと教えたらすぐに出て行ったけれど。21時半頃の大きな音は私も聞いたわね。何かがぶつかる感じの音だったかしら」
(ずっと部屋、ね。目撃者がいないなんて随分都合の良い)
カールミンのアリバイは女給だ。22時の頃、私は部屋にいたことが女給によって保証されている。犯行時刻を22時ということにすれば私は犯人候補から外れるということだ。
「1階には秘蔵のお酒があるみたいですわ。50年ものが一本消えているのだとか」
(酔わせる必要も注射を打つ必要もないわ。事の顛末はこうよ)
犯人は調理場から包丁を盗み王子の部屋へ訪れる。マーリィの証言によると王子は一度部屋を離れたらしい。マーリィが部屋に戻った後に侵入、部屋の中で待機。王子が帰ってきたところを近くにあった酒瓶で打撃、そのまま包丁で殺害した。
私ことカールミンは当時女給と部屋で会っていた。また、そのまま女給はメロンの部屋へと行ったため、メロンにもアリバイあり。マーリィは浴槽にいた。これは私が女給と会った後に浴室に行こうとしたら使用中だったとでも言えばアリバイが成立するだろう。そしてカナンはいつも22時頃に寝ている。これに関してアリバイはないが……まぁなんとかなるだろう。
これで、消去法でテレスを犯人に仕立てあげることができる。
「女給に聞いたんですが、21時、22時、23時のはじめには2階で見回りをしていたみたいです。21時には1階の階段へ向かうカナン王女を見かけましたが、22時、23時には5人の中では誰も見かけなかったそうです。24時にみなさんの部屋を訪れて、全員の部屋に鍵がかかっていることを確認されています」
「浴槽は20時半から21時半までは連続して利用されていた。20時半から21時までは私、21時から21時半まではメロンだろうね。23時にも使われていたみたいだ」
後は、投票の時刻を待つのみだ。
「エレン王子殺害の犯人は、カールミン王女ですわ」
は?
「犯行時刻は23時頃。21時半頃、カールミン王女はまず調理場にて包丁を盗みにいった。当時の調理場には誰もいなかったと女給から証言がありましたので、楽に入れましょう。包丁を手に入れるとそこで30分待機し、調理場の裏口から庭へ、そしてエレン王子の部屋の窓を叩いたの。」
待て、聞いていない。
「窓を叩かれ、エレン王子はそのまま窓を開けてしまう。カールミン王女はエレン王子と……そう、密会をしていましたの!どのような……など、とても王女の口からは言えませんわね。あら失礼。エレン王子が眠ったところを包丁で刺しましたわ」
「違う!頭の打撲の説明がついていないでしょう!!」
「21時半に大きな音が聞こえてきましたわね。薬を打ったエレン王子がふらついて頭を打ったのよ。わたくし、22時まではエレン王子の部屋にいたので、ちゃんとこの目で見ましたわ」
22時!?マーリィがエレン王子の部屋にいたのは21時半までの筈!!
「いいえ違うわ!!そもそも、私以外にもアリバイのない人ばかりじゃない!!どうして私たの!!」
「女給さん」
マーリィが1人の王女に振り向くと、女給は慌てて部屋を出る。
汗が滲む。足先が忙しなく動く。
やがて帰ってきた女給が持ってきたのは、一本の包丁だった。
「カナン王女が、カールミン王女の部屋の……本当〜に見つけづらい場所で見つけましたの。まさか絵画の裏にあるなんてねぇ……。調理場で無くなっていた一本ですわ。他の方のアリバイがなくとも、こちらが大きな証拠となりますわね。血がついていないので、きっと浴室で洗ったのでしょう」
「包丁!?そんなもの覚えはないわ!!誰かが私の部屋に……!!」
「あら。そこまで弁明するのであれば、そうね、話を変えましょう。カールミン王女はどなたが犯人だと思いますの?」
「いい?テレスが王子を殺したわ!!包丁を持って王子が部屋に帰ってきたところで殺して______」
「密室は?」
メロンが口を挟む。
「は?」
「テレス王女から聞きました。エレン王子のお部屋は密室だった、と……。どうやって密室の中でエレン王子を殺害したんでしょうか」
そんなの、マーリィの推理でだって明らかにはなっていないだろう。
そんなことを叫ぼうとして、女給の手にあった小さな輝きに気がついた。
「鍵……?」
「カールミン王女の部屋から見つかったもうひとつの証拠ですわ。これも絵画の裏にありましたの。エレン王子の寝室の鍵、元々はエレン王子の寝室にあるはずのものですわ」
「は……な、ならテレスが鍵と包丁を私の部屋に」
「私は今日、テレスが現場から出てからずっと一緒にいた。どうテレスが証拠を入れるというのかな」
「犯行後に……私が就寝した後に投げ入れたのよ!!」
「あら。カールミン王女はお休みになる前にお部屋に鍵をかけたでしょう?」
嵌められた、嵌められた、嵌められた!!
どれだけ私が無実と叫んでもそれに耳を貸す者はいない。まるで打ち合わされたかのように4人全員が私を責め立てた。
そうか、お前たち、お前たち_______
「カールミン王女と公開処刑とする」
Q.殺人犯は誰?




