第十三話 白鳥と烏
第十三話 白鳥と烏
ソウル江南区、国ハン庁第一支部ロビー。自動ドアが開いた瞬間、生臭い下水の匂いがロビーの空気を覆った。
「う、臭い……」
案内デスクに座っていた職員が鼻を塞いで眉をひそめた。血まみれの六人が歩いて入ってくるところだった。「問題の六人」。たった今、江北の下水処理場の亀裂を封じて戻ってきたところだった。
「見るな」
チャ・ルナ(狂戦士)が職員たちを睨みながら低く唸った。彼の髪には下水の汚物とモンスターの内臓が絡まって乾きついていた。
「好き好んで汚水を浴びたわけじゃないし……」
カン・ガヨン(カウンター)が愚痴をこぼした。彼女の白い防護服はとっくに黒く染まっていた。彼らは慣れた様子で隅の自販機へ向かった。シャワー室へ行く前に、イオン飲料でも一本買って飲もうとしていたところだった。
その時だった。
ドンドン――。
反対側のVIP専用入口が開き、明るい照明とともに別の一団が入ってきた。
「お疲れ様です、アーク(Ark)チーム!」
「さすがです! タイムアタック記録更新!」
職員たちが総立ちで拍手した。その歓声の中に入ってきた六人。彼らは「問題の六人」と同い年だったが、まるで別の種族のように見えた。
塵一つない最高級のオーダーメイドスーツ。控えめに輝く最新型の魔力増幅装備。何より、彼らの顔には「余裕」があった。
大韓民国が誇るエリートSランクパーティ、「アーク(Ark)」。国家が「廃棄物処理」のために集めたのが「問題の六人」なら、「アーク」は世界大会と対外アピール用に大切に育てた「ショーケース用の英雄」たちだった。
「……あいつら見て」
チョン・ノア(防御型)が魂を抜かれたように見つめた。アークチームのタンクは無骨な鉄板の代わりに、青みがかった魔力シールドを優雅にまとっていた。傷一つない装備だった。
「腹立つ」
チャ・ルナが缶飲料を力任せに握りながら呟いた。その目に滲んでいたのは、明らかな劣等感だった。同じSランクなのに。同じ年齢なのに。なぜ俺たちはゴミ捨て場を転がり回り、あいつらはレッドカーペットを踏むのか。
その時、アークチームのリーダー、ソ・ジウ(二十歳)が彼らを見つけて近づいてきた。金髪に染めた髪、モデルのようなプロポーション。彼はエスプレッソのカップを手に持ったまま、ハン・ソリンの前に立った。
「あ、話はよく聞いてますよ」
ソ・ジウがにこりと笑った。悪意は感じられなかったが、その無邪気さがかえって残酷だった。
「『問題の六人』ですよね? ニュースで見ました。本当にすごいですよね」
「……」
「どうしてそんな戦い方を思いつくんですか? 腕を差し出して刺すとか、囮に使うとか。うちのチームにやれって言ったら、みんな震え上がって逃げ出しますよ」
褒め言葉だろうか? いや、それは「私たちはそんなやり方をしなくても勝てる」という傲慢の表れだった。彼の後ろに立つアークチームのメンバーがくすくすと笑った。
「ジウ、もういいよ。臭いが移る」
「あ、ごめん。面白くて」
ソ・ジウが鼻先をわずかにしかめた。ハン・ソリンから漂う悪臭のせいだった。
「でも、知ってますか?」
ソ・ジウの目が細く弧を描いた。
「そういう戦い方、長くは続きませんよ。スマートじゃないじゃないですか。今どき誰が体で乗り越えようとするんですか? 頭を使わないと」
彼は自分のこめかみをトントンと叩いた。
「怪我をしないのが実力ですよ。血まみれになって歩き回るのは、勲章じゃない。ただ未熟だという証拠です」
瞬間、チャ・ルナの理性が切れた。
「このっ……!」
チャ・ルナが拳を振り上げようとした刹那、パシッ。ハン・ソリンがチャ・ルナの手首を掴んだ。
「離せ! あいつの口を引き裂いてやる!」
「黙ってろ。謹慎食らいたいの?」
ハン・ソリンは落ち着いていた。彼女は血のついた手で缶飲料を開けた。プシュッ、炭酸の抜ける音が静寂を切り裂いた。
彼女は飲料を一口飲み、ソ・ジウを見上げた。無表情な目。その深い底に沈んだ軽蔑。
「お坊ちゃんだね」
ハン・ソリンの乾いた一言。
「何ですって?」
「怪我をしないで勝つのが実力だって?」
ハン・ソリンがふっと笑った。
「違う。お前はただ運が良かっただけだ。お前がミスをしても庇える良い装備と、安全なダンジョンばかり選んでくれる上の人たちのおかげで」
彼女はソ・ジウのネクタイを、わざと血と油汚れのついた指でコツと触れた。真っ白なシルクのネクタイに、赤い血の跡が鮮明に残った。
「祈っとけ。その運が尽きないように」
「……!」
「本当の地獄に落ちたら、その頭を使う一秒すら与えられないから」
ソ・ジウの表情が固まった。汚いものが付いたという不快感と、説明のつかない寒気が同時に走った。
「行こう。香水の臭いが気持ち悪い」
ハン・ソリンがチームメンバーを引き連れて背を向けた。エリートたちの高級香水より、仲間たちの血の匂いの方がましだとでも言うように。
しかしエレベーターに乗り込んだ瞬間。
グシャッ。
ハン・ソリンは握っていた空き缶を完全に潰した。彼女の手が微かに震えていた。
腹が立ったからではなかった。ソ・ジウの言葉が正しかったからだ。「長くは続かない」。その事実を誰より分かっているのは、他でもない彼女自身だったから。
鏡に映った六人の姿は無残だった。華やかな白鳥たちの前で、彼らはどこからどう見ても、病んだ烏の群れだった。
『私たちは……いつまで持つんだろう』
ハン・ソリンは鏡の中の自分と目を合わせられないまま、うつむいた。エレベーターが降りていく間、誰一人口を開かなかった。




