次の日の朝
小鳥の鳴き声と冷えた空気と温かい日差しの差し込む宿の1室。
ボサボサとした黒髪、悪い目つき(よく言えば鋭い眼光)の持ち主はレッドバナーのリーダーのラッド。傷だらけの軽装鎧やバックラー、使い込まれたショートソード、ボロボロの赤い外套、その他ナイフや小道具を今はメンテナンスしている。
仕事前のこの時間が好きだ。静かな時間帯から始まり、終わる頃には人々の活気で賑やかになる。時間が流れている実感が得られるのだ。今日も仕事あるし道具はびかびかにしとくか。
ドタドタと足音が聞こえてきてラッドの部屋の扉はバタンと大きな音を立てて開けられた。
「ラッド!大変だ!レイの姿が見当たらないんだ!」
「あいつなら追い出した。」
金髪碧眼、整った容姿で寝起きの肌着と短パンの男はレッドバナーのメンバーのカイだ。
わーわーとラッドに話しかけるカイとは正反対に黙々と盾を磨くラッド。
「追い出したって!またか!ラッド!もう何人目だ!」
「数えてない」
「この街に来てから9人目だ!レイはいい子だったじゃないか!剣も上達してきていたし覚えもいい!しかも俺になついてたんだよ~。」
涙目で続ける。
「その前のキャロルは家族の為に仕送りするとか言ってたいい子だったのに追い出したし…その前のマリアはめちゃめちゃ優秀だったのに追い出したし…」
わーわー言ってきたと思えば今度はおんおんと泣いている。ラッドは鎧を磨いている。
「なーたのむよー…レイを今からつれもどそうよー…いまからでもごめんなさいっていえるだろー…スティングもつれもどそうよー」
「連れ戻さない。あとスティングは故郷に帰った。」
「今からレイだけでも追いかける…!」
「馬車なんて追いかけられるわけないだろ。」
「馬車に乗せたのかお前!くそ!それじゃあ追いかけられるわけないだろ!」
そんなことはしていない。が、嘘は言っていない。はず。馬車なんて追いかけられないからな。うん。
「ちくしょう…ノベンタ…セプテム…ベンティ…ドーリアン…ワーカー…オットー…ブント……」
誰だそれは。
「うぅ…んで、なんで今回は追い出したのさ」
ベッドに鼻水を垂らすないい男が。あと俺の布団だ。勝手に寝転ぶな。
「今回は実力が足りないからだ。確かにお前がさっき言ってたように剣が上達していたのは知ってる。俺も稽古をつけてなかったわけでもない。だが実力はついてきたがあいつは前に出すぎる。俺よりもだ。いずれ大怪我をする。装備が貧弱だ。駆け出し冒険者の装備じゃ俺らの潜ってるような所には連れて行けない。他の新人冒険者パーティの奴らと仲が良かったみたいだからあいつはあいつでどうにか出来る。」
「そ…そうかもだけどー…はぁ…弟分ができるとおもったのに…」
…納得はいってないだろうが理解したか。
ダカダカと足音が聞こえてくる。
バダン!!!
「ラッドー!あんたまたやったわねー!」
カイが開けた時より大きな音で扉が開けられる。
「なんでレイくん追い出したの!100文字以内で理由を述べてこの拳を受けろー!」
扉を開けて殴りかかってきたのはオレン。レッドバナーのメンバーで猫っぽい獣人種だ。
「カイに聞け」
ゴンッ!
ピカピカに磨いたバックラーで拳を受け止め返事をした。
~(カイ説明中)~
「なるほどね~いつものやつか~」
「そうそう、いつものやつ…」
カイはベッドに横になってる。シーツも枕も後で変えてもらおう。
オレンは手を真っ赤に腫らしながらベッドに腰掛けてる。
「でもいいの?レイ居なくなったら今日行く予定の所厳しくない?」
「いい、今日は予定を変えてその分軽い依頼にするつもりだ。」
「今回もそんな感じか~まあいいけどね。慣れてきたし。んで?今日はどうするの?」
「酒場で街から近い炭鉱跡地のゴブリン退治の依頼を受けてきてる。それだ。」
「またか~」
オレンは腫れた手をさすりながら、ため息をついた。
「……ま、ゴブリン退治ならレイがいなくてもなんとかなるか」
ラッドは無言でショートソードのメンテナンスを終え、装備を整えると赤い外套を羽織った。




