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無料投稿サイトにアクセスした。ハイボールを飲みながらトップページを見つめる。新規投稿された小説や短編小説、更新された小説なんかが表示されている。もう一度ハイボールを口にした。自分には文才がないともう書かないと決めてから、どれくらい経つだろう。ハイボールのピッチが速い。
ある小説をクリックした異世界転生もののハイファンタジーだ。純文学は今は胃もたれしそうでご遠慮したかった。それは書き始めたばかりのようで、まだ五話しか投稿されていなかった。だから、ハイボールを飲みながら読むのにはちょうどよかった。文体が穏やかで読みやすい。初めてブックマークをつけようと思った。ハイボールを飲み干して、ソファから立ち上がってキッチンでおかわりを作った。
ソファに腰を下ろして五話目をもう一度読みながら飲んだ。天啓と言うには仰々しいが身体に稲妻が駆け巡るような体感になったのは勘違いではない。ブックマークをつけてもらえたら、そんな願望がよぎった。抗いがたく執筆の衝動が再燃焼し始めていた。賞に応募するのではなく、好きなように書き、投稿できる。酔いの勢いに任せてがなかったわけではない。が、あの諦念は一種の冬眠だったのだ。居間が目覚める時なのだ。
サイトを閉じて、音楽流した。パソコンのメモ帳を開いた。ハイボールをあおって、まずは腕組みを解いた。ブックマークをつけてもらえるようなそんな物語を書こう。プロットを叩き始めた。