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変なトカゲ

 昼間のどんちゃん騒ぎの面影もない、静まり返ったギルド内に5人が入ってくる。


 もちろんスグルとレンの一行だ。暇そうなウェイトレスにスグルが話しかける。


 「すみません、冒険者登録を行いたいのですがどのようにすればいいですかね」

と、ビジネススタイルを浮かべながら言った。そして、数列に並んだウェイトレスの中でも、やたら怖そうなウェイトレスにスグルは話しかけてしまった。そのウェイトレスは椅子に体を預け、テーブルに足を置きながら、一言だけ言った。


「金」

「え?」


態度の悪そうなウェイトレスは面倒そうに言う。


「チッ・・・冒険者登録にはお金が必要なんですよ。流石に完全ボランティアとはいけませんよ」


その言葉と威圧的な態度を受け、全員がしょぼくれながらも気圧される。


「 ・・・じゃあいいですよ、特別に試験をやってあげますよ」


 しょぼくれた自分達を見兼ねたのだろうか。案外いい人なのかもしれない。

 ウェイトレスは話を続けた。

 

「試験と言っても、難易度の低いクエストをやってもらうって感じですけどね。どうします?」

  みんなが顔を合わせる。もちろんやるしかない。というか、それやるしか選択肢はなかった。


 「「「「「ハイっ!!」」」」」


 そう元気に答える。


「よろしい。じゃあ、そこのチビとノッポと女」


「「「ハイィ!!」」」


「あんたらは近くの森でキノコ採り、話は後々言う」


「「「ハイィ!!」」」


すごい剣幕で言う。

こういう人をボーイッシュやらカリスマやらと言うのだろうと、レンは感じた。意味はよく知らないが。


 彼女の視線が残り2人に向かう。


「あんたら売れ残りは畑でネズミやら害獣退治、ネズミの肉は持って帰ってよし」


「「えぇ・・・」」


 思わず引き気味で言う。二人の脳裏には、持って帰ったネズミ肉をどうやって使えばよいかを試行錯誤していた。いっそのことネズミ肉のジビエを目玉に店でも出そうか・・・、なんてことをスグルは夢見る。

そんな二人にわ

「ハイはどうした?」



「「ハイィ!!」」


それにしても、持って帰るってことはこの世界ではネズミ肉は割と一般的な食べ物なのだろうか。


 かくして3人と2人に別れてクエストに行った。

 レンとスグルの2人が行けと言われたのは街から1キロほど離れた畑を携える、割と近めに佇む一軒家だ。


「「お〜」」


 随分と楽観的に言う。

 畑は畑とは言えない程荒れ果てていた。本来、野菜の生い茂っているはずだった土には、無数の穴が空き、枯れ草を無造作に生えていた。

 正直、とてもじゃないがネズミ数匹でもここまで出来るとは思えない。

 そんな光景にレンはスグルに問いかける。


「にしても、荒れに荒れまっくているけど、よくもまあ、ネズミ如きの畜生にここまでやれたもんだね」

 

 すると、待たせられてた畑の主の老人がその一軒家から出てきて、こう言った。


「ここ数日の間にネズミが土の下に住み込んだようでして、この老体じゃあ捕まえるのが難しくって」


「了解しました。必ず一匹残らず捕まえます」


自信満々に言っているがスグルにも、どちらにも作戦はない。

2人とも「まぁ、なんとかなるっしょ」の軽いテンションで望もうとしているのだ。

畑の近くに行ってみると「チューチュー」という鳴き声がハッキリと聞こえる。

2人は小袋から肉を何枚かを取り出した。


「「臭ッ」」


 支給されたものだが、どんな肉かは知らないがかなり生臭い肉である。その臭いは鼻をつまむのも躊躇が出来ないほどである。

 あのウェイトレスの話を聞くと、どうやらこの世界のネズミはこの肉が大好物らしい。


 肉を畑に放り込んで見ると一斉にネズミっぽいものが出てきた。

 「っぽいもの」と言うと違うかもしれないがこれは我々が見知ったものではなく、一回りほど大きく、禍々しいオーラを放っている。

 といってもただのネズミ、捕まえるのは簡単そうだ。現に、自らの脅威に全くの関心がない。

 肉に夢中のネズミたちを畑の主が貸してくれた網で次々に捕まえていく。

 そうしてどんどん捕まえていく内にスグルの顔が曇っていく。そんなスグルの顔をレンは、一応の友人として見逃さなかった。


「どうしたんだい?」


「声が……聞こえる、ネズミ達の。」


 ハッと気が付いた。この世界に最初に着いた日、スグルは自分のスキルについて語っていた。


 「俺のスキルは意思疎通コミュニケーションどんな動物と話せる」


 おそらくスキルの影響で聞こえるのだろう。

 流石に唯一の友達がこうなっているのにネズミ捕りをさせるほど鬼畜ではない。

 スグルを畑の主と一緒に休ませようとした時、流石に臭いが強いのだろう、ネズミが襲いかかって来た。

 いくら下等生物でも突然は驚く。


「うおぉ!!ビックリしたぁ!」


 少々癖のある驚き方で、情けない声を上げた。だが、ネズミの一端に生えた鋭そうな爪がレンの身に降りかかることはなかった。

 それはなぜかというと、簡単なことである。ネズミはごく普通の縄に縛られていた。

といっても、ネズミサイズに極細のものなので普通のものかは怪しいラインだ。


 その姿を見てまたハッとした。


(僕のスキル、そうえばそんなんだったわ)


 そう思った瞬間、謎の活力が湧いてきた。

 次々にネズミを縄で縛り、あっという間に捕り尽くした。


「これがぁ僕の力かぁ……!!」


内心ウキウキで、縛られているネズミ達麻袋に入れている。


「少しだけあれの気持ちが分かったな」


 あれとは、女神から貰った異能を互いに自慢するだけ自慢して、すぐ死んだクラスメイト達のことだ。

 そうしたレンのことを何かが見つめている。


「おい、そこの小僧」


後ろの方から自分を呼ぶ声が聞こえてくる。


「ん?」


 振り返って見ても、そこには茂みしかなかった。


「スグルみたいに疲れてんのかなぁ、幻聴が

聞こえるな」


 そうして、黙って作業を続けていると再び声が聞こえてくる。


「ここだ、下だ」


 下の方を向いてみると赤と黒の色をしたトカゲがいた。

 赤と黒と言ってもイモリのようなものではなく、所々金色の装飾があったり、背中辺りに傷があったりと色々と厨二心をくすぐられる見た目だ。

 見た目以外には特徴はなさそうなのだが……


「小僧、お前おかしな力を持っているな」


 ここで、始めて幻聴の正体を気付いた。

 このトカゲ、この通り人語を話す。

 どうやら見た目といい、人語を話しているといい、この世界のトカゲは思ったよりも賢いのかもしれない。

 そんな感想を読み取ったのか


「俺をそこらの奴を比べるな、格が違う」


 と、 ツッコまれた。

 どこがどう違うのか、そうゆう具体的な説明が欲しかったが、その格の高いトカゲは話を戻してこう言った。


 「さっきの戦いぷっり見事だった」


 そう言うトカゲに答える。


 「戦い・・・ねぇ、戦いにはなって無かったと思うがね」



 トカゲはそれに煽るように反論する。


 「飛びついて来たネズミ如きに驚いてた奴の言う事か?」


 ギクッ、と図星を突かれ、少しだけ体が固まる。そんな様子に目もくれず、トカゲは続ける。

 

「まあいい、俺が褒めているのはお前のその力だ」


「力?まぁ、スキルってやつのことなんだろうけどさ。別の世界から来たもんだからね、不思議な力を持っているんだよ」


「だろうな。"奴”のスキルの中でもお前のは良いものだ」


 随分と不思議なことである。ベタ褒めなのである。

 だが、疑問とは別に、聞き捨てならない言葉聞いた。しかし、その言葉を聞いたレンには、『奴』とはなんなのか、ではなく、トカゲに対する不信感が優先された。


 「そうかねぇ」


 「ああ、そうとも」


 少し間が空く。


「で、本音は?」


 直球な質問にトカゲは待っていたんとばかりに、間髪入れず答える。


「お前に力を与えてやる」


「は?」




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