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王との初会

 パカリ。

 そう音を立てて、王への扉は開いた。 

 扉の向こうは白く輝く大理石の壁に100パーセント純金かは分からない光輝くシャンデリアやら装飾が並ぶ、目が痛いくらいに豪華な部屋だ。

 そして、神社の参道に敷かれた暗黙の、神の通る道を思い浮かばせる朱色のカーペットの先にあるのはもちろん、玉座だ。

だが、その玉座は空っぽであったのだ。


 「ようこそおいで下さいました。勇者御一行様、現在国王陛下は公務で空席となりますので、暫しお待ちを。そして……」


 扉から出てきたスグル達をまず最初に出迎えたのはやけに派手な色をした布質の良い格好をした六十歳程の男性であった。

その男は続けて、


 「これまでの非礼の数々、誠に申し訳ございません」


と、歓迎の言葉の次に来た謝罪の言葉がその胡散臭い笑顔の上にある口から放たれる。

それと同時に、


「手厚いお出迎え、誠にありがとうございます」


 スグルは、4人を代表して、手厚いおもてなしに対する感謝の言葉を述べる。

 だが、2人の言葉は重なり合い、よく分からなくなってしまった。

 そして、スグルには、重なり合った言葉の中で『非礼』というのは聞こえ、引っ掛かる。

 どこの誰だかどこの組織だかは知らないが少なくとも、あのメイドや執事、案内してくれた翁。その人達はきちんとした態度で自分達に応じてくれていた。

 その疑問を投じてみる。


「いえいえ、皆さんとても親切でしたし、とても非礼だなんて……」


「ん?」


 男がポカーンとそんなことを呟いた。その呟きにスグルもポカーンとした。

 3,4秒ほどの静寂が生まれた。

 2人の顔は、お互い「……?」という本人たちにも第三者からもよく分からない顔をしていた。

 そんな静寂を切り裂いて、割って入ってきたのはスグル達から左手に居た男と反対である右手に、同じような格好をした一回り程年下のもう一人の男である。

 左手の男の肩をぽんぽんと叩き、

 

 「もしやこの方々は何か勘違いしているのでは…?」


 そう小声で老いている方にゴニョゴニョと伝えている。

 突然内緒話が始まり、置いてきぼりになるスグル達。

 マナーやもてなしに口煩い人間ならこの二人に対してガミガミ言うのだろうが、四人には良し悪しなど分からなかった。

 そんな内緒話の結果、不慮の事態に対応した若い方の言葉にハッとしながら、


 「なるほど、確かにそうかもしれませんね」

 

 そう言って、改めてこちらに向き直る。


 「勇者様方を王城へ連れてきたのは、ついさっき貴方様方をここまで案内していた先代国王のライオス様です」


 「「「「……!?」」」」


 スグル達全員が何も言わなかった。

 だが、その表情は無感情などでは決してない、困惑と納得の表情が浮かんでいた。

 これでスグル達が見たことへの説明がつく。

 あの老爺が、元国王だからギルドの全員が急にひれ伏したのだ。

 だが、「連れてきた」とはどうゆうことなのか、スグルの視点ではギルドに居たはずなのに何故か王城に居たのだ。

 スグルからしたら実に奇怪なものである。

 

 他3人も驚いてはいたが、スグルとは違い、連れてきたことに対してではなく、先代国王である事に対してであった。

 日本で言う上皇的な存在の人がさらっと片田舎の街に来るのは、はたから見ても異常なのだ。

 老いている方はより、この長々したくだりの核心へ迫ることを言った。


 「……そのライオス様が少々手荒、というか乱暴というか……」


 「というと?」


 煮え切らないその言葉に水を差す。

 そうすると今度は若い方が口を開いた。


 「つまり暴力で気絶させ、ここまで連れてきたのです。ライオス様曰く、『こうした方が手っ取り早いし、楽しい』とのことです」


 「えぇ」


 あの老爺がどんな気持ちで自分と話していたか、それがとても気になるし、怖くともある。

 とあれば鈴宮や小澤、大原は何故自分が気絶させられたことを知っているのに、言ってくれなかったのか……、なんて疑問を持ってそちらへ視線を向けると、全員ともその意図を察したようだ。

 そうした中、大原と小澤が一歩前へ出て言った。


 「竜峰がすぐ気絶して俺等もすぐあの爺さんにやられたんだ。よく分かってなかったんだよ。仕方ないだろ」


 スグルは言った。


 「は〜ん、なるほどね……」


 だが、その眉間にはしわが寄っている。


 「……まあ、それじゃあ仕方ないy……」


 スグルがそう言い終わらない内に、後ろの方からバァァァン!!と謁見の間全てに響かせながらドアが勢い良く開いた。

 その中からは、小綺麗な格好をした栗毛の青年が物凄い速さで走ってきた。

 一言で"栗毛の青年"といっても栗毛なのは先っぽだけで、旋毛まで濃い茶髪が続いている。

 それに、青年というのも、変なものだ。

 年としてはバイト先の年の近い先輩のようなものだろう。


 「ああ、大変大変。書類整理が遅れてしまいました……」


と、なにやらブツブツ言っている。

 そして、その青年は懐をゴソゴソ漁り、何かを取り出しながら、スグル達を突っ切って行く。


 「あの人は何なんですか?」

 

 「「……」」


 困惑8割興味2割の、少し語末のトーンが上がった声で男達に問いてみる。だが、返事がない。

 どうしたですか?と男らの方へ視線を向けるが、男らと目が合わない。

 目を逸らされているというわけではなく、スグルの視線上に彼らがいないのだ。

 理由は、下を向けば分かる。

 二人は床に片腕片膝つけ、ひれ伏している。 

 スグルは少し前にこの光景に近いのを見ていた。

 ギルドにあの老爺が来た時だ。


「(そういや、あの人元国王なのに随分とアクティブだったな)」


 なんて、能天気な事を考える。

 だが、ここでスグルに一つの考えが生まれる。光景が見覚えあるという理由だけの推察だった。ぶっちゃけ推察と言って良いかも怪しいくらいだ。


 「(まさかあの人……!!)」

 

 そう心で唱え、玉座の方を無駄に急いで首を早く動かす。

 そして玉座にはあの青年が、頭に今に生きる王の印を頭に乗せて座っている。

 青年はこちらの目を見て、飄々と言った。


 「はじめまして、私はオイディプス。ここ、プレアデス王国第45代目国王です」


 目の前の辺境の地からのやって来た民へ宣言する。

 その言葉を聞き、スグルは「合ってたぁぁぁ」と心の中で叫び、ガッツポーズをする。

 そして、青年もとい、国王オイディプスも、


「そして、この度はぁぁぁぁ……」

 

と、ただならぬ雰囲気である。

 だが、その言葉には続きがあり、今それを言おうというタイミングで……

 

 「え……?なにしてんの」


 王が宙を舞った。

 次の瞬間、王はスグル達の前で着地をした。だが、その着地の姿勢は普通では無い。

 足を畳みんで正座をし、その後手のひらを床に付け、額を地面に当たるような着地。

 そう、ジャンピング土下座だ。

 そして、大理石の床が割れる程の勢いと声で、


 「遅刻をしてしまい、誠に申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!」


一番シンプルかつ、一番効果的な謝罪の言葉を全力で叫ぶ。

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