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第15話 自分を知る事

一俺達は食堂で昼食を済まし、ハナコさんに車椅子を押してもらいながら、街の中心にある「総合戦闘訓練所」に向かった。

そして中に入り、「自由訓練所」に向かう。

リハビリすら一切していないのに、一体どんな訓練をするんだろう…


「なんだあいつら…」

「ここは見学しに来るとこじゃねえんだよ…」

訓練生達が俺達を見下すように見てくる。

まぁ確かに傍から見たら、異常に発育のいい娘が不自由な父の見学に付き合ってるようにしか見えないよな…

「あんた。一々気にせんでええからな、あんなん。」

ハナコさんが気にかけてくれる。

優しい一面も合るんだな、と思っていると自由訓練所についた。

…筋肉質で身長が2m半ほどある大男が入口を塞ぐように立ち、俺達を見下している。

「…なんやあんた。邪魔するために筋肉大きくしとんか?ダッサい男やなぁ。」

大男はニヤリと笑った。

「威勢のいいお嬢ちゃんだなァ。俺ぁ、君みたいな女の子がタイプなんだよォ。だからよォ、痛い目見たくなかったら、今から一緒に俺ん家で、大人になる訓練しよっか。」

ハナコさんが車椅子を手放し、大男の手を握る。

「え…ハナコさん!?」

「聞き分けのいい子だねェ。こんなお兄ィさんの面倒より俺といる方が一」

「「振動」。」

すると男は変な声をあげながら、6秒程で泡を吹き倒れた。

ハナコさんはため息をついた。

「あんたなぁ、うちがついて行くとでも思たんか?目が節穴なんにも程があるで。うちはちょっとだらしなくて、人を見た目で判断せん人が好きなんや。あんな見た目でしか判断してへんやつ、金積まれても願い下げや!」

なんというか、ハナコさんらしいというか…

「あはは…ていうか、今どうやって倒したんですか?」

「前言うたやんか、コピーや。ここにはわんさか訓練生がおるやろ?半径10m以内におる人間やったら誰のでもコピー出来んねん。ほら、ええから中入るで。」

そうじゃなくてどういう原理で倒したのか聞きたかったんだけど…まあいっか。

俺らは自由訓練所に入った。


中は広く、ちらほら訓練生がいた。

素振りや筋トレをしてる人、瞑想してる人、色んな人を見てメモになんか書いてる人…何してんだあれ。

そう思って見ていると目が合い、近付いてきた…。

「お兄さ〜ん、もしかしてお兄さんって凄い人ですか!?」

なんだこの子。突然話してかけてきて何を言ってるんだ。

怪訝な表情を浮かべていると、ハナコさんが話し出した。

「あんた、ちょっと頭弱そうやけど今見た事他の人に絶対話したらあかんで。…いや、あかんわ。ごめんやけどちょっとこの子連れて行かなあかん。」

「え!?なんでですか!?もしかしてそっちもイケ…」

喋ってる途中に頭をしばかれ、舌を噛んだ。

「女に興味ないわボケェ!我はうちの事なんやと思ってんねん!!こいつは「透視」の加護持ちや!「透視」は相手の能力値、加護が見えんねん!加護ランクが高かったら他にも身体の異常とか弱点、物理を無視して全てが透けて見える。やからこいつはあんたの力、全部知ってもうてんねん!」

ま、まじか…

俺の今の能力や加護の量は、神が降りてくるほど異常だ。

今他の人にバラされると国どころか世界まで大騒ぎになり

…俺はどうなるかわからない。

「という事はつまり…」

「そう、バレても大丈夫なタイミングになるまではこいつは見えるとこに置いとかなあかん。」

それしか対処法は無いのか…

考えていると女の子が話し出した。

「ご、ご迷惑をおかけしてすみませんでした!!…名前は「ミヨリ」って言います。は、恥ずかしいお話なんですが、色んな人を「透視」して、加護や能力の知識を広げるのがミヨリの趣味なんです…。モラルの欠片もない行動なのは重々承知しています。絶対他の人には言いません!なのでミヨリが出来る事であれば、なんでもさせてくださいっ!!」

…なんでこいつは乗り気で目をキラキラ輝かせてるんだ。

しかも一人称が自分の名前タイプの人か…

なんというか…うん。イタいな。

ハナコさんも呆れた顔をしている。

「…まあこいつもそんな悪いやつやなさそうやし、とりあえず一旦様子見で連れてこか。「透視」はめっちゃ役に立つしな。あと一つ言うとくけど、あんたの事信用してる訳ちゃうからな。」

ミヨリは腹に力を入れ、元気に返答した。

「はい!ミヨリはお二人の力になり、信用をかちとれるように精進することを、誓います!!これからよろしくお願いしますっ」

俺とハナコさんの手を取り、激しく握手して来る。

周囲の目が集まる。恥ずかしい…

ポジティブそうだし、純粋で真面目だがどこか少しズレてるんだよな…

「頼むで、うちらは厳しいから覚悟しぃや。ちなみあんた、ランクなんぼや?他には加護持ってないんか?」

ハナコさんがミヨリに詰め寄る。

「す、すみません、加護は一つしか持ってないです…一応「透視」はランクYです。」

「わ、Yやてぇ!?」

ハナコさんの目が金マークに変わる。

「ハナコさん、申し訳ないですけどお金稼ぎは訓練が終わってから考えてください!」

ハナコさんがハッと我に返る。

「あ、せやな、すまんかった。せやねん、うちらは今訓練中やねん。」

ミヨリは再び目を輝かせ始めた。

「ええ!じゃあミヨリはご迷惑にならないように、離れて見学させてもらいます!!お二人のお名前聞いてもいいでしょうかっ!!」

「俺はサカイ」

「...うちはハナコって呼ばれとる。」

「ありがとうございます!!」

メモに俺らの名前を書き、訓練所の端っこにあるベンチへ走っていき、座ってまたメモ帳を開き始めた。

やっぱり変なやつだな…


「ていうかハナコさん、「把握」で加護や能力値は見れないんですか?」

「見れるかいな、「把握」は思考、感情、記憶、状況…目に見えるものと相手の頭の中が見れる。だから相手が加護とか能力値のことを考えとったら見れるけど無条件で見たり出来へん。それに対して「透視」は物理的な構造、そこから読み取れるもの。力、加護や能力値、弱点、病気から耐性まで…全てが丸見えやねん。唯一、一緒なんは状況を見れるってとこくらいやな。ちなみに前はゴイルが言えん言うから誘導尋問して鑑定結果思い出させて読み取っただけや。」

なんか難しいな…でも大体の理解は出来た。ん?いや最後サラッとなんか怖いこと言ってません!?!

ふとハナコさんを見ると、真面目な表情でミヨリを見ていた。

「しかもあの子、相当使えるで。「透視」の加護持ちは相当少ない上に、平均ランク(G)でも重宝される。超稼ぎ頭になるからな。でもあの子、あんなけ普通に出歩いとるやろ?めっちゃええとこの子やねん。でもその恵まれすぎた加護と家庭環境のせいで友達はおらん。だからあんな変な趣味持ってもうてん。…あの子はあんたがちゃんと「教育」したり。ほんなら戦闘でも、生活でも右腕になれる存在やで。」

さっきの握手で記憶を見たのか。

確かにミヨリは俺の生徒にいそうな感じの性格だな。

「てかあの子にも後で参加してもらった方が都合ええわ…ま、とりあえず時間も勿体ないし訓練始めよか。まず今日の目標は、「腕と脚」を生やす事!!」

「え…?えええええええええええ!?!?!」

俺は今の残った身体に慣れるとか、鍛えるんだと思っていた。

てかそもそも再生出来るの!?「生やす」って何!?某アニメの、触覚の生えた緑色の宇宙人見たいな感じ!?!

驚いていると、ハナコさんは鞄の中からノートを取り出した。

「あんたが寝とる間に、うちも見た事も聞いた事もない加護「覚醒」について、「知識」の加護で調べさせてもらった。頭は1回オーバーヒートしてもうたけど、ちゃんと全部覚えれたわ。今から全部話すからちゃんと聞いときや。」

「はい…。」

俺は真剣な面持ちで、固唾を飲んだ。


「まず、「覚醒」を使える条件や。これは「他者が自分へ関心がある状態での感情の共鳴」らしい。いうたら例えば私があんたに強くなって欲しいって思ってるとする。ほんならあんたが強くなりたいって思った時、感情が共鳴して覚醒するっちゅう条件やな。ほんで数も関わってくる。

1人に思われることで覚醒度は大体2%~6%ぐらいやな。まあ想いの強さによるわ。んでな、ここで私は思ったんや、「死んだ人間の想い」も共鳴するんかと。結果は「共鳴はするが死者の思いは変化する事がない」やった。生きてる人間はその時その時で感情が変化するやろ?それが亡くなる直前の想いで止まるから、変化する事が無いっちゅうことや。ほんでな、あんたの記憶を見た時に、間接的に生徒さん達のあんたへの思考や想いも読んだんや。なんて思ってたと思う?」

生徒たちが俺にどう思っていたか…?

「…夢の中で、生徒たちは「ずっと味方だよ」って言ってました。なんて言えば良いかわかりませんが、家族や友達のような、ただ純粋な「愛」のような気がします。」

…ふと我に返った。

何言ってるんだ俺は…質問の答えになってないじゃないか。

恥ずかしさのあまり、顔が赤くなる。

「あ、い、いえ、すみません、変な事を言ってしま一」

「いや、正解やで。」

…え?「何言うてんねん!」とツッコまれると思っていた俺は、ハナコさんのあまりにも予想外な返答に呆然としてしまった。

「答えは「愛」や。例えあんたが間違えた方向に行ったり失敗したとしても、人を憎んだとしても。そこから学んで自分が正しいと思う方向に進める。あんたはその正しい方向を人に教える「教師」かもしれんけど、みんなはあんたを一人の人間として尊敬し、応援しとった。あんたが正解やと思う方向がみんなも正解やと思えとった。力になりたいって心から思っとった。だから生徒さん達は、あんたの一「全ての感情」に共鳴する。」

…よかった。

俺の汲み取ったみんなの想いは間違いじゃなかった。

正直、不安だった。人の心なんて見えないし、わからない。

俺は皆のことを信頼し、大好きだったけど皆はそうじゃなかったかもしれない。

神様と会った時も、もしかしたら違う感情で憑いていたのかもしれない…と思っていた俺が間違えていた。

「ハナコさん…ありがとうございます。」

「…なんか吹っ切れたみたいやな。まぁ、あんたの気持ちもわからんでもないけど、自分が大好きなんやったら信じたい言葉を信じたらええ。生きてるうちらは、死んでる人間になんも出来へんねんから。」

一滴の涙が頬を伝った。

「す、すみません…話の続きをお願いします。」

必死に右腕で涙を拭う。

「ほんま涙脆いなぁ…人情あるっちゅう事やしええことなんやけどな。まあそういうこっちゃ。生徒は確か30人おったな。単純計算、2%~6%×30やから最低でも60%、高くて180%やな。でも最大は1000%やから程遠いけど教師なんやったら他の生徒にも思われとるやろ。」

俺は少し俯きながら答えた。

「いや、僕の受け持ったクラスの生徒たちはみんな親が居らず、施設と提携していた為、そのクラス専門の担任という形でして…他の生徒とはあまり交流がなかったんです。」

ハナコさんが落ち着いた声色で話す。

「あぁ、そうなんか…。まぁ、しゃーないわな。これから増やしていったらええ。私もあんたのこと応援はしてんで。…とりあえずこの「覚醒」の条件はわかったやろ、今から一週間訓練するのはこの先や。あんた、無意識のうちに「覚醒」はちゃんと出来てんねん。けどな、ちゃんと使い切れてない。使いこなせてへんねん。だから今から実践や!おーい、ミヨリーーー!!!」

猛ダッシュでミヨリが走ってきた。

「はーーい!!!どうされましたか、ハナコさん!!」

「今からこいつが「覚醒」するから、何%解放されとうか見たってくれ。」

え?俺今からこんなとこで覚醒すんの!?

ミヨリの表情が少し曇る。

「覚醒という加護は見たことないのでわかりませんが…頑張ってみます!!」

本当にこいつポジティブだな。

俺も見習わないと。

「あんたのやり方はあんま良くないんやけどな…暴走しても私がおるから大丈夫や。今まで腹立つ事、しんどかった事あったやろ?それを全て鮮明に思い出せ。あの時どう思ったか、今そいつをどうしたいか。あんたはそいつに勝てるほどの力があって、今目の前におるって全力で思え。」

そう話しながら、右手と左足を車椅子に縛られた。

ハナコさんが指をパチッと鳴らすと、自由訓練所の中にいる他の訓練生達がバタバタと倒れ、外からの音は何も聞こえなくなった。

「魔法で眠らせて、外には想像の練習風景を移しとる。これで誰にも見られることも聞かれることもない。全力で感情を昂らせろ!!」

「わかりました!やってみます...!!」


俺は目を瞑り、集中した一

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