第11話 重なる運命
「おいお前、何者だ?そこで何をしている。」
仇のウルバリンをいたぶっていると、国営騎士団副団長のカルアが現れた。
「…てめぇこそ何しに来た?」
ウルバリンを殺したというのに鼓動の高鳴りは収まらず、目も赤黒いまま体は軽く黒い煙が出続けている。
「ほう?私を知った口振りだな?貴様、どこかで会ったことがあるか?」
カルアは俺に気付いていないようだ。
「へぇ、国が誇る騎士団の副団長さんは脳まで筋肉なせいで人の事も覚えられねぇのかぁ?」
カルアの目付きが変わる。
「なんだと…?少し力を持っているからと言ってあまり調子に乗るなよ…?」
最高のタイミングだ。何せ、体の調子がすこぶるいい。
前からこいつは嫌いだったんだ、一度ぶっ飛ばしてやろう。
「てめぇは目も筋肉なのか?さっさとかかってこいよ、イキリクソビ〇チさんよぉ」
お互い構える。
しかし動きがない。
「…なんだ?さっさとかかってこいよ。びびってんのか?」
中腰でこちらをじっと見つめ、今にも切りつけてきそうだがピクリとも動かない。
「もしかしてため技かぁ?あと何秒待ちゃぁいいんだぁ?よくそんなんで副団長になれ一」
「何を1人で喋ってるんですか?」
急に背後から声が聞こえてきた。
振り向くと、白いローブを着た見たこともない人種の若い白髪の男が立っていた。
いや、よく見ると宙に浮いている。
「誰だてめぇ?邪魔すんじゃねぇよ。」
男は深く溜息をつき呆れた表情を浮かべた。
「既に時は止めてあります。…あなたは罪深い人間だという自覚がないんですね。では話す余地はありません。」
男が人差し指をサカイに向けた瞬間、光り輝く突風が吹いた。
それと同時に、技術向上や能力向上の効果や黒い煙などの体の変化が全て解けた。
「あ、あなたはまさか…神様!?」
男は真剣な面持ちでこちらを見つめている。
「我々は貴方たちより上の次元に住まう者です。まぁ、貴方の解釈はほぼ合っているでしょう。貴方は我々の与えた加護法第5条「7つ以上の加護の所有」第42条「他者からの加護を5つ以上譲り受ける」この二つを破りました。なので全て回収させて頂きます。」
神様は後ろを振り向き、その場を去ろうとする。
「ま、待ってくれ!!これは生徒たちから託されたものなんだ…あなたには関係ないかもしれないがチャンスをくれないか…!あなたが何かを成し遂げろって言うなら、俺はなんだってやる!!」
神様は止まる。
「ほう?なんでもですか?…いいでしょう。チャンスを与えます。しかし今から私が言うことを1つでも成し遂げられなかった場合、加護の剥奪だけでなく輪廻転生を停止させていただきます。それでもやりますか?」
輪廻転生の停止…?死んでもこれから生まれ変わることが無くなるのか…
いや、大丈夫だ。俺はあの時、決めたじゃないか。
覚悟を固め、答えた。
「はい。やります。」
神様の表情が少し和らいだ。
「では説明させて頂きます。まずこの宇宙は高次元の存在が創り、常に見ています。余程のことが無い限り、干渉は致しません。しかし宇宙の創設者は退屈しております。そこであなたに課せられる事は5年以内に「歴史の根源」になって頂く事。貴方が起こした行動によってこれから先の、人類の未来に大きな影響を与えてください。善悪もありません。何をするかも全てあなた次第です。」
思っていた以上に抽象的だが難易度MAXなお題だな。しかも5年か…歴史を変えるには短すぎるだろ。
だがやってやる。俺は教師だ。
神様だろうがなんだろうが、人の「想い」の力を教えてやる。
「そして我々からの干渉を他言する事は許されません。他言した場合、契約破棄と見なします。…以上です。質問は限られた範囲内でしたらお答え致しましょう。」
この神様が全知全能とは限らない。
だが俺が1番知りたかったことを聞く。
「…4日前に起きた魔物の襲撃は、その神様達が起こしたことですか?」
怒りが表情に出てしまっていたのだろう。
神様は察したように答えた。
「…いえ、今回は我々が起こしたものではございません。原因は魔王グラン・テオリウスと国王エルス・ガルガの関係性の亀裂によるものでしょう。」
そうか…グランガルガで起きたことは…
「いや待て、なんで魔王と国王の名前が都心の名前になっているんだ…!?
今の歴史には、何千年も前から魔物と人類は対立し、500年前に魔物が王都ガンガルガを襲撃。その際お互いに甚大な被害が出たためそれぞれの領土を分けたが、分かり合うことはなかったと言い伝えられているぞ…!?」
今まで人類に伝わっていた歴史はほとんど嘘だったのか…?
焦る俺に、神様は諭すように返す。
「この世は、現実に向き合い思考、行動する事で、知識を得られ何かを獲得するように創られています。私はそのきっかけを与えただけです。」
落ち着きを取り戻した俺は、はっと我に返る。
「確かにそうですね、取り乱してすみません。…最後に質問いいですか?今、生徒達はどこにいますか?もう既に新しい命として…」
「いえ、貴方のすぐ側にいますよ。貴方には姿は見えないですが、30名の子供達が貴方に寄り添い、微笑みかけていますよ。」
俺の頬を涙が伝う。
気のせいかもしれないが、体のあちこちに温もりを感じた。
「…そうですか、ありがとうございます…..。俺、必ずやり遂げるんで見ててください。」
左腕で涙を拭う。
「いてててて」
ウルバリンの血が目に入り染みる。
「ふふふ…愉快な人ですね。では頑張ってください。一それと、カリウス。私の名です。」
そう言い、神様は光に包み込まれ消えていった。
カリウス。覚えておこう。また会うことになるだろうしな。
「さて、どうしようか…」
呟いた瞬間だった。
一シャンッッ!!!
後ろをとてつもないスピードで何かが通った。
そうだ、忘れてた…今俺はカルアに喧嘩を吹っ掛け戦闘に入るところだったんだ…
なんて時に来てくれてんだよ神様ーーーー!!!
正直、背中で感じただけでも勝てる気がしなかった一