第1話 ラーメン食べたかった
「キーンコーン、カーンコーン」
下校のチャイムが鳴った。
「先生、また明日ねー!バイバイ!」
帰っていく生徒たちを笑顔で送り、残りの仕事を終わらす。
今日は早く帰れそうだな、と思い時計を見ると
午後7時33分。いつもより1時間ほど余裕がある。
「ラーメンでも食いに行くかぁ」
そう1人で呟き、パソコンを閉じ、必要な書類をまとめ自分の車に向かい、車のエンジンをつけ帰路に着いた。
帰り道の交差点にある行きつけのラーメン屋の灯りがついていなかった。
平日なのに休みか?そう思い目を凝らして見ていると、
「ビィーーーーーーーー!!!!」
ガシャーン。
前を向き直した時にはもう遅かった。
「ー何が起きたんだ…確かラーメン屋に行こうとして…クラクションを鳴らされて…あ!事故したんだ!!!ヤバいヤバい色々面倒だぞ…」
ふっ、と目を覚ますと、外には投げ出されず車の中にいた。しかし、辺り一面が血の海だった。
身体中が熱いのに裸で北極にいるくらい寒い。
北極行ったことないけど。でもそう思えるくらい寒くて、同時にこれが死だとも確信した。
あとなぜか意外と冷静だった。
グロいのは苦手で見たくない。そのままスっと目を閉じた。
「最後にラーメン食べたかったな…でもラーメン食べてたら吐いてたか。辺り血とラーメンの海か、きもいな…いや事故回避出来てたんじゃね?でも運命って変わらないって言うしな…」
しょうもない事を考えながら俺は意識を失い、この世を去った。
気がつくと何も無い世界にいた。
本当に何もない。視覚も、聴覚も、何もかも。
息もしてないが苦しくはない。なんだこれ
しかし意識はうっすらある。
寝起きの時、目が覚めて眠くないけどボーっとしてなんとなく目をつぶってる時のような感覚。
するとどこからか声でもない、意識が伝わってきた。
「俺の次の生まれ変わりは…前世ともっと違う場所だと…なので今までの記憶を消してもいいし残しててもいいと…
そして、その記憶はいずれ思い出せなくなるとー」
…これってあの転生ってやつじゃねぇか!?
胸があるのかわからないが、俺は心を踊らせた。
「もちろん、記憶は残す!!」
こうして俺は、全く違う世界
言語も、景色も何も知らない場所に生まれ落ちたのであった…