ここが没落農村
相楽 銀 29歳、職業 詐欺師。
自由に人を騙して、自由に暮らしている。マルチ商法、預金詐欺、助成金詐欺、ロマンス詐欺、出来ることはなんでもやった。自分以外の人生なんてどうでもいい。
そんな俺が恨みを買い、こんなところで殺されるなんて…
どこを見ても真っ白い空間がただ広がっている。俺は死んだのだと確信した。
どこからか声が聞こえてくる。
「相楽 銀よ。ようやく死んだか。ワシが祀られてる神社によくお前の被害者が参拝しに来ててな。もう、うんざり、めんどくさい!何人騙してんだよ!
ま、殺されたのは…、バチが当たったんだとでも思え」
(こいつ、本当に神か?性格悪すぎだろ…)
「俺は死んだんだよな?」
「あぁ、死んだぞ。ただ完全に死ぬということは無になるということ。それだけじゃ罰としてぬるいだろ。
だからまた苦しい境遇で生き続けてもらおうとおもう」
「それは、どういう…」
神様が杖を振りかざすと、体を包み込むように上から光が刺してくる。
目を開けるとそこには、知らない天井と知らない男と知らない女が上から覗き込んでくる。
「パパでちゅよ」
「ママでちゅよ」
(バカにしてんのか?)
辺りを見渡す。
(ん?俺、赤ちゃん?これはなんだ?異世界転生っやつか?)
そう気づくと話は早い。
「パパ?」
「ねぇママ!もう喋れるようになったよ!」
「ママ?」
「ホントね!この子天才かもしれないわ!」
父、ギィク。母、カーラこの2人が俺の新しい親である。そう、バカ親である。
「お前の名前はキャンドだ!よろしくな!」
しばらくして気がついた事がある。
この世界は魔法という概念があるらしい。本当に漫画の世界みたいだ。
そして、この村はアンカの村と言い、村の家はどこも隙間風が気になる程のボロ屋である。雨が降ったら雨漏り、丹精込めて育てた野菜も貴族に搾取される毎日、ここは完全に没落した農村だ。
村の外の世界は誰も知らない。それもそのはずで、この村にはルールが3つある。
・村の外に出てはいけない
危険な魔物がいるらしい
・農作物を栽培し続けること
それが生き甲斐だと教育されている
・収穫した農作物は貴族が管理する
村の人達は計算が出来ないから貴族に頼るしかない
完全にこの村は詰んでいる。それに裏で村人全員の人生が管理されていることは明確だ。
地獄より苦しいとはこの事か。
この貧乏生活が死ぬよりも厳しい罰という事か。