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前進し、過去を想う

 蔓や木の皮で簡単な縄を作り、太い木の棒に巻き付けてから棒に括って弓状にする。

 よし、うろ覚えだがこれで火を起こせるはずだ。弓きり式着火法、だっけ。自信も、体力も無いけれど。

 暫く手を動かしていると、ほのかに焦げ臭い匂いがしてきた。確実に、温度が上がっている。自信がついた私は、さらに力を加える。

 甘かった...

 五分もしないで、私は腕を止めた。もう腕を動かしたくない。火を起こすのはやめよう。とても残念だけれど...

 私は寝っ転がりながら大きくため息をつく。こうしている間にも擦った木の板は冷めていっている。今までの一時間の努力を休憩の三分で無駄にするのだと思うと、やっぱり休みたくなくなってきた。

 周りのモフモフ達が応援してくれている気もするし。


 また一時間ほど経った時、漸く火を付けることができた。このよく知らない世界での、生活の質が一歩前進だ。

 周りの猫達も暖かそうにしている。私も、疲労でいっぱいの身体がぽかぽかしてきた。

 よし、次は食べ物だ!


「この川の上流の山には他の動物がいると思うし、下流には海があるはず」

 ズボンの裾を上げ、猫に話しかけながら川へ入る。目的は勿論魚を捕まえて食べるためだ。川の中に魚がいることは確認済みだ。味に期待を膨らませながら、私は泳いできた一匹に狙いを定めた。


 簡単に捕まえられると思っていたが、実際はそう単純ではないらしい。動きが素早くてなかなか掴めないし、掴めたと思っても滑って逃げてしまう。

 幾何回失敗した私は、一旦引き上げることにした。焚き火へ戻って濡れた手足を乾かす。

 一体どうしたら魚を捕まえられるのだろう。私は前の世界での漁業を思い出しながら、作戦を建て直す。

 魚、と言ったら釣り竿をすぐ思いつくが、ここには糸となりそうなものも針となりそうなものもない。だからこれはダメ。

 大きな漁船は、網で魚を取っていた。ここらで網になりそうな物は、木に巻きついている蔓か。時間こそかかるものの、編めば成功しそうだ。可能性に残しておく。

 確か川魚を獲るのに、川を石で堰き止めて捕まえる方法があった気がする。そうすれば下流に逃げられる心配はないし、一箇所で待っていれば魚の方から来るだろう。道具を作る必要もないし、今回はこれにしよう。

 川原にある石の中から、大きめのものを選んで拾う。で、川の中で壁を作りちょうどダムのようにする。石と石との間は、魚が通れないくらい小さくする。

 十分もかからないうちに、ダムは完成した。これでうまく魚が捕まえられるといいのだけれど。 若干の心配をしつつ、私は魚が近くに来るのを待った。


 とうとう来た!魚が上流から泳いでくる。もう失敗は許されない。

 まず手で水面を叩き、魚をダム近くへ誘導する。そして、ダムと私の間に魚が来るように立ち回る。逃げられないように魚の体を握り締めた。また川へ逃げられないように、陸地に投げた。しばらくビチビチ跳ねていた魚は、多量の鱗を撒き散らしてやがて動かなくなった。


「つまりね、結果を出すためには方法を丁寧に計画する必要があるんだよ」

 焚き火の周りに集まった猫達に語りかけながら、焼いた魚を齧る。あの後さらに三匹取れ、夕食は豪華なものとなった。

「方法が分からず失敗した時は、自分には無理だと決めつけるのではなく、また違う作戦で挑めばいいんだよ」

 眠たそうな猫達にそんな言葉を言いながら、また一口魚を齧る。

 食べ終わった頃には辺りはすっかり暗くなって、焚き火の周りにだけ光があった。そろそろ寝よう、と思い私は横になった。

 夜空を見上げながら、私はさっき喋った言葉を思い返していた。

 失敗しても、違う作戦で挑めばいい...か。

 前の世界では、そんなこと考えなかった気がする。一度失敗したことに懲りずまた挑戦するのは効率悪い馬鹿のやることで、ダメだったことは忘れてどんどん新しい事に挑戦していくのが良いと思ってた。

 一概には言えないけれど。でも、この世界に来てからそういう考え方になるのは、前の世界でとても大切なモノを取り零していたんじゃないかな、と。

 私には時間を巻き戻す術も持っていないし、前の世界に戻る方法も分からない。意味のない後悔だとわかってる。でも、「こうしていればよかった(かもしれない)」が頭の中でグルグル渦巻いている。

 私の懊悩など月から見ればちっぽけなものだとわかってるのに。

(明らかにこの部分はこの物語で浮いてるよなぁ...)

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