これは夢だ、夢のはずだ
みんなは、目が覚めたら全然知らない所にいた、と言う経験はないだろうか。
...ふんふん、なるほど。酔い潰れて友人の家に搬入された、とか急に倒れて起きたら病院だった、みたいな人がいるようだ。
私もそうであったならどんなに良いだろう。しかし、この状況は残念ながら違う。目が覚めたら、この世かどうかも怪しいくらい「全然知らない所」にいたのだ。きっかけすらも、全く分からない。
眩しい陽射しで目が覚めた。目に映ったのは、冗談みたいな青だった。そっと首を動かすと輝くような緑も見えた。単色で描かれた絵画のようなここは、どうやら大草原の中のようだ。
夢なのだろう、と思った。自然など殆ど無いビル街の中でずっと生活していた反動でこんな夢を見ているのだろう。夢ならいい。時間が来たらやがて私はこの大草原から離れるのだから。
それは少し寂しいが、少し安心でもある。ここのように寂しい所で、私は長い間過ごせない。
そもそも現実的に、こんな所にいるなんて信じられない。行こうとした記憶も、こんな所を訪れた記憶も。肝心の記憶は最近になればなるほどぼやけているが、ここに居るきっかけも何も無いのだけは確かだ。
というわけで、よし、ここは夢なのだという結論が出た。 ならば、せっかくならここを散歩してみようじゃないか?
改めて360°見渡してみると、ただの草原じゃないようだ。遠くの方には雲をも突き破る山があるし、その山の方角から水が流れている。水の流れはずっと続き、私からほんの100m程しか離れていない所にも流れていた。
木も生えている。山(峰と言った方が良いだろうか)に行くにつれて密度が増している。木の高さはかなり高い。10m程だろうか。
正体がわからないものもある。地平線に近い大地にまばらにあり、黒だったり白だったり茶色だったりしている。遠くだからよく分からないが、猫ほどの大きさだ。緑の中にあるから存在はハッキリと分かる。
私がその正体を考えあぐねている間に、どんどん近づいてきていた。それとの距離はグッと縮み、そしてとうとう正体を目視することができた。
猫だった。比喩で「猫ほどの大きさ」と言ったが、まさか本当にそうだったとは。少し私が驚いている間にも、猫達はどんどん近づいてくる。
とうとう囲まれてしまった。猫達はかなりの数があり、三桁は軽く行っているだろう。
これは、一体どういう夢なんだ。夢診断ではどういう結果となるのだろう...?
青空の下、峰に見下ろされて私は、猫に囲まれながら途方に暮れている。