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#66 妖精の国の話

 マリーが転移魔法を使って、俺達と見知らぬ場所へと転移した。

 ちなみに、ファルカス達には俺が魔族と人間の混血であることは伝えてある。反応は薄かったけどな。

 転移先は自然が美しい場所だった。といっても、見覚えはある場所だ。

 五年前、俺が失明した場所。パルテノン神殿とコロッセオを組み合わせたような、神話に出てきそうな建物。

 オーディンと彼が許可した者しか入れない、だったか。

 しかし問題がある。この近くには、恐らくクロードが住んでいるであろう家があるのだ。あいつ頭おかしいからな。可能な限り会いたくない。


「ここはオーディン君と許可された者しか通れないけどね、抜け道があるのだよ」


 あるんかーい。意味ないじゃん、それ。抜け道を知られたら、誰だって入れちゃうじゃん。

 っていうかマリー、オーディン君って言ったな。妖精王らしいけど、マリーは親しい仲だったのだろうか。


「抜け道、ですか」


 ファルカスが聞く。

 彼はまだマリーを疑っているようで、怪訝な顔をしている。ラーファは······マリーは大丈夫だと確信しているようだ。

 まあ疑うのも仕方ないか。だって、レイガルドの紹介だもん。


「そ。妖精主っていうね、オーディン君直属の部下が許可していれば、入れるよ。ちなみに私は勿論、妖精主だとも」


 マリーが自慢気に重要なことを言い放った。普通にやべえ秘密だと思うんだけど、まあいいか。それだけ俺達を信頼してくれてるってことで。

 マリーが妖精主ってことは、彼女実は結構な偉い妖精なんじゃないか。レイガルドって、どうやって知り合ったんだろう。

 マリーと一緒に門をくぐり、本来は足を踏み入れられない場所へと進む。

 すると、あらびっくり。門を通った瞬間に、さっきとは全く違う風景が広がっていた。

 出店が立ち並び、賑やかな町。羽をぱたぱたさせる小さな妖精や、力仕事に精を出す巨人。さらには足元をとことこ歩く袋を抱えた妖精。

 多種多様という言葉がお似合いな、まさに妖精の都だ。

 思わず言葉を失ったが、そうこうしている場合ではない。鏡だ探し人を映すっていう、鏡。


「どうやって鏡を······」

「鏡だが、正確には鏡の妖精だな。おい、そこの君」


 ラーファが独り言のように呟く。

 マリーは近くを飛んでいた小さな妖精に話しかける。

 レイガルドとユリウスは······おけぃ。まだ手を出してくる気配はないが、油断はできない。彼らをあまり後ろに立たせたくないが、それだとファルカスの護衛がしにくいんだよな。

 マリーに話しかけられた妖精は陽気に応じる。鏡の在り処を聞けば、すぐに答えてくれた。聞けば妖精たちの間でも話題になっていたそうだ。


「最近できた子だからね! 妖精はミーハーなの!」


 ちっちゃい子供みたいで癒される。人間を見て怖がらないでくれて良かった。

 ありがとうと告げて、教えてくれた鏡の居場所へ向かう。何というか、ミーハーさんで良かったな。

 急いでその場に向かう。鏡の妖精は鏡自体が妖精なのではなく、鏡を持った妖精らしい。尚更面白いな。

 町を少し外れた住宅街。そこにぽつんと、露店があった。側にかけられている看板には見知らぬ文字が書いてあった。


「『探している人、当てます』か。間違いないね」

「え、アレですか」

「随分と陰気······えと、落ち着いた露店ですね」


 レイガルド、それはアウトだ。と思ったその瞬間に、後ろから深い深いため息が聞こえてきた。見なくてもわかる、ユリウスが頭を抱えているのを。

 ファルカスがその露店に近づいていく。勇気がありすぎるだろ。俺も一応彼の護衛だからついていくけど。

 ラーファものこのことついてきた。


「あの、すみませ――――」

「無理。あなたの探してる人、妨害されてる」


 早い早い早い早い。まだ何も言ってないぞ、ファルカス。

 露店には鏡を膝の上に乗せた少女が座っていた。顔は隠しているが、只者じゃない感じがすごい。

 ファルカスは驚きと同時に心がかなり抉れたようで棒立ちになっている。


「そこのあなたも。妨害されてる。でも安心して、どっちも死んでないから」


 ラーファも硬直してしまった。しかし生存報告があったことで、またすぐに動き出した。


「「あ、ありがとうございます!」」


 たった数秒。しかしこれは大きな一歩だ。これまでは生きてるか死んでるかすらわからなかったのに、生きていることがわかった。

 公爵には喜んで報告できるってもんだ。とりあえず、どっちも生きてて良かった。

 俺も緊張しちゃったからな。安堵感来た。

 直後、石が俺に飛んできた。

 反射的に剣を抜き、弾き飛ばせたがまた一個二個と飛んでくる。大した威力じゃないからいいんだけど······。全方向から来る。

 剣で石を叩き落としながら周りを確認する。住宅街の真ん中ということで、多くの妖精たちが石を抱えて俺達を囲んでいた。

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