#59 種族の話
人間······は言わずもがなわかる。飛ばそう。
エルフ。主にアールヴヘイム大陸に生息。耳が長く長命な種族。自然信仰が盛んで、森などに住む。妖精の一種、魔法霊(精霊)と共存し、意思疎通ができる。ただしその他の妖精とはできない。
ほほーん。大体はイメージ通りだな。耳が長くて長命だなんて、そのまんまじゃん。自然に生きてるし、精霊と話せるし。イメージ通りすぎて最早怖い。次に進もう。
ドワーフ。主にミズガルズ大陸のニザヴェッリル地方に生息。多くの者が鍛冶などの創作や芸術に秀でている。低身長でエルフほどではないが長命。人間との共存を選んだ唯一の種族。
なるほどね。ミズガルズ大陸のニザヴェッリル地方ってどこ? 人間との共存ってあるし、人間もミズガルズ大陸か? しかしまあ、ドワーフもイメージ通りってところかな。低身長で人間よりは長命。鍛冶についても、言うことはもうありません。
次行こ、次。次は、魔族? まあこれも定番っちゃ定番だし、魔物がいるからいてもおかしくないか。
魔族。ヘルヘイム大陸に生息されると思われる。数こそ少ないが、個体の戦闘力がかなり強く、戦闘種族である。魔物や魔獣を使役する力があることが確認されている。
ヘルヘイム大陸に生息されると思われるって何だ? 詳細は不明ってことか? 魔族だしな。そもそも魔族のイメージが固定されていないが、脳筋であることは間違いなさそうだ。出会うこともないだろうし、無視してもいいかな。
それにしても、魔物や魔獣を使役って、すごい能力だな。そういう魔法でもあるのかな。
次は、妖精。妖精!? ああ、精霊いたからいるか。
妖精。定義上は種族ではなく現象であるが、交配による子孫の誕生が確認されているため、生物上では種族に属する。
はいストップ。もうこの時点で良くわからねぇ。じゃあアレか、雷起こってそれが妖精の仕業ってのもあるのか? ······案外ありそうなのが、この世界なんだよな。
意思を持つ個体数はかなり少ない。魔力に思いや願いが込められることで発生する。多くの者が、込められた思いや願いに沿うように生きる。なお、思いが継続的に続かないと存在は消滅する。思いの強さに魔力量は比例する。魔法霊(精霊)は、人工的に生み出せることが判明している。
つまり、曖昧な存在ってことか。じゃあ神様を信じ続けたら神様妖精ができるのかな。妖精について興味が出てきた。今度妖精について学ぶか。
すぴーすぴーと寝息が静かに聞こえる。本に夢中で気が付かなかったが、二人とも寝ていた。
あれ、夜? 全く気づかなかった。
〚そうそう、用事を思い出した。行かなきゃ、森に。
俺は転移魔法を使って、森に飛んだ。静けさが目立つ夜の森は驚くほど不気味で色味がなかった。火の魔法で明かりをつける。一気に、視界に鮮やかさが広がった。
夏が近づくというのに、涼しいというか肌寒いというか。いい避暑地に――――〛
あれ、俺何してるんだ? まったくもう、目から血を出しちゃってさ。森の中に一人で。
っていうか、寒っ。夏はもうすぐ来るのに、こんなに寒いのか。ここ、もしかしてカーティリスと全く別の――――?
「帰りたい?」
っは、っっははははっは、びっくりした。どこからか声がした。遠くではない。寧ろ近い。
体硬直。目だけ横に移動させたら、眼鏡をかけた人が立っていた。
「知りたい?」
「誰?」
折角声が出せるのならば、出しておこう。もうそろそろ魔法をやめたい。転移魔法を使えば失血死しそうだ。かといってここがどこかもわからない。
詰み。絶望的な詰みだ。
あ、あう、どうしようか。さっきから謎の問いかけをしてくる眼鏡をかけた人。貴族っぽい身なりだがそうではなさそうだし、若い男だ。魔力は多い、めっちゃ。
「誰、か。まあ、怪しくはないし、君に危害加える気はないよ。寧ろ、君の知りたいという願いを叶える手伝いができる。あ、名前はね、クロードっていうんだ。妖精だよ」
意思を持つ妖精は少ないって、確か書いてあったよね。
どう見ても怪しい。妖精であることは信じるけど。
目が熱い。あれ、あれれ。意識が遠のいていく――――。




