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エルフ、カップラーメ……総理に会う

ずぞぞぞぞぞ……


対策本部が置かれた建物の一室で、麺を啜り上げる音が響く。

食事の用意が出来ますが……と言われて私がお願いしたのが……コレ♡


カップラーメン!……クァッッップ!ルァァァァァァァァァァァァムゥゥェン!


結局、最高責任者……総理大臣に判断してもらわないとダメじゃないかって事になって……まぁそうだよねぇ……コッチに向かってる総理が到着するまで時間を潰さないといけなくなってしまった。


あまりに事態が急すぎて……災害なんだか有事なんだか分からない……どこが担当するのか……などとあたふたするハメになって、指揮をどこが取るかって事で揉めてるらしい。


異世界からの来訪だしね……予測してないよね。


もちろんそれぞれの部署にはそれなりの用意があったんだろうけど、誰が動いたらいいかわからん……って状況だと初動は遅れるよね。


異世界・宇宙侵略担当部署とかあったらいいんだけどね……侵略とかは自衛隊が対応するのかな?

まぁ……そんな事よりカップラーメン!……あぁ♡……この味ィ♡……もちろん箸で食ってるよ!


『向こう』じゃ製造の手間に見合わなくて、高級品になっちゃうから趣味で作って自分で食べるくらいの事しかしてなかったんだよねぇ。


それに……なんと言うか……なんかこう……ちょっと違うんだよねぇ……

極力再現してるつもりだったけど、今こっちの世界のモノを食べてみるとやっぱり違うんだよ。


あとは自分で即席麺とか製造してから食べるとか……普通に調理したの食えよ……ってなるし……

時間の止まってるインベントリとか、マジックバッグとかあるから……すごい意味ないし……


「美味そうに食うな……」

「500年ぶりくらいだからね」

「おう、なんと言うパワーワード」

「あの……」


太田さんがなにか聞きたそうに、こっちを見ている。


「ん?」

「いえあの……リンドさんは……その……」

「あ〜、私元日本人ね……」

「異世界転移!」

「ん……種族変わってるし、転生の方です」


転移だと、こっちにいた時からエルフだった事になっちゃう……ん?……異世界からこっちに来たんだから転移?


まぁいいや……


どうも長生きしたからか、物事にこだわらない事が多くなってきた……これも老化だろうか?

でも若い(?)時の知り合いとかに、(主観では)時間を遡って会うと自分が年寄りだか若いんだか分からなくなってくるね。


そのうち慣れると思うけど……


「んくっ♡……ぷはぁ♡」

「汁まで飲むと塩分摂りすぎになるぞ……」

「5世紀ぶりくらいだから、大丈夫でしょ」


カップラーメンの汁まで飲み干すと、武光に注意される。

塩分過多とかわかるけど……許して欲しい……久しぶり過ぎて……残すとか勿体なくて……


「5世紀……」


太田さんが目を丸くしている。


「ごめんねぇ……エルフの中身が日本人で、夢壊れちゃったかな……?」

「いえいえいえいえっ!……えっと、リンドさんは転生してからずっとエルフだったんですよね?」

「そうそう……とある国の初代国王の義理の母とかしてました」


まぁ……ここ数十年は、いつまでも居座る姑ポジション扱いになってたけど……あの子の直系達には好かれてたけど、外から来た嫁達には嫌われてたしなぁ……それにいつまでも支給される年金に大臣達にため息つかれてたし……


あれ?……こっち来て正解?

うーん、用が済んだら向こうに帰る事考えてたけど……帰んなくて良くね?


あ〜、墓参りは行きたいからその時考えたら良いか……ん……元の時間に帰れる保証も無い事に今気付いた。

我ながら雑すぎ!


「リンドさん?」

「んっ!……あぁ……なんでもないですよ」


まぁ……後の事は後で考えるから……いっか♡


コンコン


私達のいる部屋のドアがノックされた。

どうぞと言うと……カチャリと音を立ててドアが開いて、作業着姿の女性が入ってきた。


一応、よそ行きのかしこまった顔をして出迎える。


「…………」


入って来た女性は……用があったはずなのに、何故か無言で私の事を見ている。

ぼぉっと立ち尽くす女性の周りを、物珍しげに精霊達が飛び回っている。


「あの…………?」

「エルフ……素敵……はっ?!……いえっ!……すいませんっ!総理が到着しました!」


どうやら私に見とれてしまったようだ。

いやぁ美しいって……罪……私の神秘的な雰囲気に女性もメロメロ……おっとカップラーメンの容器は武光の方に寄せておこう。







ーーーーーーーーーーーーーーー







到着した総理は……銀行で高い役職をしていそうなメガネの人で、確かよく検討するとか言ってる人だ。

官邸に入ってくる時はノシノシって歩く人……そういえばこの人が総理だったなぁ……


どうも5世紀振りですね……直接会ったの今日が初めてだけど。


そして一緒にボルサリーノが似合いそうな、マフィアの幹部みたいな人もいる。副総理だけど……

この人は何で来たんだろうか?私の事を凄い見てくる。


マフィアの幹部さんは、私に話しかけたいみたいだけど……最初に総理が話すまでは遠慮して黙っているようだ。

2人共作業着の上着を着ている。こういうのなんか意味あるのかなって個人的には思う……まぁいいや。


「日本国内閣総理大臣の岸〇です。この度は……えー」


秘書っぽい人に耳打ちされて、総理が自己紹介をしようとしたけど……どう続けたらいいか困っているみたい。


「リンドと言います……すいません、お騒がせしてしまい……大変申し訳ございません」


今回のコレは、明らかにこっちの所為。

いきなり領空に現れたら、みんな困る……誰だって困る。


政府の指示に従うつもりだし、学生達だけでも家に返してあげられたら出ていってもいい。

まずは話をする所からだけど。


「なぁアンタ……アンタは異世界から来たって事でいいのかい?」


困った総理を助けるためか、あるいは我慢が出来なくなったのか……マフィア幹部……副総理が話しかけてきた。


私は副総理の方を見て頷く。


「そうか……そうか!……いやぁ、空に浮かぶ島なんてのを見ちまったから……ちょっと期待してたんだよな」


副総理は嬉しそうに何度も頷く。

こういうの……好きそうだものな。


「んで、何でアンタは日本に来たんだ?……魔法の実験とか、追放とか……そういうアレか?」

「いえいえ……実はですね……」


何故か副総理が質問してきて……まぁ……正直どちらでもいいので、学生達の事を話す。


「アレ……やっぱり異世界転移だったのか……」

「しかも強制です」

「ちょっと待った!……それは拉致って事じゃないか!」


副総理との話の途中で、総理が入ってくる。

そうなんだよなぁ……誘拐なんだよ……ふざけた真似をする……実行した国のトップはすげ替えたし……もう大丈夫……だと思いたい。


で、とっとと家に帰してあげたいけど……大騒ぎされるとめんどくさい。

それにチートと言うか……ちょっとだけ普通の高校生より、いろいろ能力が上がっている。


彼らは例の国に量産型勇者として、強引な強化付与魔法をかけられている。

徐々に魔法の効果は薄れていくハズだけど、向こうで魔物相手に鍛えられた筋力・反射神経などは魔法とは関係ないので、最終的にはベスト状態の吉〇沙保里と善戦してしまうくらいにはなる。


勝てないけど。


魔法使いなども『回路』が開いてしまっているので、放置しておくと変な育ち方をしてしまう可能性がある。

こちらは暴走……滅多にないけど……してしまえば、少々大事になる。


あるいは『本当に超常現象が起こせる』、怪しい宗教の教祖とかになるかもしれない。


一応半年開けてこっちに来てるから……とは言っても、魔素たっぷりの異世界にいたからそれをモリモリ吸収してたらあんまり弱体化はしていない……だろうなぁ……


拉致をした国は『わからせた』という事と、学生達のチート?の件を話すと……副総理は顔をしかめた。

総理はチート?に関してはよくわかっていないようだ。


「こりゃぁ……〇田さん……困ったことになった」

「と……言うと?」

「オリンピック選手級の学生が大量発生する」

「それは……」

「……校舎の一部ごと消えた学生達が、帰ってきたらスーパーマンになってましたとかとんでもねえだろ?」


副総理の言葉に理解が追いついたのか、総理も顔をしかめ出す……いや私のせいじゃないんで……

とは言え……きっかけはともかく、彼等も与えられた力を自分のモノにする為の努力はしているので……それチートだから取り上げますね!……ってのもなんか違う気がするんだよね……


……実際心配なのは、本人達より……凄い力を目の当たりにした周囲なんだよね。

『異物』として認識される事もそうだけど、力をいいように利用しようとする大人なんかもいそうだし……


『善意で』、平和利用しようとか言ってくるのも要注意だ。

大体そういう事言う人は、声がでかいクセに最後まで責任を取らない。自分じゃない『誰かが』やるモノだと思ってるからなぁ。


まぁ最悪、全部私が悪い事にしても良いけどね。

とりあえず……精霊達を不可視状態で学生達の周りに飛ばしておけば、大丈夫な気はする。


周りが悪用しない様に……彼等が暴走しない様に。……今の所他に良い手が浮かばないね。

『島』が注目されている内に、そっと返して……それをおかしいと思わせない様に……もや〜っと、もや〜っと……精霊達で意識を逸らして……うーん、仕方ないかなぁ……


洗脳っぽいからあんまりやりたくないな……まぁやるけど。

やりました……って言うと学生達が隔離や拘束されたり……って事もあるかもなので、黙ってやる。


気は進まないけどね〜







ーーーーーーーーーーーーーーー







結局……『異世界から別の世界がある事を証明する実験の為に来訪した』私が、移転先の国の代表に挨拶をする為に対策本部へやってきた事にする。


友好の為……と言いたい所だけど、帰れると決まっている訳では無い事に気付いてしまったので……友好とか言っても国同士の関係にできるかは分からないから無理やりこういう事にした。


学生達の為……という事で総理と副総理には納得してもらった。

と言うか……ちょちょっと……アレした。……アレ……洗脳っぽい……アレ。


リンド様の命令のままに〜……とかじゃないよ……『その方がいい』とか思うくらいだよ。

なんかそういうシーンを想像して、ちょっぴりイケナイ気分が湧いたのは……まぁナイショ♡


ともかく……政府から事の顛末……と言うか……事実の(ちょっとウソ混じってるけど)発表をするので、その時に私からもご挨拶させて貰う事にする。


学生達から目を逸らすのにも、私がバーンと目立つた方が手間が少ないし……

今までの行動が結構裏目に出てるのが……まぁ……ちょっと……ちょっとだけ……不安と言えば不安だけど……


大丈夫大丈夫!イケる!イケる!…………多分!

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