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エルフ、子ね……精霊を喚ぶ

「落ち着きましたか?」

「は、はい……あの……すいませんでした……」


しょんぼりする太田さんを前に、私は頷きながら冷蔵庫から出したペットボトルを手渡した。

まぁ……慌てて来客の準備をしようとして急いでいる時に相手が来てしまって、しかもコスプレ済み……かと思ったら本物のエルフ……まぁ……驚くよね。


色んな物に埋もれていた応接セットのテーブルとソファを周りの物を片付けて……いや、どけて……寄せて……なんとか3人が座るスペースを確保する。


武光がスペースが無いなら俺の膝の上に座れとか言ってきたけど、HAHAHA……言いよるわ。

同い年の男の膝に、座れる訳無かろう。


しかしそこら中にコンビニの袋があって、消費期限切れのサンドイッチとかたくさんあった。

この人買ってるのに食べてないって事かな……まぁ、その袋使って過呼吸の対応したから無駄には……いや、無駄だらけだ……


とりあえず期限切れの食べ物は山にしておいて、余裕のあった飲み物とかは冷蔵庫に入れて置いた。

消費期限順に並べて置いたから前から飲んで欲しい。


勿体ない……向こうの世界なら……普通に食べる人いるな……コレ……まぁ……それはともかく……私は太田さんを見る。


よくよく見れば確かに画像の人……毛玉ジャージだけど。

画像との落差激しいな……ジャージを突き上げる膨らみで、スタイルがいいのはわかるけど。


「あ、あの……それ……その耳……本物……なんですよね?」

「ええ、触ってみますか?」

「どれどれ」

「いや、武光……お前じゃない」


くにくにくにくに……


「わ……本物……だぁ……本物のエルフっ……かヒュっ……」

「落ち着いて」

「ひゅはっ……す〜は〜、す〜は〜……だ、大丈夫……ですっ」

「うゎ……不安」


太田さんは、エルフに会った事が衝撃だったのか……あるいは元々動揺しやすい人なのか……こっちな気がする……目が合えば積み上げられた物を崩し、言葉を交わせば挙動不審……触れれば過呼吸……


「話が進まないな……心を穏やかに魔法的な何かは無いのか?」

「はひっ!……しゅいましぇんっ!」

「……ん……あぁ……あるな……んじゃ、喚ぶか」

「喚ぶ?」


私はテーブル……さっきまで物に埋もれていた……の上に指をつけて、クルリと20cmくらいの円を描く。

指の通った跡は淡く光って、簡易な召喚陣になった。


「え……え?……はわわわっ」


太田さんがソレを見て、慌て出す……落ち着かせる為の行動で動揺させる……なんだろうね……まぁ……もう少し待ってね……大丈夫だから……


「にゃ〜♡」

「にゃっ?」

「にゃあん♡」

「3人いるからコレでいいか……」


召喚陣から出てきたのは、3匹……匹でいいのかな?……あ〜……3体?の精霊……

白い色は癒しを司っていて、眺めたり撫でたり吸ったりすると精神が穏やかになる効果がある。


精霊はにゃ〜にゃ〜鳴きながら、ポアポアの毛糸玉の様に転がったり……じゃれあったりしている。

見ているだけで癒される……さすが癒しの精霊……効果はばつぐんだ!


「子猫?」

「癒しの精霊だよ?」

「子猫だよな?」

「精霊だよ?」


その証拠に……ほら……


「にゃ〜?」


癒しの精霊がふわふわと浮かび上がって、太田さんの顔の前に行く。

そして……さあどうぞ!と言わんばかりにお腹を見せる様に横たわる……空中で。


「ああああああああぁぁぁ〜、コレはぁ〜……はふっ……はぁぁぁ♡……すはーっ♡すはーっ♡」


太田さんは、精霊のお腹に引き寄せられる様に顔を付けて……深く呼吸を始めた。精霊吸い……いいよね!


「おお……みるみる落ち着いてきてるな……猫吸い……すごいな……」

「これ武光さんや、精霊吸いと言いなさい」

「どう見ても子猫……」

「精霊!」

「……あぁ……はい……精霊」







ーーーーーーーーーーーーーーー







すっかり落ち着いた太田さんと話をする。

膝の上には丸くなって寝ている子ね……癒しの精霊……私と武光の膝の上にも1匹ずつ……1体ずつ丸くなっている……を、それぞれ撫でながら。


「それで……えっと……私の作った服を?」

「ええ、この世界に来た時に服がちょっと……」

「裸だったしな……裸……綺麗で……エロかった」

「忘れろよ……」

「人間出来る事と、出来ない事があるんだっ!」

「…………」


なんだそれ……


「それで……その……なぜ……私の服を?」

「……ええと……そう……向こうの世界で着ていた服と、近いイメージだったので……ひと目で気に入りました」


ごめん、着ていたのは嘘……あっちではサンバ衣装だったし……気に入ったのは本当だけど。


「ふぁぁ……異世界のエルフさんに気に入って貰えるなんて……!……すはーっ♡すはーっ♡」

「にゃ〜♡」


癒しの精霊大活躍。


「それで……服ですけど……そのままだと、サイズが……」

「ぅ……そう……ですね……」


太田さんに言われて、私は自分と太田さんを見比べる。

身長には大きな差が無いんだけど……一部……ちょっと……違う所が……


「太田さんの衣装をそのまま着るには、胸のサイズが大分違うな」

「……む」

「はわわわっ!……」


武光の言葉に私は眉を顰める。

い、いや……私のだって……小さくは……無いんだよ?そこそこあるんだよ?……エルフ基準なら巨乳なんだよ?

やめろ!……そんな目で見るな……やめて……慈母の様な目で見るな!






ーーーーーーーーーーーーーーー






「とりあえず……コレを着てみてください」


太田さんに……ドレス?を渡された。

時間が無い事は説明したので、現物のサイズを合わせてくれるそうだ。


試着用のスペースとして区切られた場所で、とりあえず着てみる事にする。

あ〜、コレ……サイズの確認もあるし、魔石のサンバ衣装着てたらダメだよねえ……仕方ない……脱ぐ。


太田さんのドレス?は、思った通り胸がブカブカ……お腹周りも余裕があるね。

ストンと下に落ちたりは無いけど、『身体に合ってない』感じは……かなりある。


コチラから無理にお願いしたので、なんと言うか妙な申し訳なさがある。

私は『ペロン』と剥がれてしまいそうな胸元を指先でつまんで、物陰からもそもそと出る。


スースーする。


ドレス?と身体の間には隙間があるし、それに……その……下……何も着てないし……

うう……恥ずかしい……サンバ衣装に比べたら……かなりまともな格好なのに……落ち着かないぞ……

ガッツリスリットとか入ってるから……ちょっと……見えちゃってない?……大丈夫?


「あぁ……やっぱり……結構サイズが……」


さっきまでの『アワアワ』な人とは別人の様にキリッとした太田さんが、私をチェックし始める。

胸元をおさえていた手も下ろされて、布地が身体から離れていく。


「………………」


太田さんに負けない程の真剣な顔で、武光も私の事を見ている。

うむ……巨大な飛行物体……『島』が領空侵犯したという……国家の一大事だものな……割と私のせいだけど……


昔は同じくらいの身長だったけど、今じゃ見下ろされてる……


「おぉぅ……ピンク色の……見え……」


すごい小さい声で何かを言っている……良く聞こえないけど……


「ではサイズ直しをしてしまいましょう……あぁ……1から作りたい……」


太田さんがキリッとしつつ、残念そうに言う。


「すいません……ええと……改めてお願いしたいと思うので……今回はすいません……」

「えっ?!……注文いただけるんですか?!……ぜひぜひぜひぜひぜひぜひぜひぜひぜひっ!」

「ぁ……でも……お願いするのに、こちらの通貨が……」

「タダでっ!!……お金いらないんで……いらないんでぇぇっ!!作らせて下さああああああああぁぁぁっ!」

「うえっ?!……それは……悪いですよ……」

「作ろう、優也……代金は俺が払う……払うから……」


何故か2人から熱心に言われてしまったので、よく分からないけど……「よろしくお願いします」って言った……









ーーーーーーーーーーーーーーー







一旦試着スペースに追いやられた武光は不満そうだったけど、太田さんに耳元で何か言われて挙動不審になりながら言う通りにしていた。


精霊達を貸すから癒されろ。


試着スペースの中から聞こえるにゃ〜にゃ〜という声を聞きながら、太田さんは作業に入る。

服の余る部分をつまんで引っ張ったりしながら、考え込んでいる。


「不本意ですが、とにかく短時間それっぽく誤魔化す事に重点を置いて……ここを留めて……別の布で隠して……あとは……」


身体のあちこちを見ていた太田さんの視線が、私の胸を見る。

しばらく無言で胸を見ていた太田さんが、手を伸ばして『ペロン』と……かろうじて隠れていた……胸元の布を……


太田さんに比べたら控え目な私の胸が……『ふるん』って揺れる。


「ひゃあああっ!」

「どうした優也っ!」

「お前は来るなっ!」


剥かれて思わず出た声に、武光が試着スペースから飛び出しかけたのを止めて……いや、顔出てた。

すかさず癒しの精霊が武光の視線を塞いでいたので、ギリギリ見られなかった……精霊グッジョブ♡


「動かないで」

「ぇ……ほわ……んんん……はい……」


太田さんは壁際の棚から何かを手に取って、中身を取り出すと私に見せてきた。

プルプルする肌色の……コレはあの……ぬーぶらと言うやつでは!


「縫ってサイズを詰めるより、コレを使いましょう」


太田さんはそう言いながら私の胸にペタリとソレを貼り付けて、胸を真ん中に引っ張って……パチリと左右を接続した。


「おおおお……谷間が……」

「これで……多分……大丈夫だと思います」


ドレスの胸元を戻すと、ぴったり……とまでは言わないけど……まあまあそれっぽい感じになった。

とりあえずコレでお腹周りだけなんとかしてもらう事にして、試着スペースの武光と交代してドレスを脱ぐ。


ヌーブラはそのままにして、ここに来るまで着ていたスウェットを頭から被る。

またすぐドレスを着るし、サンバ衣装は着ないでおこう。


裸スウェット(ヌーブラ着用)だけど……短時間だし……大丈夫大丈夫。

太田さんにドレスを手渡すと、作業スペースにものすごい勢いで去っていってしまった。


「………………」

「………………」


武光と2人、ソファに向かい合わせで座って……冷蔵庫中にあったペットボトルのお茶を(勝手に)飲む。

……武光……なぜ私をじっと見てるんだ?……ん?……ふふん……巨乳と化したこの胸が気になるのか?


おっぱい好きか〜武光ぅ〜


「……はいてない……誘ってるのか?……喰って良いって事か?……」


またなんかえらい小さい声で何か言っているが、やはり聞こえない。

コイツこんなに独り言言うヤツだったかな……?


ちょっと揺らして見せてやるか。

軽く脚を踏ん張るようにして、胸を揺ら……思ったほど揺れないな……固定されてるからかな……


「脚っ……開い……っ!」


武光が、ガッと目を見開いて……少し前のめりになる。

HAHAHA……この胸は増量したモノだからな……おっぱい星人には物足りないかと思ったけど、反応良いな……


「優也っ……」


武光が勢いをつけて立ち上がる。

ヤバ……からかい過ぎたかな……怒ってる?


とりあえず謝っておくかと口を開きかけたところで、太田さんが戻ってくる。……速くね?


「完成です……」


さすが……すごいな……私は太田さんからドレスを受け取った。


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