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エルフ、服をめくる

「リンド〜、どこ〜?なんか周りに飛んでるよ〜」


『島』から周囲に向かって『声』がする。

周囲の航空機……官民色々な所属の機体が飛んでいる……お互いに何かを言っているのは分かっているだろうが、どちらも何を言っているのかを分かっていない。


「くそっ……今頃政府関係がパニック起こしてるぞ……」


そうだよね……どこの言語か……調べても分からなくて……きっと焦ってるよね。


「いやそうじゃ……それもあるが……あんな飛行物体ありえない」


ん?……あぁ、そうか……向こうじゃ島は時々飛んでたし、そういうモノだって思ってたから……違和感忘れてた。


うっかりしてた……♡てへへ♡


「あまりかわいい顔をするな……我慢出来なくなる」

「なにそれ怖い」


殴られたりするんだろうか……怒ったら怖いんだよな、コイツ


「とりあえず……親父に連絡を取る……説明が大変だ……」

「あの島は、異世界から来ました〜って……いやごめんなさい睨まないで……」


事実なのに〜


「お前も説明に来い」

「…………まぁ……その為に来たんだし……行くけど」


こんな事を防ぐ為の前乗りだったんだけどなぁ……おかげで武光に裸見られるし……抱き着かれるし……武光……身体大きかったな……前はこんなに体格差無かったものな……


アラ?なんかドキドキしてきた。

……?……まぁ、いいか……深く考えたらダメなヤツだよコレ……うん……多分。


「よし、連絡取れたから親父に会いに行くぞ」

「早いな」

「当たり前だ……緊急事態だぞ?」


そうね……すんません……





ーーーーーーーーーーーーーーー





武光の運転する車の助手席……シートベルトとか何百年ぶりかな……に座る。

装着するのにちょっと手間取った……武光……手伝ってくれるのはありがたいけど……近い近い……顔近い。


「…………」

「………………」


静かな車内……いや、なんか喋って武光……

ぁ……考えてみたら……服装……いいのかな……このカッコで……?エロない?真面目な話する格好じゃ無くない?

いやいや……向こうじゃずっとコレだったし!


『母さん……あの……いや……なんでもないよ】


息子の何か言いたげだった顔が、頭に浮かぶ。

あぁ……きっと……そんなエロい格好で歩き回るとか……どれだけ非常識なんだ……とか思われてたよ……


顔赤かったし、多分スゴい怒ってたよ……


魔石いっぱい身に着けられる私スゴい!とか思っててゴメン……


「優也……」

「ふぇ?!……エエエ……エロくないよっ?!」

「?……いや、帰ってきてくれて……ありがとうと言いたかった……あとお前エロいから」

「エロくないよ!……エロく……無いよ……無いよね?……あと……ただいま」





ーーーーーーーーーーーーーーー






車が止まったのは、誰でも知ってる与党の……建物。

……政治関係で何かあると、ニュースで映されるあそこだ。


いきなりこんなトコなのか〜……


不安になって武光に聞くと……


「いきなり対策本部に行くよりマシだろう。取り囲まれるぞ?」


と言われた。……まぁ……確かに?……そう?……なのかな?


「多分ここでは、少人数と会って話をするだけになる……全体に情報を公開したくても、何を話したら良いかすら分からないだろうしな」

「重ねがさねすまん……」

「いいさ……お前の為になるならな」


ありがとう……でも武光……頭撫でるのはなんでだ?……ん……気持ち……いい……いや、お前とは同い年……エルフとしてなら遥かに年上……んんっ……ふぁ……あぁぁ♡


「……武光」


突然低くて……でも染み込んでくる様な、温かみのある声がしてくる。

閉じかけていた眼を開くと、武光の家で何度か会った……テレビで何度も見る整った顔の男性がいた。


うわっ!うわわわっ……だらしない顔見られちゃった……あぁぁ……恥ずかしいぃ……


「初めまして……お嬢さん……今回の件について何か情報が……あぁ……その耳……なるほど」


武光のお父さん……御舞(おまい)議員が一瞬で私の事を把握したみたいで、頷いている。


速……


そして……武光の方を見て……


「落ち込んでいたようだったが……ふむ……優也君……転生か」


いやいやいやいやいやいや……あなた達親子の頭の中どうなってるの?

ほぼノーヒントで、どんどん話が進んでるんですけど!……そう言えばネットで……「御舞議員が影の総裁」とかって言われてたけど……本当にそうだったのか?


「政治家というのは人と会う仕事だからね。しかも、ずっと武光の隣にいてくれていた数少ない友人の事だ……わからん訳が無い」

「はい!お父さん……僕の為に優也が帰ってきてくれました!」

「え?!」

「ははは!……あの優也君が、こんなに素敵なお嬢さんになってくれるとはね!」

「え?!……はっ?!」

「そうですねお父さん!」

「いつまでも女性との噂ひとつ無くて心配しておったが……これで安心だな!」

「ははは!任せてください!お父さん!」

「ははは!」


ちょっと待て……何を言ってるんだ?……2人とも何を言ってるんだ??






ーーーーーーーーーーーーーーー







親子2人掛りのよく分からない攻撃で疲れ果てた私は、ぐったりとしていた。

『島』についての説明をする為にここに来たはずなのに……もう帰りたい……


「さて、いい加減私も対策本部の方に戻らなくてはいけなくてね。めでたい話は日を改めてするとしよう」

「……めでたい話……」

「そうですね……あの飛行物体ですが、優也の関係なのだそうです」

「ふむ……念の為に確認するが、アレは異世界からの侵略なのかね?」

「ンなワケ無いでしょう……コレを見てください」


議員にタブレットを差し出す。武光にも見せた、高校生行方不明事件の記事だ。


「これは……まさかそちらの世界に?」

「ええ……あの『島』に居るので帰ってきた事になりますが……」


私は自分だけ前もって来ることで、対応の用意をお願いするつもりだった事を話した。





ーーーーーーーーーーーーーーー






「半年開けて来るはずが、ほぼ同時に着いてしまったと……」

「ええ……あとから来るはずだったアレは……何故か今あそこにいます」


……結構大変だったんだけどな……個人での転移……

いやもう……完全に無駄にされちゃったよなぁ……武光に裸見られちゃったし……まぁ『服』も裸と変わらないって自覚させられちゃったんだけど……


「こうなると……優先順位すら分からないな……」

「ううむ……優也君はあの飛行物体に連絡は取れないのかね?」

「あー、そうですね……出来ると思います」

「可能であれば、一旦領空の外にでて貰えば助かるんだが……」


まぁ……そうだな……確かに公海上に移動すれば多少は……あぁ……最初から領空侵犯して無い所に転移してくれてたらなぁ……今更だけど……


私は2人に背中を向けて、着ていたスウェットをめくりあげる。

身に着けた魔石のうち、通信用に加工した物に貯められた魔力の量を確認する。


……ん……これだけ入ってれば大丈夫……かな?


「…………」


妙な気配を感じて振り返ると、御舞親子が私の事を見ていた。


「?」

「優也……見えてる」

「優也君……大胆だね……それは君の趣味?……まさか武光の?」


2人の視線の先……私の身体を見下ろすと……キラキラ光る石に飾り立てられた……肌。

身体のごく一部だけ……あの……先端とか……が隠され……隠れてる?むしろ卑猥さが強調されてない?


2つの……女性である事を主張する塊が……見下ろした時の頭の動きで……ふるん……って……


「ひあああああああああぁぁぁっ!」


こちらに帰ってきて自覚させられた……『恥ずかしい格好』、こんなのが許されるのはサンバ会場くらいだよ……サンバ会場なら割と大人しめだよ……よく分かってないけど……多分……間違っても、立派な机のある執務室には相応しい衣装じゃない……うぅ……


向こうで……この格好で……得意げに歩き回ってた過去が……頭の中に……ぐるぐるって……黒歴史ぃ……


「くぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁっ!」


黒歴史に精神を汚染されて、危うく闇に落ちそうになりながら……なんとか踏みとどまった。

私は引きちぎるくらいの勢いで、スウェットを下ろして……ギッ……と2人を睨む。


「いや、優也……そんな目で見られても」

「そうだよ優也君……いきなり服をめくって見せられて、目をそらす暇も無かったんだ」


ぐぬぬ……


「しかし……優也君……中々の安産型」

「……お父さん……」

「うぅ……」








ーーーーーーーーーーーーーーー







気を取り直して……取り直しきれてないけど……改めて『島』に連絡をする為の準備をする。

準備と言っても……魔力が魔石に貯まっていれば、それに触れるだけで回線の様なモノが繋がるんだけど……


場所が胸の谷間。


サンバ衣装の時には、手を当てるのにちょうどいい位置だと思ったからそこにしたけど……今みたいに上に服を着てるとちょっとやりにくい。


胸元を触らなければならない事を伝えてるのに……分かってないのか、2人はこっちを見てる。


いや、見られてなければガッとめくって連絡すればいいんだけど……なんか2人とも私の事をじっと見てる。

スウェットの裾を触っては離し、触っては離しで……いやあっち向けよ……


「……あんま見んなよぉ……要さんに言うぞ……」

「ふぐぅ……」


落ち着かない気持ちで……小さい声で……言うと……武光が顔を押さえながら変な声を出した。

ちなみに要さんと言うのは御舞議員の奥さんで、武光のお母さんだ。


「……た、武光?!」

「ぐうう……上目遣い……可愛すぎる……」

「え?……何?……よく聞こえない」

「優也君、その辺で勘弁してやって欲しい……そして要には言わないで欲しい」


小さい声で何か言いながら膝をつく武光に驚く私に、真顔で声をかけてくる御舞議員。

そして、御舞議員は部屋の隅の……パーテーションで区切られた一角を指した。


「あそこで連絡するといい」


はぁ……服装の事ホントになんとかしなくちゃな……このまま対策本部とやらの大勢の人の前に出るとか、羞恥で死ぬ……きっと悶絶死する。


ともかく、パーテーションの陰……応接セットがある場所でスウェットをめくって石に触れた。

すっと『島』にいる相手に『繋がる』感覚……


「聞こえるかな?『カイ』ようこそ『こちらの世界』へ……お疲れ様」

武光のお父さんとしたらコイツ男としか仲良くしてねぇ!

女の子の1人もつれてこいや!……といつも思っていました。


そこで武光君が女の子を連れて自分に会いに来ます。


(来たぞ女の子だ!……エルフ?……空のアレ関係かっ!

ええい……構うものか!……むしろ異世界との架け橋に……は?優也君?……ぬう……いや……アリなのか?

武光も優也君なら……ってメロメロじゃないか!……)


などと思いながら、出来る政治家と理解ある父親の顔で対応していました。



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