エルフ、コンビニへ行く
「今日は暖かいな」
「寒くなったり、暖かくなったり調子が狂うが……」
急にジャンクなモノが食べたくなって、武光とコンビニに向かって歩いている。
揚げ物とかスイーツとか……脂や砂糖たっぷりなモノを口にしたくなったのだ。
『島』にいたので、鏡を使った転移で移動してきた。
スーパーのトイレの全身が映る鏡から……武光がいるから男子トイレの鏡を使った。
先に武光に出てもらってから、私も移動する。
しかし……コンビニに行くのにスーパーからって、変な感じがする……コレが1番近かったんだけど……
今日の服装は、裾でお尻が隠れるくらいのオレンジ色のパーカー。下からは脚が出ている。
フードはかぶってないけど、耳は赤いニットキャップで隠している。
スニーカーに生足……♡私の服装を見た時、武光はなにか言いたげだった……
すれ違う男達がちらちらと視線を向けてくる……一番見てるのは隣を歩いている男だが。
男だった時はできないカッコだよねぇ……スネ毛ボーボーだったし……
ボーボーでもする人はするけどね……何度か見たことあったし……『俺』はしなかったけど。
「リンド……やっぱり脚出し過ぎじゃないか?」
「そぉ?……いやコレ下には履いてるんだよ?……む?」
ちょっとめくって武光に見せると……ホットパンツを履いていたはずの下半身は……肌色で……つるつる……
バッ……と裾を戻して周囲を見ると……目を逸らす周囲の男達……そして……私を凝視する……武光……
いやアレ?……あの時……出かけようとして、ベッドに着替え並べて……パーカーの袖に腕を通して……
ん〜?パーカーを着て……ん?……その後……ちょっと気になって目立たずに転移できる、店舗近くの場所をスマホで探して……あぁ……そのまま……出てきちゃったな……
普段、スースーする様な格好ばかりしてたから……気づかなかった……
いや武光……目が怖い……こんな所で興奮するな……むぅ……どっかで下を……せめてぱんつか何かを履く……
武光にガシリと肩を掴まれた……武光?
「このまま歩こう」
「ふぇ?!」
「リンドはすぐ油断して無防備な格好で歩き回るから、それじゃダメだってわからせないとね」
そう言う武光の顔……絶対私のタメじゃないだろう……
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歩くたびにパーカーの裾がめくれてしまいそうで落ち着かない……
さっきまでもっと大胆に歩いていたのに……下に何も着ていないのを自覚したら、歩幅すら控え目になってくる……
いや、だって……見えちゃうよ……
「うむ、リンドがお淑やかだ」
「こんな特殊なプレイみたいな事してるのに、お淑やかなわけないだろ……」
気の所為か、さっきまでより男性達が見てくる様な気がする……
片手が武光に掴まれて……手を繋がれて……防御に空いている方の手しか使えない……
歩く度に裾が持ち上がっていく様な気がして……
それを周りから見られている気がして、私が下に何も着ていない事を知られている気がして……
「武光ぅ……これから気を付けるからぁ……なんか履かせてよぅ……」
もじもじと、太ももを擦り合わせながらお願いする。
「お、リンド……コンビニ着いたよ」
私が動揺しているウチに、コンビニに着いてしまう。
……あぁ……トイレでぱんつ履かせてもらおう……
ちょっと重めのガラスの扉を押し開けて、店内に入った。
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「おお……」
久しぶりのコンビニはなんと言うか……『あなたの欲しい物いっぱいあるよ!!欲しくなくても見てると欲しくなっちゃうでしょ?ほらほら手に取ってレジに向かおうよ!!』という感じだった。
買おうかどうしようか……では無く、どれにしようか?……無意識にそう思っていた……
カゴを手に、ウキウキしながらそれほど広くない店内をウロウロする。
地球に帰って来て、カップラーメンは食べたけど……ああいう世間では食べ過ぎると身体に悪いとか言われている物を食べたくなった……だってCMで見たの美味しそうだったんだもん♡
スイーツ狙いだったけど……数百年ぶりのコンビニ……目移りするわぁ……
異世界でも色々再現してみたりしたけど……やっぱりさぁ……違うんだよねぇ……
選ぶ楽しさって言うか……そんなヤツ?
スイーツの棚を覗き込む様にして見ていたら……視線を感じた……
振り返ると……後ろで低い位置の棚の商品を並べていた店員が目をそらす。
万引きでも警戒されているんだろうか……と考えてから、パーカーの中の事を思い出す……中……見てたんだ……
思わずしゃがみ込むとお尻がすうっと涼しくなって……あっ!めくれっ……
慌てて裾を後ろに引っ張ったら……バランス……崩れ……
『あっ……』
ぺちゃ……ってお尻が直に冷たい床に触れて冷やされていく感覚……そして前も涼し……
……床にお尻をつけた時に……開いてしまった脚の間……太ももの奥に、店員の視線が向いていた……
「…………」
「…………」
そっとパーカーの裾を戻して、ペタリと……昔と違って骨格から変わっているからできる、女の子座りで大事な部分を店員の視線から隠す……
それでも店員の視線は私の太もも……パーカーを透視する様にその奥を見ようとしてくる……私はパッと立ち上がって……その時に乱れた裾や、床につけたままではいられなかった奥を見られた気がしたが……それを誤魔化す様に適当な棚からよく見もせずになにかを掴んで、カゴに放り込んでその場を離れる。
店員があとを着いてきている気がして、じっくり商品を選ぶ積もりだったのに……目につく物をいくつかカゴに入れて、別の商品を見ていた武光の所へ行く。
武光の腕に抱きつく様に捕まると、すっと気配が離れていく。
武光にどうした?という顔をされたので「見られてしまった」事を伝えると、誰が見たんだという目で周りを見ていた。
と言っても、そもそもこんな格好で外に出てしまったのは自分のせい……そのままでいる羽目になったのは武光に言われたからだけど……正直自分が男だった時に、同じ様な服装の女性がいたら見てしまうと思う……
とは言っても……見ていいよ!!……とはならないけど……まぁ、怒るのはなんか違う。
武光の腕をギュッと抱いて、武光の方を見る……武光の手には何も無い……カゴも持ってなかった……
「武光は、欲しいものは無いのか?」
「ここにあるぞ……」
頭を撫でられた……いや、そうじゃなくて……いや……その………………嬉しいけどさ……
それに……アレだよ……ソレはもう手に入ってる……から……
うん……武光がいいなら……店を出ようかな……ちょっと……パーカーの中見られちゃって……気まずいしな……
私は会計してくると言って、武光の腕を離してレジに向かう……ぁ……
レジにいたのは……さっき思い切り見られてしまった店員だった。
店員は一瞬だけニヤッとして……何事も無かったかのように商品のバーコードを読んでいく。
「……ぁ」
レジカウンターの上に置かれた箱……うす……0.01ミリ……ちゃんと見もしないでカゴに放り込んだから……
店員の目が……『コイツらこれからするんだな……』って……言ってる気がする……
違うんです……使わないです……するんですけど……使わないんです……
いやいや、そうじゃなくて……もういいから早く読んで……アレ?……サイフ……?
身体をパタパタとはたく……
いやいや……買い物に来たのに……サイフ持ってきてないよ……
慌てる私を見て店員がなにか察したのか、一度他の商品に隠れた……うす……をカウンターの目立つ所に出してくる。
お前ワザとだな?
「どうした」
武光が来てくれて、お金を払ってくれたので何とかなった。
その間……うす……は出しっぱなしだった……お前やっぱりワザとだろう?
買ったスイーツは、『島』へ帰って美味しくいただいた。
そして夜に寝室で美味しくいただかれた。……うす……は結局未使用だった。