怪談
夏なんで番外で怪談……風?
普段と大分毛色の違う話なので……不快に感じる様でしたら、そっと閉じて頂くようにお願いします。
ずっと……薄暗い路地裏に置き去りの……箱の中にうずくまっていた。
最近まで……いや、随分前だったかも……この箱の中でオカァサンに乳をもらって……暖かい身体に包まれていたけど……今は気が付くとオカァサンはいなくて……この暗い場所に自分だけがいた。
お腹スイタ……オカァサン……
二ー二ーとか細い声でオカァサンを呼んでも、オカァサンは来てくれない……
やがて力尽きて……違うかもしれない……力が尽きたのはオカァサンがいる時だったかな?……よく分からない……
ここから動くことが出来ない……何故かそう感じていつまでもここにいる。
そして応えて貰えない、か細い鳴き声をあげ続けていた……
ふわふわの毛皮に包まれていたはずの身体は、今は白いカサカサした棒の様な物に変わってしまった……
身体は動かず、動かない口から鳴き声だけが出ている。
ガサリ
箱に誰か……何かが触れた。
誰かが来てくれる事を望んでいたけど、それでもその音に強く警戒してしまう。
「あぁ……いたね……」
「リンド……『これ』が呼んでいたのか?」
これは多分『ニンゲン』の声。
何を言っているのかまるでワカンナイケド、自分に対して悪意を持っているわけでは無いみたい……
オカァサンが、自分を呼んでいた時と同じ優しい声と……包み込む様な低く響く声。
優しい声の方の『ニンゲン』にそっと持ち上げられる。
低い声の『ニンゲン』が手渡した、柔らかい布に包まれると……その上から触れているなにかの暖かさが伝わってくる。
……あったかい……オカァサン……
「……ん、寂しかったね……もう苦しまなくていいよ……」
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『ニンゲン』に連れてこられた場所は、大きな大きな大きな大きな大きな大きな大きな樹が生えている所だった。
『ニンゲン』が何かをつぶやくと、身体がふわりと軽くなっていく。
白い棒の様になっていた身体は、ピカピカする小さななにかに包まれていって……消える?……
でも……消えたと思った身体は、ふわふわの身体に戻っていた……
ふわふわの身体は、どんどん軽くなって……浮かんでいく……
あれほど苦しかった空腹も……もう感じない……
「また……生まれておいで……」
『ニンゲン』が何かを言っている。
オカァサンみたいな……優しい目……あぁ……あったかい……なぁ……
ふわりと周りが……よくしっている匂い……オカァサン……オカァサンの……あったかい……
あぁ……オカァサン……きてくれた……