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エルフ、『島』へ行く

転生したと知られてから、私は御舞家の人達……特に要さんと長谷川さんに武光から引き離されている。

パーカーの下に何も着ていない事を、武光のせいだと疑われたからだ。……その……調教的な……


もちろんそうでは無い事を伝えたんだけど、この状態で武光とあちこち出歩いていたのは事実で……携帯ショップとかもこのまま行ったので……今ひとつ信じて貰えない。


……主に武光が。


そして年頃の女の子……数百歳だけど……が身近にいると始まる……着せ替えショー。

長谷川さんと要さんがはしゃぎまくって、下着からコーディネートされてしまった。


まぁ……下着はどうにかしたかったので、良かったんだけど。

明らかに高級そうな下着は……ちょっと気が引けるけど……ニコニコ顔の2人には逆らえなかった。


要さんは嬉しそうに「娘が欲しかった」とか、「息子はつまらない」とか言い出して……「娘になりなさい」、「武光と結婚するといい」とかも、言うようになった。


それに対して、モゴモゴ口の中で言っていたら……その……2人の目が……キュピーン!……って……いやその……2人の追求が……えぇ……白状させられました。


さっきまでのニコニコ顔が……今はニヤニヤ顔になって……ちょっと……あんまり見ないで……恥ずかしいから……

迫って来て……全部……すまぬ武光……膝の上に乗せられたのも……頭撫でられたのも……恥ずかしいセリフ交わしちゃったのも……全部……言わされた……


案内係の人に邪魔されなかったら……ええと……まぁ……その……最後まで……行っちゃいそうだった事も……


「優也くん……いえ、リンドちゃん……その案内係の人の名前……わかるかしら?……オハナシ……しないと……2人の邪魔するとか……圧力かける事も考えた方が……」


……えぇ……やめて……








ーーーーーーーーーーーーーーー







『島』と御舞家を繋ぐ『扉』を用意するために、御舞邸のエントランス……生前住んでいたマンションより広い……にある、でっっっっかい鏡……これが出入口なら車だって通れそうなくらいのサイズの鏡の前に立つ。


まぁ……世界を越えようとする訳じゃなし、大した手間でも無いから直ぐにやろう。

本当はもっと小さい鏡で良かったんだけど……要さんのリクエストでこのデカい鏡を使うことになった。


後ろには要さんと長谷川さんが私の近くに来る事を許した武光と……御舞家の人達がいる。

キラキラした目の要さんは向こうに行く気満々……まぁ、私としては来てもらっても全然構わないんだけど……


御舞議員とかに、許可とか取らなくて良いのかな……

日本政府に黙って行き来して、怒られたりしないんだろうか……まぁ……いいか。


黙ってればわからない……多分。


気合いを入れて磨かれている鏡面に、手の跡がついたら申し訳ない……と思いながら右手を当てて、小さく呪文を唱える。


硬質なガラスでできているハズの鏡の一部が四角く切り取られた様に波立つと……鏡の向こうの景色が、今まで映っていた御舞邸のエントランスから、こことは違う場所に変わる。


あ、やっぱりこんなサイズ必要無かったな……まぁ、いいか……


『出口』と同じサイズだけ変化した鏡を見ながら、そう思う。


「……成功……そして念の為固定……と」


後ろから、ため息の様な微かな声が聞こえてくる。

ここの人達は魔法を見るのは初めてだろうし、そんな反応にもなるだろうね。


……それにしても、やっぱりラクに繋げられる。

同じ世界同士だと使う魔力もソコソコだし……自分の体内魔力だけでいけた……時間もかからない。


「リンドちゃん……これで空を飛んでるアレに行ける様になったの?」

「ええそうです、要さん」


後ろからすすす……と近づいてきた要さんに答えながら、『俺』の横たわるストレッチャーの横に立つ。

亜空間収納で『俺』を収納してから、鏡に……『扉』に向かって歩く。


「1度私が先に行って、問題なければ皆さんもいらして下さい」

「わかったわ」


普通なら鏡にぶつかる所を、若干の抵抗……トロミのある入浴剤の入った湯船に身体を沈める程度の感覚を感じながら歩いていく。


ぬるり……と『扉』を抜けると、鏡がずらりと並んだ部屋に出る。

転移用に用意してある専用の部屋だ。各地に……まぁ向こう側のだけど……繋がっていて、いちいち呪文を唱えなくてもいいようにしてある。


世界を越えた時に、使えなくなってるだろうけどね〜

そう思って『扉』のひとつ……向こう側の王都……私用の離宮に繋がるそれに触れてみる。


とぷん……


「え?!……繋がってる?」


跳ね返されると思っていた『扉』に手が沈んで、1度手を戻した私は……今度はそっと頭を前に出す。

……離宮だ……どういう事?……1回繋がったら解除しない限りそのままって事かな……?


……いや、今考えても多分わからない……御舞家の人達が変な所へ行ってしまわないよう……向こう側から人が来てしまわない様に……ロックをしておこう。


部屋の壁を埋め尽くす『扉』……結構数のある全ての鏡を、私の許可なく使えない様にしておく。

やばいやばい……異世界とラクに行き来出来るって知ったら……目がギラギラしだしそうな大臣の顔を思い浮かべて眉をしかめる……あの小僧……絶対余計な事する。


危険があるかもって言ったら……ビビって、全てあなたにおまかせしますって言うヤツなのにな……

学生……勇者達の件では少しだけ手を借りたけど……ほっとくと、ウチの国にも被害出ちゃうからね。


……ん……思ったより時間かかってるな……皆さん呼ばないと……


『扉』から御舞邸側に顔を出すと……ずっと待っていたのか、皆さんこちらを凝視していた。

……普段皆さんが鏡と認識している所から、顔が出ているせいかも知らないけど……


「お待たせしました……いらしてください」


要さんを先頭に……ぞろぞろと『扉』を通って、こちら側へやってくる。

未知の事態のハズなのに、警戒せずにすんなりこっちに来るのは……私の事を信頼してくれている……という事だろうか?


「少し時間がかかったな……何かあったのか?」


最後にこちらへ来た武光が、私の横に立ってこっそり聞いてくる。


「……ん……ちょっと……後で話す」

「わかった……困ったらいつでも言ってくれ……お前は俺が守るから」

「……っ!……うん……お願い」


武光の一言で、胸がザワザワする……浮かれそうになって……顔がニヤケそうになって……身体を武光にピタリとつけて顔が武光から見えない様にする。


「ハイハイハイ……離れて、離れて」


そうしていたら、要さんと長谷川さんが私達の所に来て……武光から引き離されてしまった……

まだ、武光の調教疑惑は晴れていないのだろうか?……武光ぅ……


……武光になら……いいけど……首輪とか……つけられちゃったり……も……


「リンドちゃん?」

「ふあっ!」


モヤモヤと妄想してたら、要さん変な目で見られた……







ーーーーーーーーーーーーーーー







廊下を皆さんとゾロゾロ並んで歩く……私が先頭……武光は……1番後ろ……

私が先頭なのは仕方ない……私の『島』だから私が案内をするのは当然……でも……武光遠いのは……ちょっと……イヤ……


ニヤニヤ笑いで私のすぐ後ろを歩く、要さんと長谷川さんの事をちらちら見ながら……


「……ぁ……あのぅ……要さん……長谷川さん……その……もう……いいんじゃないですかねぇ……武光……」

「え?!ナニ〜?リンドちゃん?ヨクキコエナイ♡」

「……ぅ……も、もう……武光……離れさせなくて……いい……んじゃ……」

「え〜?!……リンドちゃん……武光に調教されちゃっていいのぉ?……服1枚で裸で歩かされちゃうよぉ?」

「調教っ……されてませんっ!」「調教してないぞっ!」


思わずあげてしまった、大きな声。

それに合わせる様に、武光も声を上げた。


驚いて目を丸くする要さんに、


「……武光にだったら……調教されてもいいし……」


言わなくてもいい事を言ってしまう。

途端にニヤニヤ笑いが深くなる2人に、武光は焦った様にこちらへ近づいて来る。


「おい優也……何言ってるんだ」

「へ〜♡」

「そうなんですか……いえ、愛は人それぞれですね……」

「あう……」






ーーーーーーーーーーーーーーー






恥をかいたおかげ?で、要さんと長谷川さんに許されて……武光が隣に来た。

来たら来たで、何喋っていいかわからないんだけどね……でも来てくれたのは……嬉しい……


「調教はしない」

「わかってるよ……当たり前だろ?」

「いやお前……さっき……」

「忘れて?」

「おう」


ナニを言い出すのか……

首を傾げながら、上目遣いで武光の事を見て……追求を阻止する。


「見た?長谷川さん……あの子女の武器しっかり使ってるわ」

「はい、効果抜群ですね!」


後ろなんか言ってる……

私の武器(コレ)は武光特効だから……他の人には効くかわからないから……


廊下の突き当たり……重要な場所のここは『扉』を使って侵入される可能性を考えて、あの部屋はここから一番遠くにしているのでぞろぞろ歩く事になった……からかわれる時間もその分長かった……


くくく……散々人をからかって……中にいる『モノ』を見て驚くがいいさ……


私がその廊下の突き当たり……巨大な扉……大きいが普通の扉……に近づくと、扉は誰も触れていないのに……ゆっくりと開き始めた。


「さぁどうぞ!『島』の中心へようこそ!」


部屋に入った御舞家の人達が見たのは……高い所から自分達を見下ろす一対の目。

何者にも傷つけられる事の無い、強固な鱗を持ち……吐く息は立ち塞がる全ての敵の命を消し去る。


世界最強の……世界最恐の……世界最凶の存在……ドラゴン……


『ゴルルルルルルルルルルルルルル……』


唸り声なのか、それともこの存在にとってはただの呼吸か……

それでもその音はビリビリと御舞家の人達の鼓膜をふるわせる。


ドラゴンは御舞家の人達を見ながら、ゆっくりと口を開く。


「こんにちはぁ♡僕とリンドのお家へようこそ♡異世界のお客様♡ゆっくりしていってね♡」


ふふふ……可愛い声だろう?

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