ラジオはなんでも答えてくれる、けど
「みなさん、こんばんは。今宵もミッドナイト・アンサーの時間がやってまいりました。この番組はリスナーの皆様の質問にパーソナリティの私ミスターエックスがお答えする番組です」
僕はラジオが大好きだ。
だって、ラジオはいろんなことを教えてくれる。
友達と喧嘩をしたとき、どうすればいいか。
嫌いなものは食べなきゃいけないのか。
勉強ってなんのためにしてるのか。
悩んだときはいつもラジオに頼るんだ。
「さてさて、さっそくお便りいってみよー。毎度おなじみ東京都のケンジ君から、今日もお悩みが来ているぞー」
この番組は僕のお便りを必ず読み上げてくれる。
なぜだかはわからないけれど、嬉しいのでいつも送ってしまう。
もしかして、他に送っている人がいないのかな?
「僕は最近人を殺しました。でも、死体をどうしていいかわからないので困っています。おすすめの隠し場所はありますか?」
うんうん、そうなんだ。
つい昨日、友達のユウト君がゲームを返してくれないからバットで殴っちゃったの。
誰にも言えない悩みだけど、ラジオさんなら答えてくれるはず。
「なるほどなるほどー。ケンジ君は人を殺してしまったんだね、それは大変だ。かくいう私も知り合いでそういう人は何人か見てきたので気持ちはわかるぞー」
ほら、普通の人なら驚く内容でも全然驚かない。
だからこの人が好きなんだ。
「でー、お悩みは隠し場所か。隠し場所は本当に悩むよなー。下手なところに隠したらすぐ見つかってしまう」
きっとラジオさんなら、すごい場所を教えてくれるはず。
僕はラジオに耳をくっつける。
「私が提案する最高の隠し場所は、君の胃の中だ。食べてしまえば見つかりっこないさ」
……え?
「味付けや調理方法はなんだっていい、君のお好みだ。骨は出汁に使うのがオススメだけど、それでも余るだろうから砕いて庭に撒くといい。流石に髪の毛はどうしようもないから、燃やすといいさ」
淡々と受け入れ難い言葉を吐き出していくラジオ。
なにを言ってるの……?
「それでは、今夜はここまで! ケンジ君、また来週会おう!」
ラジオは時間通りに終わった。
僕は真っ暗な部屋で、天井を見つめながらさっきの言葉を反芻する。
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「みなさん、こんばんは〜。今宵もミッドナイト・アンサーの時間がやってまいりました。この番組はリスナーの皆様の質問にパーソナリティの私ミスターエックスがお答えする番組です」
私がなんとなくつけっぱなしにしていたラジオから聞き慣れない声がして目を覚ました。
こんな番組、あったっけ?
「そして、今回からアシスタントのケンジ君もスタジオに来ているぞー」
「あ、こんにちは!」
「おいおい、こんばんはだろ?」
小学生くらいの声の男の子がラジオに出ている。
こんなに幼い子でも、働いているんだな。
どことなく、私が担任をしているクラスの子に似ている。
「ケンジ君は先週のお便りで約束を守れなかったから、ペナルティでアシスタントになったんだよね」
ペナルティ?
「うん、だってさ、あんなにたくさん食べられないよ〜」
食べられない……?
大食い勝負でもしていたのかな。
「では、今回のお便りを……おや。まだ来ていないみたいだね。誰かお便りを送ってくれるリスナーはいないかな?」
……。
私はなんとなく気になり、パソコンでメールを打ち始める。
せっかくなので、送ってみよう。
「おおっ、きたきた! こんばんは、はじめまして。ヒトミと言います」
「あっ、ヒトミ先生!?」
「ケンジ、変なことを言うな。お便り読んでるだろが」
やはりどこかで聞き覚えがある声だったが、パーソナリティがお便りを読み始めて真相はわからずじまいで終わってしまった。