頭が悪いからと言われて一方的に婚約破棄されました
私フレンダは、婚約していた男性から、一方的な婚約破棄をくらった。
婚約を白紙に戻す作業は、こちらとあちらの親同士で進めていたらしい。
婚約者のドラインは手紙で「婚約破棄する事にした」の一言だけしか述べなかった。
当然それでは納得できなかったので、私はドラインの屋敷へのりこんでいった。
「ドライン様! どうして婚約破棄を! それも一方的に! ひどいですわ!」
「正当な破棄だ。フレンダ。お前は何被害者ぶっているんだ!」
しかし、私の文句を聞いたドラインは、「何をバカバカしい事を」という態度をくずさない。
やむにやまれぬ事情で好きな相手を諦める事ができないとか、家の事情でやむなく、とかいう理由があったなら、私もそれなりの対応を考えたのに。
「お前があまりにも無能だから、婚約破棄した。それだけの事だろ」
「無能だなんてひどい!」
涙がこぼれてきた。
私は今日までドライン様の婚約者として、ふさわしいように努力を重ねてきたというのに。
確かに、なかなか結果が実を結ばなかったけれど、そんな言い方はあんまりだ。
「勉強は進まない。礼儀作法もなかなか身につかない。そんな馬鹿な人間、傍に置いときたいか? もっとましな奴と婚約するんだった」
「結果が重要なのは分かります。でも、私だって、もっと努力をつめばっ!」
「いや、無理だ。馬鹿は一生馬鹿のままなんだ。その余計な努力をしている時間で、他の人間はもっと様々な事ができるんだぞ。だから俺はお前を切り捨てる事にした」
私は床に崩れ落ちる。
努力しても無駄。
それが事実だとしたら、私はなんのためにこれまで努力してきたというのだろう。
ドライン様に「邪魔だ。帰れ」と言われ、私は屋敷から追い出された。
ここまで送ってくれた馬車の男性に「今日は歩いて帰ります」と言って、とぼとぼと道をゆく。
危ないけれど、色々な事がどうでも良かったのだ。
そのうち、ふらふら歩いていたからだろうか。
道端の小石に躓いて転んでしまった。
しかもその拍子に、怪我もしてしまう。
その痛みのせいで先ほどの事を思い出してしまって、また涙が出てくる。
しかし「あの、大丈夫ですか?」そこに声をかけてくれる男性がいた。
平民の男性だった。
偶然通りかかったのだろう。
彼は私が怪我しているのをみて、鮮やかな手並みで手当てをしてくれた。
「はい、これで大丈夫です。こういうのは慣れてますから」
「ありがとうございます」
彼はこちらの顔色が良くない事を見て、何かあったのだと悟ったのだろう。
「これも何かの縁でしょう。辛い事があったなら、吐き出してみてはどうですか。愚痴を聞くくらいしかできませんが」
その優しが嬉しくて、私は何も考えずに今日あった事を語りだしていた。
道端で話す事、十数分。
全てを聞き終えた平民の男性は「なんてひどい奴なんだ」と怒り出した。
そして、「あなたは悪くないですよ」と励ましくれる。
その優しさが嬉しかった。
名前をなのって、別れようとしたけれど、彼が思い出したかのように言ってくる。
「実は、フレンダさんの屋敷で新しい使用人を募集していると聞いた事があるんです、こんなに可愛らしいお嬢様がいるなら、受けてみてもいいかななんて」
「えっ」
言い出した彼は、顔を真っ赤にして「わっ、忘れてください!」と訂正。
その様がおかしくて、つい笑ってしまった。
「ありがとう。貴方のおかげで元気がでましたわ。何か働くなら、そのお仕事が成功すると良いですね」
「はっ、はい!」
彼とは、今度こそ別れて歩き出す。
あたたかな時間をくれてありがとう、と思いながら。
彼が私の屋敷に働きにくるかは分からないけれど、もし来たならばその時はうんと歓迎してあげようと思った。
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最近ごちゃついててすみません。
雨音