第八十九話 カブトムシって男のロマンだよな
今日の主人公は感情が豊かです。豊かすぎです。
今現在俺は、ちょっと前にガーと戦ったところの近くを探索している。
今日の目的はレベル上げだ。
今の俺のレベルとステータス的に、D+40レベ~C-20レベくらいの強さの魔獣と遭遇できれば、一気に経験値を稼いでレベルアップすることができるだろう。
もちろん倒せればの話だが。
それにしても、この森って強い魔獣が多いわりに遭遇率はあまり高くないんだよな。
森の広さに対して、生息している魔獣の数が少なかったりするのだろうか。
特に、森の浅いほうなんてほとんど魔獣が居ない。
たまーに遭遇しても、せいぜいべビスラ(ベビースライムのこと。べビスラって言うとなんかかわいく感じる)や芋虫などの弱いやつばっかだ。
転生直後は鳥生ハードモードだと思ってたけど、生存競争的な面では割とイージーモードなのかもしれないな、この森って。
まあ浅いところ限定だけど。
って、あれってもしかして……。
考え事をしながら歩いていたら、進行方向の先のほうにある木に何かがとまっているのに気付いた。
今の俺の視力はかなりいいので、十五メートルほど先のほうにいるちっこいそいつが何なのかすぐに分かった。
あのフォルム、あの体色は、男なら子供のころ誰もが捕まえたいと思うあいつで間違いないはずだ。
まさか、こんなところでお目にかかれるとは……。
こっそりと音を立てずに、そいつとの距離が五メートルほどになるまで近づく。
そしてまじまじと観察する。
はたから見れば、目を見開いて一点を凝視している俺の顔はなかなかにインパクトがありそうだ。
だけどそうなるのもしょうがない。
なぜなら、目の前にいるのは二本の角が縦に長く伸びており前翅が黄色い生き物、そう、『ヘラクレスオオカブト』だからだ! イッツ、ロマンの塊!
男ならだれもが子供のころに憧れ捕まえたいとなるであろう生物No.1(個人の偏見です。違ってたらすまん)。
例にもれず、俺も子供のころにヘラクレスオオカブトを捕まえたいって思ったよ。
それがまさか、異世界に来てこの目で見ることができるとは。
成長するごとにカブトムシやクワガタに興味なんてなくなっていった(カッコいいという思いは変わってないが、捕まえたいと思わなくなった)のに、ものすごく久々に昆虫を見て興奮してる。
子供のころ、森でカブトムシを見つけたときの興奮がよみがえってくる。
この感覚もなんだかすごく懐かしいな。
結論から申し上げますと、男はいくつになってもヘラクレスオオカブトへのあこがれを忘れてなかったということだな。
昆虫への興味を忘れていたはずの俺がこんなに興奮してるのがいい証拠だ。
それにしても、ヘラクレスオオカブトはやっぱかっこい……あ……。
何の前触れもなく、ヘラクレスオオカブトは飛び去って行ってしまった……。
もう少し見ていたかったと思った時に、そいつは現れた。
さっきまでヘラクレスオオカブトが居た木の後ろ側から、見覚えのあるやつがにょろんと現れたのだ。
細長い胴体、三角の頭、縦に割れた瞳孔と黄色い瞳、カブトムシみたいに黒光りしているほどではないが黒い胴体。
間違いない。あいつは隠密能力と奇襲にたけた厄介な魔獣、アサシンスネークだ。
前回遭遇したときは奇襲されて危うく死にかけた、って待て。
もしかしなくても、ヘラクレスオオカブトが飛んでいったのって目の前のコイツが原因だよな?
【鑑定】、この世界の蛇ってカブトムシ食べたりするのか?
【個体によっては好んで食べます。】
ごつごつしてて硬そうなヘラクレスオオカブトを好んで食べるのかという問題は置いといて、やっぱりヘラクレスオオカブトが逃げたのはあいつが原因か。
許せん(怒)、ぶっ潰す(怒)。
せっかくの鑑賞タイムを邪魔しやがって(怒)。
というわけで、まずは【鑑定】だな(超冷静)。
相手の強さを調べずに突っ込んだら、レベルの関係で相手のほうが強かったなんてこともあり得るからな。
戦いにおいては、怒りに任せるより冷静さを保つほうが大事だ。
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種族:アサシンスネーク Lv38
名前:なし
状態異常:なし
体力 :389/389
魔力 :276/303
攻撃力:361
防御力:322
魔法力:357
素早さ:387
ランク:D+
固有スキル
【蛇鱗】【熱源感知】【暗視】【蛇睨み】
スキル
【毒牙Lv5】【ストーンバレットLv6】【隠密Lv4】【スネークテイルLv5】【締め付けLv4】
耐性スキル
【毒耐性Lv7】【土属性耐性Lv3】【魔法耐性Lv3】【物理耐性Lv2】
称号
【暗殺者www】【執念の毒蛇】【狩りがドヘタ】【熱海温泉】
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よーし、ぶっ潰す(怒)。
ってか、称号の【熱海温泉】ってなんだよ! どっから出てきたんだよ!
【狩りがドヘタ】ってディスられてる挙句、【暗殺者www】って笑われてるじゃねーか。
どれだけ下手なんだよ。
というのは置いといて、固有スキルのところに【蛇睨み】ってのがあるな。
前戦ったアサシンスネークには、【蛇睨み】なんてスキルはなかったはずだ。
どんな効果なんだ。
【睨みを利かせて相手を威圧することで、対象を恐怖で動けなくさせる。自分より相手が弱ければ弱いほど与える恐怖は大きくなる。相手の精神力などによっても変わる。狩りがヘタクソゆえに頑張って編み出された。】
要するに、メンチきって相手をビビらせてる間に【毒牙】で仕留めるってことか。
こうでもしないと狩りができないんだろうな。
ヘラクレスオオカブトにも、普通に逃げられてたし。
確かに、これだけ狩りが下手だったら【暗殺者www】って笑われるのも納得だ。
鑑賞タイムを邪魔された仕返しとして、新スキルの実験台にしてやろう。
ヘラクレスオオカブトを見つけた感動で、主人公の情緒が不安定になってますね。
全然関係ない話になりますが、小学生の頃は昆虫が大好きだったのに今では興味が全然ない作者でも、マンガとかで昆虫モチーフのやつが出てきたらカッコいいと思ってしまいます。蟲使いとかそういうキャラが結構好きです。なんでなのでしょうかね。
次回は火曜日の夕方四時に投稿します。今現在(4:09)九十話を執筆中なので、終わり次第予約投稿をしときます。





