第七十五話 エビルブラックホール
今日のあとがきはちょっと長いですが、エビルブラックホールのこととかについて書いてるので、前話からいろいろと気になっている人は読んでください。
【高速思考】をフルに働かせているおかげで、先程の酸による攻撃を避けたときからまだあまり時間はたっていない。
エビルブラックホールが次に攻撃してくるまでに、能力の【体内ブラックホール】と【強酸性消化液】について調べておこう。
【体内に広がる異空間に、取り込んだものを貯めることができる。この異空間もエビルブラックホールの体の一部なので、中に取り込んだものによってはダメージを受けたりする。】
体内にものを貯める能力か。
吸引して無理やり取り込んだりということは、見た感じできなさそうなので安心した。
説明には書いてないけど、取り込んだものを放出するということはできそうだ。
そのことも頭に入れておかなければならないだろう。
【体内の異空間で強酸性の酸液を作り出す。取り込んだものを溶かして消化するほかにも、作り出した酸液を口から放出することもできる。】
この能力は非常に厄介だな。
作った酸液を放出するのも厄介だが、体内に取り込まれれば確実に消化されて死ぬということも厄介だ。
これらのことを総合すると、酸と口のブラックホールに気を付けなければいけない。
それから、エビルブラックホールが酸弾を放てるのは、口が向いてる方向だけだ。
こいつを倒すなら、三人バラバラに動いて誰かが狙われている間に残りのふたりで攻撃を仕掛けていくしかないだろう。
『おとなしく喰われろ!』
エビルブラックホールのおぞましい声とともに、新たな酸弾が放たれた。
「断るわ」
「無理」
酸弾がふたりの方へ飛んでいくが、ふたりとも跳躍することで躱していた。
「まとまってたら危ないから、バラけて攻撃していくわよ!」
「わかった。みんなあの攻撃に気を付けてね」
「ピュイ!」
「ええ」
俺はすでにエビルブラックホールの側面に回り込んでいるので、そこから【フレア】をエビルブラックホールめがけて放った。
初手から【フレア】で攻めたのは、出し惜しみしていたらやばそうだからだ。
二倍の魔力を込めた【フレア】は命中したが、エビルブラックホールはなにも反応せず、目の前のアリスを追うのに必死になっている。
単純に効いてないのか、餓えでそれどころではないのかはわからない。
「【ウィンドスラッシュ】!」
エビルブラックホールの無防備な体に、リアの魔法攻撃が命中する。
しかし、エビルブラックホールはこれにも反応しない。
『喰わせろォォォオ!』
「嫌に決まってるでしょ」
アリスは木から木へと飛び移ることで、エビルブラックホールの酸弾をかわしていた。
エビルブラックホールは、そんなアリスを追いかけるのに必死になっている。
酸液を浴びて倒れた木々を次々と呑み込みながら、アリスのことを追いかけている。
すごい執念だ。
そこまで苦しいほどの餓えに苛まれているのだろうか?
というか、木々が口の中に吸い込まれていくときに全く音がしないのが不気味だ。
「そうだ!」
酸弾をかわしていたアリスが、突如なにかをひらめいたように叫んだ。
俺とリアは攻撃するのをやめて、アリスの方を見た。
なにか、いい案でも思い付いたのだろう。
「私を食べたいのなら、液体を吐いてばっかじゃなくて食らいついてきなさい!」
アリスが煽るような台詞で、エビルブラックホールを挑発する。
『言われなくても喰ってやる!』
エビルブラックホールは、簡単にアリスの挑発に乗った。
周りのものを呑み込みながら、勢いよくアリスへと迫っていく。
アリスは迫り来るエビルブラックホールの目の前から動こうとしない。
なにをするつもりなのかと思ったときに、アリスが小瓶を手に持っているのに気づいた。
さっきまではなにも持ってなかったから、あの小瓶は【次元収納】の中から取り出したのだろう。
「これでも食べてなさい!」
アリスが持っていた小瓶の蓋をとって、口を大きく広げて迫り来るエビルブラックホールに向かって投げつけた。
小瓶はきれいにエビルブラックホールの口に向かっていった。
小瓶がエビルブラックホールの口の中に入る前に、小瓶の中になにが入っているのか慌てて【鑑定】した。
【猛毒ポーション】
【専門の調合士が、いくつかの毒草や毒液を調合して作ったポーション。かなり強力な毒で、生物の体内に入るか傷口から侵入すれば、瞬く間に相手を毒状態にする。一部のポーション店で、それなりに高い値段で販売されている。】
あの中に入ってるのは、毒ポーションか。
エビルブラックホールを毒状態にできれば、倒せる可能性がグッと上がる。
なんでそんなのを持ってたのかは知らないが、とにかくナイスだ。
『喰わせ……グオォ?』
アリスが投げた小瓶は、エビルブラックホールの口の中にきれいに入った。
エビルブラックホールは、不思議そうにしている。
これまでのことから考えると、エビルブラックホールが小瓶ひとつ飲み込んだくらいで、なにかを気にするのはおかしい。
これはもしかしたら……。
「ピュイ!」
「どうしたの、すーちゃん?」
エビルブラックホールを【鑑定】すると、状態異常が毒になっていた。
エビルブラックホールが特に苦しんだりせず不思議そうにしてるのは、まだ毒の効果がほとんど出てないからだろう。
時間が経てば経つほど、毒の効果は大きくなっていくはずだ。
「それはゼストがなにかあったときようにって、お小遣いはたいて買ってきた毒ポーションよ。2年くらい放置してたけど、やっと出番がきたわ!」
あのポーション、二年も【アイテムボックス】の中に入ってたのか。
なんにせよ、出番が来て良かったな。
このまま使われなかったら、ゼストの小遣いが無駄になるところだった。
「さっきのって、あのポーションだったのね」
「うん。毒が入ったと思うから、ここから攻撃しながら粘っていくわよ!」
「りょーかい!」
「ピュイ!」
いつものことだけど、気を抜くことはできない。
毒が回ってくれば、エビルブラックホールの攻撃も激しくなるだろう。
『喰わせろォォォォォォォォォォォォオオ!』
感想ではもう言ってるんですが、あとがきの方でもちょっとだけ言わせてもらいます。
今回、異世界からやって来た存在を出した理由や、エビルブラックホールの具体的な強さなどは、本編でエビルブラックホールとの決着がついたときにあとがきで話させてもらいます。
今回のエビルブラックホールのような異世界からきた存在のポジションがどういったものなのかも、そのときに話させてもらいます。
いろいろと気になる方も多いと思いますが、エビルブラックホールとの決着がつくまでは、こういう魔物もいるぐらいの認識で読んでください。





