第七十一話 決着 ギガンティックスライム戦
戦い始めたときに比べて、明らかにスライムの攻撃力は下がっている。
今の【触手鞭】の威力では、一撃で戦闘不能まで追い込まれることはないだろう。
その点は安心だが、油断は禁物だ。
「スライムの攻撃力が落ちている今なら、【グランドウォール】で足止めできるかもしれないわ!」
スライムの攻撃力が落ちているのを見て、アリスがそう言いだした。
【グランドウォール】は、土の壁を作り出して攻撃を防いだりするスキルだ。
それでスライムの周りを囲めば、少しくらいの足止めはできるのだろう。
「その間に、リアとすーちゃんで大ダメージを与えることはできるかしら?」
確かに問題はそこだ。
足止めできたとしても、有効な攻撃ができなければ意味がない。
魔力を多めに込めた【フレア】ならそれなりにダメージを与えられるが、あの巨体相手には大ダメージとまではいかない。
あいつを倒すには、攻撃範囲が広くて威力も高い攻撃をしないといけない。
「前にロイヤルナイトと戦った時にすーちゃんと一緒に放った死を呼ぶ青い竜巻なら、あのスライムにも大ダメージを与えれると思う。すーちゃん、あの青い炎を出すスキルってまだ使える?」
「ピュイ!」
デスフレアストームなら、攻撃範囲が広いうえに着弾してから20秒ちょっと炎上し続けるから、スライムの動きを封じている状態で使えば大ダメージを狙えるだろう。
スライムの動きを封じるのは、アリスに任せておけば大丈夫だ。
「作戦が決まったみたいね。隙ができたら私が【グランドウォール】を使うから、すぐに攻撃してちょうだい! それと、【グランドウォール】で足止めできるのはせいぜい10秒程度だと思うわ」
「りょーかい。私たちの合体奥義を見せてあげようよ」
「ピュイ!」
そうと決まれば、さっそく行動開始だ。
まずは、こちらの様子を窺っているスライムにできるだけ近づく。
そして、スライムの周りをちょこまかと飛び回りながら、【サンダーボール】をちまちまと放っていく。
スライムは俺が鬱陶しかったのか、挑発に乗って攻撃してきてくれた。
触手での攻撃を躱したら、すぐにスライムから距離を取る。
スライムは触手を思いっきり振り切って隙だらけになっているので、その隙にアリスが【グランドウォール】を使ってくれるだろう。
「ナイス、すーちゃん。続きは任せて! 【グランドウォール】!」
アリスの声とともに、スライムの周りに高さ二メートルほどの土の壁が出来上がった。
スライムは囲まれたのに驚いたあと、すぐに触手での攻撃で破壊を試みる。
が、【触手鞭】では土の壁にひびを入れるので精一杯だった。
「いくよ、すーちゃん!」
「ピュイ!」
スライムが土の壁を壊そうとするころには、俺とリアはすでに攻撃の準備が整っていた。
俺は上空から、リアのほうは高い木の枝の上から、土の壁の中にいるスライムを狙っている。
「いくよ! 合体奥義! 死を呼ぶ青い竜巻!」
「ピュイ!」
リアが【トルネード】を使うタイミングに合わせて、魔力を制御できる範囲の限界まで込めた【フレア】をスライムめがけて放つ。
制御は難しかったが、この【フレア】なら今まで以上のダメージを与えることができるだろう。
正真正銘、俺が今放てる最高の一撃だ。
「フッ。地獄の業火に焼かれて罪を償い改めるがいい」
「ピュイ」
「なんの罪を償うのよ?」
ロイヤルナイトの時と同じように、スライムがいたところにきれいな青い炎が吹きあがっている竜巻が出来上がった。
炎の中からスライムが出てくる気配はないので、この一撃でかなりのダメージを与えられたのかもしれないな。
「これで倒れてくれるといいんだけどね」
この様子だと、仮に耐えたとしても致命傷にはなっているだろう。
火柱と暴風が収まり、あたりに舞っていた砂埃も落ち着く。
スライムが居た場所を見れば、土の壁は崩れ落ちて地面は真っ黒に焦げていた。
が、肝心のスライムはまだ生きていた。
「あれを耐えるの?」
「ギリギリ耐えたみたいだけど、もう限界みたいだよ」
スライムは俺とリアの攻撃を耐えきってはいたが、粘体の量はほとんど燃えてなくなっていた。
大きさは最初が二メートル以上だったのに対して、今は二十センチほどしか残っていない。
かろうじて耐えることができたといった感じなのだろう。
残り体力も38/97しかない。
「再生される前にとどめを刺すわよ」
「おっけー」
「ピュイ」
「【ウィンドスラッシュ】!」
「【エアショット】!」
「ピュイ!」
アリスは【ウィンドスラッシュ】、リアは【エアショット】、俺は魔力を多めに込めた【ファイアーボール】を放った。
三つの魔法はスライムに直撃し、かろうじて残っていた体力を削りきることができた。
粘体の部分も完全に消えてなくなったので、やっと倒すことができたようだ。
「お疲れ様」
「お疲れ、すーちゃんもね」
「ピュイ」
お互いを労ったあとはみんなでハイタッチをする。
いろいろあったけど、スライムを倒すことができてよかったな。
これで、みんなさらに強くなっただろう。
「それじゃあ、今日の探索はここまでにして帰るわよ」
「わかった」
「ピュイ」
俺とリアはかなり魔力が減っているし、みんな戦いで疲れているのでもう帰ったほうがいいだろう。
それに、ここに留まっていれば戦闘音を聞きつけてやってきた魔獣に襲われるかもしれない。
今のコンディションで連戦になれば、かなり不利だし最悪死ぬ可能性だってある。
今日はもう帰るべきだ。
時間はかかったが、来た道を戻って巣まで無事に帰ることができた。
気づけば七十話を過ぎてました。三月から始めたばかりなのに、時間が過ぎるのは早いですね。





