第四十七話 交流
「それにしてもお前Dランクだったのか」
「すーちゃん強いんだね」
俺がDランクの魔獣だと知って、ゼストとリアの二人は驚いていた。
「ちょっとゼスト! ゼストもすーちゃんって呼んで」
アリスは終始こんな調子だ。
ゼスト曰く、最近仕事続きで久々にモフれたのがよっぽどうれしいのだろうとのことだ。
結構ストレスたまってたんだね……。
「すーちゃんはさすがにかわいそうだろ。だから俺は朱雀って呼ぶぞ。朱雀もそれでいいか?」
断る理由もないので頷いておく。
ゼストまですーちゃんとか言い始めなくてよかったよ。
アリスとリアに呼ばれるのは仕方ないとして(頷いてしまったし)、この呼ばれ方は恥ずかしいからな。
「図鑑によると朱雀ってかなり、というかものすごく珍しいみたいだな」
「それなら見たことがないのも納得だね」
「珍しさと見た目の良さから貴族に売れば高値で買い取ってくれるんだとさ」
「ゼストそんなことしちゃダメだよ」
「するわけないだろ。というかお前らなら俺がそんなことしないのわかるだろ」
図鑑に高値で売れることが書かれている可能性があることをすっかり忘れてしまっていた。
貴族のくだりが出てきたときは焦ったが、ゼストたちはそんなことをする気はないみたいだ。
さっきの言葉に嘘は感じられなかったからな。
異世界初の人間との交流がゼストたちで本当に良かったよ。
「図鑑には、ほかにも炎を操って戦うと書かれているぞ」
「すーちゃん炎の魔法使えるの?」
リアが聞いてきたので頷いておく。
「すーちゃんすごい」
「あとそれから、クナの実が好物って書かれてるぞ」
「はーい! はい! はい! それなら私持ってるよ!」
図鑑には朱雀の好物も書いてあったようだ。
俺は食ったことがないから本当においしいのか分からないが、貴族に飼われていた朱雀はクナの実を好んで食べていたそうだ。
その木の実の名前が出たとたん、やたらテンションの高いアリスが持ってると言い出した。
「クナの実なんていつの間に持ってたんだ?」
「この前の依頼先でたまたま見つけたのよ。それで、あとで食べようと思ってたくさん【次元収納】の中にしまったのよ! ナイス、あのときの私!」
なぜか胸を張ってドヤ顔をするアリス。
「すーちゃんにあげたいから、【次元収納】の中から出してちょうだい」
「もちろんすぐに出すわ!」
アリスの手の上にオレンジ色をした小さな木の実が出てきた。
【鑑定】してみたところ、このオレンジ色の木の実がクナの実で間違いないようだ。
少し甘くて栄養価が高いと説明文には書いてあった。
普通においしそうだ。
「ほら、すーちゃん。あーん」
アリスから手渡されたクナの実を食べる。
【鑑定】の説明文通り、口の中にほんのりとした甘みが広がっておいしかった。
のはいいんだけど、あーんってして食べさせてもらうのはすごく恥ずかしいぞ。
見た目はちょっと大きいきれいな鳥だけど、中身は大学一年のいい年した人間だからな。
ホントだったら自分で食べたいけど、アリスが心の底から楽しそうにしているのを見るとどうしても断ることができない。
「どう? おいしい?」
アリスにおいしいか聞かれたので、大きくうなずいておいた。
間違いなくクナの実はおいしい。
「私もすーちゃんにあげる。はい、あーんだよ」
アリスからクナの実を受け取ったリアが、俺に向かってあーんってしてきた。
アリスの時もそうだが、めっちゃ恥ずかしいな。
だけど、リアのうれしそうな顔を見たら嫌ですと断ることがどうしてもできなかった。
結局、アリスの時と同じようになってしまったよ。
リアにもおいしいか聞かれたので、アリスの時と同じように大きく頷いておいた。
なんだかんだでクナの実をたくさんもらったので、何か俺からもお返ししたほうがいいな。
……あ、巣の中にまだ手を付けていないアップルンがあったな。
アップルンはかなりおいしいから、お返しとしては充分だろう。
アリスに声をかけて開放してもらい、巣の上に上がる。
そこには採ってきたアップルンが二つあった。
昨日の夜はアップルンを食べずに寝たので、二つともきれいなままだ。
今日の朝飯はクナの実をたくさん食べたので、アップルンを食べる必要はない。
両方あげても問題なかったので、アップルンを二つ抱えてシートの上まで戻った。
「もしかしてこれアップルンか?」
「うん。アップルンで間違いないと思うよ。昔食べたのにそっくりだもん」
アリスとリアの前にアップルンを置いて、ジェスチャーで食べていいよと伝える。
「もしかして私たちにくれるの?」
クナの実のお返しとして持ってきたので、リアの質問に頷いて返しておいた。
ゼストのぶんがないが、アップルンはクナの実に対してのお礼なのでアリスとリアにあげることにする。
すまん、ゼスト。ニ個しかなかったんや。
「アップルンおいしー! すーちゃんありがとう!」
アリスはさっそくアップルンにかじりついている。
おいしいのならよかったよ。
「ゼストも少しいる?」
リアはゼストにアップルンがいるかと聞いている。
本当に思いやりのある子だよな。
「それは朱雀がクナの実のお礼にってあげたんだろ。俺はクナの実をあげてないからな。リアが全部食べろ」
「じゃあもらうね」
リアもおいしそうにアップルンを食べている。
「ありがとね、すーちゃん。おいしいよ」
アリスとリアたちがアップルンを食べている間に、貰ったクナの実を巣の中に移動させておいた。
そのときに、何もすることのなかったゼストも手伝ってくれた。
ありがとう、ゼスト。
ゼストには頭を下げてお礼をしておいた。
「別に気にするな」
見た目も言動もまごうことなきイケメンですね。
魔物と人の関係ですが、完全に敵対して対立してるような世界ではないです。ペットとして飼われたり、信頼関係を結んでお互いに協力し合う人と魔物なんかもいます。





