【求めた幸せは、実は不幸だったり?】01
いやーー実に下らない。
ジャンルは、もうドロッドロのラブコメ。でも男にとってはこーゆうのはロマンだよねー。
あらすじ。
主人公は日高 武。高校一年生。
一つ年上の、しかもかなりのブラコンの姉をもつ。
この冬休み、親が家にいない状況、と言う事は姉と二人っきり?そんな中、奇妙な訪問者達がやってきた。
「留守番頼んだわよ」
「二人仲良くな」
「うんもちろん」
「じゃ、行ってくるわね」「じゃあ、行ってくるからな」
「うん、いってらっしゃ〜〜い」
玄関で姉ちゃんが手を振る、その相手は親父とお袋だ。この年末に、何でもハネムーンってやつを今さらになってやるらしい。もう結婚……二十年目だっけ?なのによ、わけわかんねえ……。
玄関の扉は出かけたどちらかの手により静かに閉められた。姉ちゃんは確認したやいなや駆け足で俺がくつろいでいるリビングに戻って来た。
「ほら、タケも見送りなさんな」
「いいよ別に……メンドイ……」
通りすがりに、一々ソファーに寝転んでいる俺に声をかける。そしてそのままの勢いで外のガレージが見える窓まで、閉まっていたカーテンを開ければまたその向こうに居ると思われる親父とお袋に手を振っていた。
「いってらっしゃ〜〜い!」
どうせ向こうには聞こえちゃいねえのに……。
「ほぉら〜タケー!早く来なって〜〜」
「………」
俺を呼び込もうとまた声をかけてくる、それを敢えて無視して再放送の番組をやってるテレビに目を向け続ける。この昼の時間、テレビはつまらんが、姉ちゃんを調子乗せるとよりつまらん、と言うか厄介になる。しかもこの状況、この家には俺と姉ちゃんのみだ。最初は親父とお袋がどっか行くって聞いて俺も喜んだものだが、お金に関して全て姉ちゃんが管理、ダチを呼ぼうと思ったが何故か全員に断られた。この時期に旅行に行くのは当たり前なのだろうとは思うものの、十人以上は誘った、その全員がどっか行くことは無かろうに……。実につまらん冬休みになりそうだ。
テレビでは地味な芸人が落とし穴に落とされ、妙に盛り上がる。それとは別で後ろに居る姉ちゃんも妙に盛り上がっていた。
「あ〜〜もう、二人とも行っちゃったじゃん。普通は子として送ってあげるもんでしょ」
「……知るかよ」
俺の顔元の近く、ソファーの、本来肘をかけるべき場所に腰を掛けてきた。俺もそこに頭を掛けていた、しかもテレビを遮るようにケツがあるのでくそ邪魔だ。
「いいよね〜〜北海道〜〜。私たちも行きたかったね〜〜」
良く言う……。当初誘われていたが姉ちゃんから、いいよいいよ折角のハネムーンなんだから二人だけ行って。で、後は確か……私“たち”が邪魔したら不味いじゃん、ね〜〜タケ、なんて言ったな……。誘われた時点で、正直俺は行く気満々だった。釧路の寿司、夕張のメロン、札幌のラーメン、北海道のご馳走達が俺を待っていたと言うのに……。まあいいや、とっとと部屋に戻ろう……。
俺はだるく重たい体を起こし、痒い頭を掻きながら立ちあがった。
「あれ?どこ行くの?」
「んあ?部屋だよ部屋、自分の部屋」
だから一々判り切ったことを訊くなっての。
「ふぅ〜〜ん……」
あれ、いつもより反応が薄いな。そっけない返事を返し、姉ちゃんはリモコンを持ちテレビの画面を消した。少しだけ気味悪さを感じたが、俺はそのままリビングを出て行った。
リビングを出て、廊下の一番奥へいったとこ、左にある階段を上った先、左右に二つの扉があり、左が俺の部屋、右が姉ちゃんの部屋だ。もちろん俺は左の扉を開けて入った。
俺の部屋の広さは六畳。扉から見て一番隅にベッドがあり、丁度そこに寝転んで見れる位置にテレビがある。中央にはテーブル、その上にはリモコン入れと通学カバンがいつも置かれている、使うときはカバンは適当なとこにどかす。ちなみにリモコン入れには、テレビのリモコンの他に、エアコン、DVDレコーダーのものがある。
部屋の電気を付け、まずテレビとエアコンを付ける。そして、まだ学生服を着たままなのでベッドの上に脱ぎ棄て、ジャージに着替える。俺としては部屋に居る時ぐらいTシャツにトランクスで過ごしたいところなのだが、最近姉ちゃんが勝手に入ってくるのでなかなかできない。
着替え終えた俺はベッドに腰を掛け、さっきリビングで見ていた番組をまた見ることにした。正直俺にはこれと言って趣味と呼べるものは無く、周りみたいにゲームもしないし本も読まん。ダチとたまに外へ遊びに行く程度だ。
「ねえ晩御飯何にする?」
「別に……そっちで勝手に決めてくれ」
横に居た姉ちゃんに晩御飯の内容をを訊かれた俺は、特に考えも無いので適当に流す。…………?横に居る?…………。
……ちょっと待て!ここは俺の部屋だ、なんで姉ちゃんが居るんだ!今さらになって気付く俺もどうかしてると思うが、何とも当然のように俺の隣に姉ちゃんが座っている。
「い、いつの間にいるんだ!?」
「ありゃ、もう気付いているものだと思ってたよ」
「いつから居た」
「そりゃもう、最初から最後までかな。タケのセクシーショットが見れて、お姉ちゃんちょっと興奮しちゃった♪」
この人、変態と呼ぶに相応しいな。俺の着替えるとこまで見てたと言うのか、しかも自分で、興奮したとかぬかしてやがる。ここまで来るとかなりキモイ。
「もう用がないなら早く出てってくれ!」
この変態を追い出すため、俺は強引に腕を掴み引っ張る、ただこれでも困る様子など全く無く、何故か嬉しそうにする。
「あ〜〜ん、タケちゃんもっと優しくして〜〜」
なんだろ、この態度。俺にはイラつかせるだけにしか過ぎないのだが。
「早く出てけって!ここは俺の部屋だ!」
「あ〜〜ん、用ならまだある〜〜」
「あっても出てけ!勝手に入ってくんな!」
なんとか力ずくで出口まで姉ちゃんを手繰り寄せた。もう片方の空いてる手で乱暴に、ノブを投げるようにして扉を開ける。あと少し、あと少しようやくひとりに……。トドメに全力で引っ張ろうとした一瞬、今まで掛かっていた抵抗が一気に無くなる、やばい姉ちゃんが突っ込んでくる?!俺は突っ込んできた姉ちゃんを抱きかかえるようにして受け止め、勢いそのままに外へと飛び出す。俺の部屋と姉ちゃんの部屋の距離が結構短いため、一歩着いて転びそうになったとこ体ごと姉ちゃんの部屋の扉にぶつけた。
「だ、大丈夫か……?」
物凄い衝撃だった、怪我があってもおかしくは無い。ただその俺の心配をよそに、姉ちゃんは在らぬことを口にした。
「あ〜〜ん、この冬休みタケちゃんとずっと二人っきり〜〜」
俺の腹のあたりで顔をすりよせて何かほざいている。もうずいぶん前から気付いてはいたが改めて思う、これがブラコンってやつだな、と。しかも姉ちゃんの場合、かなり極度なものだ。もう身動きのとれない俺は、半分ほど諦めた。気がすみゃどっか行くだろう……。そんな風に気長に考えた。
しばらくして、姉ちゃんの動きが止まった。やはりどこか怪我をして、等と少し心配にはなったが、当然そうでは無く……。機械的に顔を起こし、その表情は力ないもの。と思ったやいなや俺の目の前まで近づいてきた。ってかちょっとまて!序盤でいきなりその展開は無いだろ!……なんて訳のわかんないこと思ってしまう始末、俺もかなり動揺している。
<<ピンポ〜〜〜ン>>
ここで神の救いか、ギリギリのタイミングで呼び鈴が鳴る。それで姉ちゃんの幻惑から完全に目が覚めた俺は、無理矢理でも玄関へ向かう事にした。
「ほっといて、いいから……」
「良くねえだろーが!」
上に乗る姉ちゃんを手で払いのけ、横に転がるように……ただこの二階は結構狭い、我が家なのにそこを忘れていた俺は……。
「うわあああああ!!」
どっかのカンフースター張りに階段を転げ落ちた。こりゃ全身アザだらけになるな。一番下まで見事に回転した俺は、全身そこらじゅうが痛みしばらくは動けなかった。
「も〜〜う、だからほっといていいって言ったのに……」
ゆっくりと階段を下りてくる、絶対さっきのあれはこの事を指すものではないだろ。なんとかツッコミを入れたかったが、そんな元気はもうない。
「手当てしてあげるから、そこでじっとしててね」
「……いいよ、それより呼び鈴、鳴ったんだから……」
痛みも退いてきて、なんとか動けるようになった俺は玄関へ向かう。
「あ〜〜ダメダメ、無理しないで。私が行くから、タケはそこでじっとしてて。すぐ戻ってくるから……勝手にどっか行っちゃダメよ」
「はいはい……」
適当に返事をしてその場にケツを着ける、まあその通りに従うつもりは毛頭ないがな。姉ちゃんは三歩ほど俺を気にするようにこっちを見ていたが、全く動く気配のないのに安心したのか途中から駆け出して行った。
姉ちゃんが玄関へ向かったのを階段の影でしっかり確認した俺は、また部屋に戻る事を試みる。やはりまだ痛む、階段を昇る一歩がけっこう響いて来る。冬休み早々、こんな目に会うとは、最悪のスタートだな。
そんな事を思いながら、ようやく階段の中腹辺りまで昇った時ぐらいだった。
「あなた達!早くこの場から出て行って!!」
いつぞやもう聞いた、いや俺が言ったセリフだ。姉ちゃんが怒鳴り声を上げている。相手は呼び鈴鳴らした者だろうか?珍しい、姉ちゃんが怒ることは滅多にない、よっぽど深刻なの状況だろう。悪徳業者とかそんな類か?俺は今できる限界で急ぎ玄関へ向かう。思うように動かない体で役立つか、そんな不安とかも浮かべつつ階段を下って行く。残り一段、と言うところ足がもつれまたもド派手に転ぶ。
「タケ!!来ないで!!」
玄関まで聞こえたのか、その音に反応した姉ちゃんは俺を制止するように怒鳴った。来るなと言われても、不味いんだろう。流石に俺は、そこまで白状じゃない。壁に手をつき、やけに痛む左足を引き摺りながらその声の元へ。
ただ、そこは俺が思っているような状況じゃなかった。俺のイメージは、強引にでも入ってこようとするけったいなおっさんを姉ちゃんが引き戸を閉め入らないよう抵抗している姿。だが戸は開いてるし、相手は女性、しかも歳は、俺と同じくらいか?よく見たら奥にも数人の女の子が。なんだこれ、新手の悪徳業者か?
「どうしたんだ?」
「ダメ!いいから向こう行って!お願い!!」
姉ちゃんは俺を階段の方へと翻させ、奥へ追いやろうとする。だけど足が痛い、俺はそれすら踏ん張りきれずに、またまたド派手に音をたてて転んだ。我ながら情けない……。
「ああ!なんてことを!」
へ?今のは姉ちゃんの声じゃないな。その次、また別の人の声がした。
「やっぱり!耀子さんは武の不幸の元だったんだ!」
今の声はどっかで聞いたことあるぞ……。
「そ、そんな……」
訪問者たちは、涙目で動揺する姉ちゃんを押しのけ、だらしなく横たわっている俺の周りに集まって来た。何人ぐらいいるんだ、ぞろぞろと……恐いな。その中の一人、ショートボブでかなりインテリチックでシャープな眼鏡をかけた女の子が、俺の手を取り、顔元で……なんつーか、とても愛らしい表情で言った。
「日高 武様、私たちはあなたをお救いするためにやって参りました」
「は、はいぃ〜……?」
なんなんだこの状況、訳判らない……。そんな俺は、つい情けない返事をしてしまう。よく見れば全員かなりの美少女、その全員に見下ろされ、心配され、俺は……照れた。
いきなりこんなの書きたくなる衝動に駆られてしまって……。
まともなやつも書きますから……多分。