(4)
でもそれが、未だ解消されていない。
それこそが、私が彼女嫌っている理由。
彼女の頑張りを、まだ誰も知りはしない。
練習の後、トレーニングルームへ行けば出会えるのに、誰も向かおうとはしないから。
そしてまだ誰も、彼女と「友達」にはなっていないから。
そして勝手に、彼女に「天才」のレッテルを貼るから。
「やあ」
と、運動場の使用を終え、皆が帰り支度をする中、部長が声をかけてきた。
「キミは、今日もまた居残り練習かい?」
「……まあ、そんなところですよ」
「あまり、力みすぎないでね」
そう言って私の肩を軽く叩き、歩き去る。
本当はこの後も練習できるのに、男子陸上部の部長と合流し、並んで帰る。
前から聞こえる笑い声が、今まで広がっていた不快感とは別の感情を広げてくる。
私に気を遣わないで話しかけてくれる数少ない人。
彼氏が出来た途端、あの人は練習を一番に据えなくなった。
それは嬉しいことで、心から祝福しているのだけれど……それでもやっぱり、少しだけ寂しかった。
「……何いっちょ前に独占欲出してんだか」
小さな自分の呟きに、思わず苦笑してしまう。
きっと友達に恋人が出来た時は、皆こんな気持なのだろう。
まあ、あの人とは友達ではないのだけれど。
これもまた、私が一方的に、そう思っているだけの関係だ。