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チートスライム拾いました、その名はすらいちゃん。攻撃はもちろん回復までなんでもござれ。俺の存在を疑問視することもあるけど仲よくやってます。でもね、女性に触手プレイをするのはやめて。捕まるから、俺が!  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
Episode1.ダンジョンで助けたのは魔法学校の女の子!? 少し勝気だが心優しい少女の名前はジュリエッタ・セラート。そんな彼女をモンスターの囮にした奴らはすらいちゃんがお仕置きよ!
6/28

4.ダンジョンって聞くとテンション上がる? いや、俺は上がりません。だってダンジョンの中は危険がいっぱいだもん。お宝を手に入れることもあるけど基本的にモンスターの巣窟ですよ。え? 出会い? ないない。

登場スライムの名前を変更しました。

どうぞよろしくお願い致します。



 デヴィッドとすらいちゃんは、竜タクに乗って王都から三時間ほどの場所にあるダンジョンに向かっていた。

 竜タクとは、翼のない竜である地竜が馬の代わりをする馬車のようなものだ。馬車よりも速度があり、人数も乗せることもできる。なによりもモンスターの中で上位種である竜がいれば下手なモンスターが寄ってこないことが利点である。


「上質の薬草集めね。そういえば、この間も薬草集めだったな。最近、どこかの貴族が大量に薬草やら薬を集めているって噂を聞いたけど、本当だったみたいだね」


 貴族の考えていることなど庶民にはわからない。

 普通の買値よりも高く買い取ってくれることから、極力数を欲しているらしい。こちらとしては普段の労力でいつも以上に実りがあるのだから文句はない。


「だけど上質な薬草って危険なところにあるんだよなぁ」


 例えばダンジョンだ。

 王都の近くにあるダンジョンも上質な薬草が取れるダンジョンのひとつである。

 仕組みはよくわかっていないが、最下層部に近ければ近いほど薬草以外にも得るものの質が上がるという。


 デヴィッドはソロであり、実力も大したことがない弱者なため上層部から下にいったことがない。というよりも行く必要もない。

 実力以上のことを望めば、手痛いしっぺ返しがくる。ときには死が容赦なく襲いかかってくる――それが冒険者なのだ。


 夢も希望もないが、デヴィッドは仕事として割り切って冒険者業をしているのだから、金さえ稼ぐことができればリスクは最低限にしたいと常々考えている。


「上層部でも安全なところを中心に薬草を集めていくしかないか。すらいちゃんが戦えるかどうかもわからないし。てか、スライムだからきっと戦っても弱いだろうし」


 すぷー、すぷー、とどういう仕組みなのか鼻提灯を膨らませて寝息を立てているすらいちゃんに期待はしていない。あくまでも冒険する相棒であり、戦力として戦わせようと考えているわけではないのだ。

 デヴィッドは竜タクに揺られながら、割と高額で購入したダンジョンマップを眺めながら薬草集めを考える。そんなことをしていると、あっという間に竜タクがダンジョンへたどり着いた。

 すらいちゃんを起こして頭に乗せると、ダンジョンの入り口に普段は見ない少年少女が多いことに気づく。


「よう、デヴィッド。今日もはした金稼ぎか?」

「やあ、おっちゃん」


 顔見知りとなったダンジョンに詰める兵士から声をかけられ、手を振って返事をする。

 彼らはダンジョンの監視者であり、ダンジョン内から外へモンスターが溢れるという万が一を想定して日夜問わず在中しているのだ。


 同時に、マナーの悪い冒険者の取り締まりから、駆けだし冒険者へのフォローまで手広く関わっているのだ。

 聞くところによると、この任につける兵士は相当の実力を有しているようなのだが、デヴィッドに親しげに話しかける兵士はどこにでもいるおっちゃんにしか見えない。


「今日は学生が多いね」

「そうなんだよな。冒険者じゃなくてもダンジョンにはなにかしらの用事があってくるもんだが、俺も今日ほど学生が多いのははじめてだ。ただ、どいつもこいつも弱そうだから気を付けるように声をかけてやったんだが――お嬢ちゃんがひとり丁寧に礼を言っただけで、あとの学生どもは無視こそしないが鬱陶しいって顔されちまったよ。おっちゃんショックだわ」

「最近の子はなってないっすねぇ」

「俺からすればお前さんも十分に最近の子供だけどな」


 最近の子供はスレている。そんなことをよく聞くが、デヴィッドも最近まで子供と呼ばれる側の人間だった。今でも子供扱いされることは多く、成人したばかりなのでしかたがないといえばそれまでだ。


「で、結局、なんですかこれ?」

「さあな。だが、もう帰るようだぞ。ちらほらダンジョン内にも残っているようだが、まあ、なにか魔法の実験か、ちょっとした力試しかなんかだろう。学生はそういうことをするために結構くるんだよ」


 ならばそこそこの実力を持っているのか、力に自信があるのだろう。

 デヴィッドの学生時代にも授業よりもダンジョンに挑むことで実力をつけようとした生徒は多かったことを思い出す。


「今のところ、問題は起きていないが、ルール違反が起きる可能性もあるから気をつけて挑めよ」

「そうします。ありがとうございます」


 ダンジョンにもルールがある。暗黙のではなく、明確なルールだ。

 まず得物の横取りはご法度である。守らない者は多々いるが、そのためのギルドであり、見張りの兵だ。明らかになると重いペナルティが課せられるのだが、それでも後を絶たないことが嘆かわしい。


 続いて多いのが、敵を押しつけることだ。ダンジョン内でモンスターと戦い、勝てなくて逃げる際、必ず逃げ切れるとはわからない。追いかけてきたモンスターに追いつかれるという恐怖などから、近くにいる冒険者に敵の注意をそらし逃げるための囮にする場合もある。


 これも発覚すると重いペナルティとなる。とくに命にかかわるため、一度でも行えば冒険者の資格を剥奪されることや、最悪の場合牢獄に繋がれることとなる。

 恐慌状態になり止む終えず、という場合は厳重注意だが、それでも相応のペナルティが発生する。


 他にも多々ルールはあるが、最も大事なことはこの二つだ。

 学生であっても最低限のルールは知っているはずだが、ダンジョンの怖さをしっかりわかっていない未熟者だと、ルールを無視しても構わないという驕りがある。大きな罪にならないからという理由で、小さなルール違反をするのはだいたい駆け出しや、学生に多かったりするのだ。


「おう、いってこい!」

「じゃあ、すらいちゃん、俺のこと守ってくれよ」

「ぴぃ!」

「スライムにお願いするなよ、情けないな……ったく」


 兵士に苦笑されながら、デヴィッドは学生たちの合間を縫ってすらいちゃんとダンジョンの中に入っていった。




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