22.いざ火竜のダンジョンへ! 注意事項。怖いドラゴンには注意しましょう。極力奥には入らないようにしましょう!
「警戒? どうして?」
「ジュリーが学年主席であることは聞きましたよね?」
頷く。
「あの子は魔法を学び始めた瞬間から才能を発揮していました。――一度は大きな失敗もしてしまいましたが、才能を失ったわけではありません。単純な炎属性の魔法なら、学園内でも一位の実力を持っているのです」
「それは……凄いな、他に言葉が出てこないよ」
落ちこぼれでギリギリ卒業したデヴィッドには想像ができない。
そんな幼なじみのことを誇るのではなくアンジュリカは悲しげな顔をしていた。
「才能があり過ぎるというのも困りものですの。ジュリーの才能を利用しようと企む人間は決して少なくありません。先日のダンジョンの一件も、あの子を戦力として利用し、見捨てたのです」
怒りを浮かべるアンジュリカの言葉は間違いないだろう。
ダンジョンに挑むのなら戦力面で安心したいと考えるのが普通だ。結果、ジュリエッタの力を頼ったのは別にいい。しかし、仲間としてしっかり扱わず、魔狼から逃げる囮にしたことは許されないことだった。
「あの子は彼らを殴ってすっきりしていますが、わたくしは違います。どのような手を使ってでも、学園から追いだしてみせます。二度と、ジュリーの目の前に現れないように。たとえその結果、彼らの人生が一変したとしても構いません。それだけのことをしたのですから、覚悟をしてもらいますわ」
友情ゆえだとしても容赦がない――とは思わなかった。
もしかしたら親友を失っていたかもしれないのだ。彼女の怒りは正統なものだ。
しかし疑問もある。
「なぜそれを俺に言うんだ?」
「デヴィッドさんと一緒に過ごし、あなたがジュリーになにも企みがなく、善意で接してくださっているとはっきりわかったからですわ」
事実、デヴィッドはなにかを企んではいないし、ジュリエッタを利用しようとも微塵も考えていない。
「あなたはとても優しく、見ず知らずのジュリーのお姉さまのために危険を承知でダンジョンに挑んでくださっています。下心がある人間に、こうはできません。心から感謝しています。そして、謝罪します。お許しください」
「うん。許すよ。それに、君は悪くないさ。誰だって友達のために心配することはあると思うし、そのことを責めることなんてできないよ」
「……デヴィッドさん」
「誤解も解けたようだから、これからも変わらずによろしくしてもらえると嬉しいな」
「――はいっ。妻としてあなたに尽くしますわ」
「あれー?」
なにかがおかしい、とデヴィッドは首をかしげる。
目の前では笑顔を浮かべるアンジェリカがいる。もちろん、さっきまでの沈んだ表情を浮かべているよりも今のほうがいいのだが――。
「あの、妻って本気なの? 俺、てっきり、ジュリエッタのことで俺を探るための手段だと考えてたんだけど……」
「ええ、最初はそうでした」
「じゃあ――」
「しかし! デヴィッドさんは信頼できる方だとわかりましたので――末永くよろしくお願いしますわ」
――あ、この子、本気だ。目が、超本気だ。
若くして所帯を持ちたくないため故郷から逃げているのに、王都にいても所帯を持ってしまうかもしれない、と冷や汗が流れてくる。
アンジュリカのことは嫌いじゃないが、出会ったばかりなので困る。
できることならちゃんと恋愛をしたいのだ。
「あのような辱めを受け、その姿を見られてしまったのですから、もちろん責任とってくださいますわよね?」
といよりも、破廉恥スライムのせいで責任とってくれ――と言われるのもなにかが間違っている気がするのだが、
「も、もちろんデス」
他にどう返事をしろというのだ。
「まぁまぁ嬉しいですわ」
とりあえず今はアンジェリカが笑顔なのでいいや、と現実逃避をするデヴィッドだった。




