19.いざ火竜のダンジョンへ! 相棒と少女たちに囲まれてやっぱり自分が一番弱いことを再確認したデヴィッドは、こっそりため息をつきました。
馬車に揺られて火竜のダンジョンへ向かうデヴィッドたち。
目的地まで半日以上かかるため、逸ってもしかたがない。気持ちに余裕を持たせることも兼ねて他愛ない談笑を続けていた。
「まさかジュリエッタが学園首席だとは思わなかったよ」
「特別言うことじゃないわ」
「もうジュリーったら謙遜して。あなたの努力の結果なのですからもっと誇るべきですわ」
照れながら大したことではないと言うジュリエッタに対し、すらいちゃんを抱きかかえたアンジュリカが誇るべきだと反論する。
二人はよい姉妹のようで見ていて心が穏やかになる。
デヴィッドには兄弟はいないが、田舎の町では子供は皆兄弟同然であった。そのためジュリエッタたちを見ていると、兄と慕ってくれていた田舎の弟分と妹分たちの顔が無性に見たくなった。
きっと同じく王都に暮らす幼なじみも似たようなことを思っているのかもしれない。故郷に帰ると即結婚――なんてことにならなければ一度くらい両親たちに顔を見せてもいいのに、つい苦笑してしまう。
「ジュリエッタのことにも驚かされたけど、アンジュリカが戦闘に参加することもびっくりだよ。てっきりサポート役に徹するのかと思っていたよ」
「ふふっ、よく言われますわ。実際、戦闘能力はありませんが――爆破が大好きなのです」
なにやら物騒な言葉が貴族令嬢と思われる少女か放たれた。冗談なのか、本気なのかわからずどう返事をするべきなのか迷う。
「もうアンったら、デヴィッドを困らせないで。というかね、おとなしい顔して爆発が大好きとか言わないでよ。普通は引くでしょ」
「好きなものは好きなのですっ」
「あのね、そんなことで意固地にならないでよ」
どうやら研究を主とする生徒だと勝手に思い込んでいたようだが、実際は違うようだ。
アンジェリカは生き生きと語る。
「偶然ではありますが、研究と実験の過程で爆薬を作ってしまいましたの。好奇心から使ってみたところ――素晴らしい爆発力でしたわ」
「うん。私も正直驚いたわね。上級魔法レベルの威力が手のひらサイズの爆薬で起きるんだから、私たち魔法使いの努力ってなに? と思わされたわ」
「想定外ではありましたが今ではすっかりわたくしの力ですし、過分に作れるときにはギルドが買い取ってくださいますので研究資金にもなるのでありがたいことですわ」
実に羨ましいことだが、アンジュリカが特別というわけではない。魔法学校では研究の結果を魔法ギルドからはじまり冒険者ギルド、果てには国が買い取ってくれることが多々ある。
そもそも魔法の研究をする機関は限られていて成果も正直いいものではない。年に数える程度の発表をしているが、デヴィッドの記憶では劇的な発表はそれこそ二度、三度くらいだ。
対して学生は柔軟な発想ができるからか、学生の間に無茶をしておこうという考えからか、突拍子もないことを平気で行うことがある。その結果、新しい魔法の開発、無詠唱ながら強力な攻撃魔法、誰にでも扱うことができる魔導具などを作り出すことに成功している。
学生時代に成果を出すことができれば将来に繋がるため生徒も努力する。学校側も優れた生徒のために場所と資金を提供するのだ。
「学年主席の魔法使いと、上級魔法同等の爆発物使い手……そして」
「ぴっぴっぴっぴっぴっぴ!」
腕を作って拳を振るうすらいちゃんに目を向けるデヴィッドは、間違いなく自分が一番弱いことを確信した。
――やべ。絶対足手まといになるなぁ。
情けないので口にこそださないが、嫌な予感がひしひしとするのだった。
その後、アンジュリカが用意してくれた昼食に舌鼓を打ち小休憩したデヴィッドたちは、夕方手前に火竜のダンジョンへ到着したのだった。




