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第捌種接近遭遇ガールミーツビースト - 2

どうするもこうするも、引き受けると決まった時点で。


「そりゃー、こうなるわよね……」


私はベッドサイドに腰掛けて、己もまた上に登らんと奮闘中の子犬を足で食い止めながら、溜息を吐いた。

どーにか両親の視線を掻い潜って、自室に持ち込むまでは成功した。まあ一日ぐらいなら問題なく匿えるでしょう。こっそり部屋に置いておけばバレないだろうし。


「足が結構太いねえ、大きくなるんじゃないかな」

「いたっ! 歯がまだ鋭いわ」


速攻でバレた。

そりゃもうバレた。私がお風呂から出てきた時には、件の子犬は両親に挟まれてリビングで大はしゃぎ。思わず、目の前が暗くなる。子犬は無差別に鳴く暴れる、という基本原則を忘れていた迂闊さを呪って。他に「寝る」や「漏らす」もあるが、最後のが実行されなかったのはつくづくラッキーだった。

我ながら胡散臭いしどろもどろさで、一日だけ預かる事にしたと言い訳し、両親から滞在許可は得たが、わざわざ許可を得るまでもなく勝手に独自の良好な人間関係を築きつつあるのは、さすが天然タラシたる子犬の面目躍如といった所でありましょうか。


(見つかっちゃったけど、とにかくこれで明日連れていけばオッケーよね)


となれば、今日のお世話をしておかないと。

もう時間も遅いので、預かる時に京さんから貰った犬用ごはん一回分をあげてみる。見た目はドッグフードっぽいけど……まさか人肉とか入ってないでしょうねと不吉な予感が頭を掠める。食べるかどうかちょっと心配だったが、子犬は食器に頭を突っ込んでモリモリとがっつき始めた。

ま、健康そうで何よりです。

急ぎ過ぎなのか、たまに咳。素早くお父さんが水を持ってきた。なんという自然体コミュ力。あとは、こんな季節だから寒さに気をつけておけばいいかな。とあれこれ考えている間に、子犬は早くも食べ終わっていた。今度は首筋が痒いらしい。

まことに一人で忙しい子犬に、私はちちちちと呼び掛けてみる。子犬は、首を傾げるようにしてこちらを見た。それにしても何で微妙に困った顔してるんだろうね、この犬。

仮の寝床はダンボール箱。あとは暖房を一晩つけっぱなしにしておけば、冷える心配はなさそうだ。……私が喉悪くしそうだけど。


「あら。でもこの子犬、どこかで見た気がするわよ」


ダンボール箱にタオルを詰め込みながら、お母さんが首を捻った。そりゃまあ返還目的地が近場ですから。と、うっかり言い出しそうになって口を噤む。あくまで預かった事になってるので、知らない余所の犬だという方向に話を行かせると、面倒になっちゃう。そこは私の巧みな話術により、迷い犬って多いみたいだからねー、と、無難な所に着地させてお茶を濁した。

そんな私の苦労など露知らず、子犬は突然現れた巨大な四角い箱との格闘態勢に移行していた。


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