第陸種接近遭遇キッチンナイフ - 7
箱を机の一番下にしまい、使った事なんかほとんど無い鍵をかけた。
週末が来るまでの数日間を、私はひたすらもだもだしていた。
一日一日が、すごく長い。時計を見ても針は全然進まず、注意力は散漫になり周りの印象は悪くなる。
一日の長さだけじゃなかった。家族に対する後ろめたさたるや、私が生きてきた中で最大級。ここまで素直にかつ心から、お父さんお母さんごめんなさいって気持ちになれるもんなのかとビックリしたわよ。
……裏切ってる、もんね。とんでもなく大馬鹿な事やらかして。
他にも、不意に学校で襲ってくる、自分ひとりだけが孤立した場所にいるかのような感覚にも困った。妖怪コンビニに通うようになってから持ち始めた、私は他とはちょっと違うのよっていう優越感とは、明らかに別モノだ。自分と周囲との間に、世界を区切る透明な壁がある。
これもまたたぶん、罪悪感に近い性質のものだろう。
例えば、私の前には無限の可能性があって。
例えば、私の前には無限の未来が開けていて。
もうね私、そういうのを信じられなくなってるんだ。たかが高校生で諦めが早すぎると怒られても、自分の頭の程度や、頑張れる限度や、希望する将来の範囲が見えてきちゃう時期なのも、間違いないから。
いつまでも夢見る子供じゃいられない、現実を知り始める時期。
でもね、こんな種類の無力さと焦りと寂しさを感じたのは初めてだったから、とにかく戸惑っていたんだ。
帰り道では、図書室や図書館に寄った。
事件に関係する記事が見付からないかと思ったからだ。
でも私の大雑把でアテのない調べ方じゃ見付かりっこなく、単なる時間の無駄遣いに終わってしまった。インターネットならと学校のパソコン室を借りてもみたけど、乏しいキーワードで絞り込めっこない程、似たような事件、もっと酷い事件で溢れ返っていて、余計に気分が重くなっただけだった。
……ただ私にしても、この事件の詳細を突き止めて解決の手掛かりに繋げたいっていうよりかは、とにかく作業をして、やたら進むのが遅い時間を潰したいという気持ちの方が強かったのかもしれない。
本当に、何やってんのかな私。
数日間の心境を総合するんなら、どうしよう、だ。
どうしようじゃないでしょと自分自身で呆れても、他に当てはまる言葉が見当たらない。どうしよう、どうしようと思って迷って考えて悩んだまま、カレンダーの印を確かめる日々ばかりが続く。途中で一度だけ、衝動的に木箱を抱えてコンビニに走りたくて堪らなくなった。




