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第陸種接近遭遇キッチンナイフ - 4

「どうしたの?」

「――えっ?」

「はやく食べちゃいなさい、遅れるわよ」

「あ、うん」


自分でも気付かずに、箸が止まっていたらしい。

元から朝はそんなに食べる方じゃないけど、確かに言われてみれば、いつもより進みが遅かった。

寝ぼけてるんでしょうくらいの目で私を見て、お母さんは洗い物を再開した。お父さんは、もう仕事に行ってていない。お母さんは朝食をお父さんと食べる場合と私と一緒の場合があって、今朝は先に済ませたらしい。休日でなければ、うちは大体いつもこんな感じだった。


寝ぼけてる、か。半分は正しいから、それでもいいか。

ぼーっとしてたもう半分の理由なんて、とても説明できたもんじゃないし。

あんまり食欲も沸かず、私は俯き加減のまま、大半が残っているハムエッグを箸先で突っつく。


『……にて……鈍器のようなもので……され、……んでいるのが発見…………』


つけっぱなしのテレビから流れてくるニュースが、私にとってはやたらタイムリーに聞こえる。

朝から気分の滅入る事件だが、私もお母さんも特に反応はしない。

嫌だね、と口に出して呟こうとさえしない。

どの家でも似たり寄ったりじゃないかな、これは。

よっぽど神経過敏な人でなければ、このニュースのせいで食欲を失くしたりもしないだろう。冷たいというよりは、そんな話に誰もが慣れきってしまっているんだと思う。

どこかで起こった、いつもの酷い事件。そんな風に、自分とは関係ない事だと完璧に他人事で。いつ自分や家族だってそうなっても不思議はないのを認めつつ、自分達にそんな事は起こらないと考えている。

私だって、そうだ。そうだった。

でも、たった一晩明けただけで今は、意外とそういうのは身近に転がっているんじゃないかと思えてきている。

ううん、思えるんじゃなくて、事実その通りなんだろう。

普段の私達はそれに全く気が付かないか、気付いても知らんぷりができるようになっている。だから、基本平和に、のほほんと暮らしていける。いつ来るかも判らない身近な死に、いつも怯えているようになってしまったら、それはもう注意深いんじゃなくて病気だから。


本当に、朝から女子高生が考えるような事じゃないよ。

私は小さく溜息をついた。箸先で目玉焼きを1センチくらい切り取った時には、もう、ニュースは明るいスポーツの話題に移っていた。


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