第参種接近遭遇コードアンドリモコン - 3
ところが、である。
引き受けた後で、私は重大な問題に直面した。
そもそも私が妖怪を認識できたり会話ができたりしているのは、京さんの作ったあの謎空間にいるからだ。霊能者でも何でもない私には、一歩店の外へ出てしまえば、もう妖怪達とコミュニケーションを取る手段がない。相手を見る事も喋る事もできない状態で、いったいどうやって彼らの助けを借りるのよ。
と、そんな難題はコンビニを後にして通りに戻った三秒後に解決した。
なんかそこにいるし、あいつら。
「どーして普通に見えてるのよ!?」
私は叫ぶ。次に焦る。もしかして、いよいよ本格的にやばい能力に目覚めちゃったかと。なんにも無い空間に向かって真剣な表情で声を張り上げる姿は、傍から見れば完全に危ない人で、知り合いには絶対に目撃されてはいけない代物だった。
「ただの人間の目にも映る程度の力は備えてますので、ハイ」
「普段は人目につかぬよう、我々極力忍んでおりまするです、エエ」
「今は見せようと思っているから見えているのです、ハイ」
「エロい意味ではありませんので、誤解しないでください、エエ」
「わかってるってば、何言ってんのよ」
私に見せたいから見えてると、とんでもない事実をさも当然のように語ってくる。
つまりあれね、霊能者じゃない私でさえ、このふたりは目撃できちゃうぐらいの存在だと。
うーん……ひょっとしたらこのひと達、ものすごい大妖怪なんじゃ。
そういえば、京さんもそんなような事を言ってたし。
コード結びにリモコン隠し。名前が適当すぎるだけで、その存在、現象自体は相当メジャー。メジャー、即ち有名どころ、即ち目立つ、人目につく、力がある。
こう考えると、いわゆる強い妖怪さんではある筈だ。
「でも、できる事は……」
「コードを絡ませる事です、ハイ」
「リモコンを隠す事です、エエ」
だよね。
「今更言ってもしょうがないけどさぁ……。
せめて絡まったのを直すとか、失くしたのを見付けてくる妖怪なら、使い勝手良さそうなのに」
「コード解き&リモコン探しですか。そちらは確認されておりません、ハイ」
「なにぶんそちらは滅多に起こらない現象ですので。
特にコードの方は一旦絡むと自力解除は絶望的です、エエ」
「だよね」
私はまた言った。いちいち頷くしかない事が、このふたりを相手にしてると多すぎる。
とにかくそんな感じで話は進み、今夜はもう遅いので、改めて他の日に会おうという事になった。人間の暦も、ちゃんと理解してるようだ。人の生活圏にいる妖怪だから、そういう事にも詳しいんだろう。一から説明しなくていいのは、楽で助かる。
何度も頭を下げて暗い夜道に消えていくふたりを、私は周囲を気にしつつ、控え目に手を振って見送った。次に会う日までに、世間ではどれだけ多くのコードが絡まり、リモコンは隙間に紛れ込むのかと遠い目をして。




