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第弐種接近遭遇ポイントカード - 3

という事で私は、次の週末を使って目的地の商店街へやって来た。

それはカード氏のお願いを叶えにきたのでもあり、単なるお買い物でもある。

空欄が埋められないまま忘れられたのが無念だったんだから、埋めてあげれば不満解消されるってこと。

……単純な理屈なんだけど、何か微妙に納得がいかないような。

京さんみたく人間の姿に化けられる妖怪でも、肝心のお金を調達するのに色々問題があるのを考えれば、私がやるのが一番適任だってのは分かる。

でも、ドラマチックさに欠けるよねー……イマイチ。


「はい、ではこちらで……」


スタンプをリズミカルに押していく店員さん。

スタンプ一押しごとに、願い成就までの距離が縮まっていく。

スタンプのひとつひとつが、私のお小遣いと引き換え。

……なるほど、自己責任、ね。よーくわかりましたとも。

ていうか現在進行形で骨身に沁みてわかりつつあります。これ必要経費とか出ませんよね?


買い物500円につき、1回押してもらえるスタンプ。

一箇所のお店で済ませるのは何となくシャクだったんで、ふたつ店を変えた。

せめてもの幸いだったのは、空欄が残り少しだった事だ。だから、私の寒い懐具合でもどうにかなった。そうでなければ物理的に挫折するしかなかった。わざわざ貯金下ろしてまでとなると、ちょっとね……。

京さん曰く、ほとんど押されていなければ諦めようもあったでしょうが、残り少しという所が無念を後押ししたのでしょう、だって。

言われてみれば、ここまで埋めたなら普通は最後まで埋まる気がする。

捨てたというより、うっかり持ち主が失くしちゃったのかな。

そんな事を考えながら見ている私の前で、最後のスタンプが押された。

世に忘れ去られるスタンプカードは山とあれど、あのコンビニに流れた事で、このカードは役目を果たせた訳だ。

おめでとう。そしてさようなら、私の愛しい英世さん達。


「こちら全部埋まりましたので、それでは……」


店員さんの言葉を聞き流そうとしていた私は、カードの端に異変を感じ取った。

咄嗟に前回の顛末を思い出せたのは、我ながらグッジョブとしか言えない。

あれこれ考える余裕もなく、慌てて店員さんからカードをひったくるように奪い、背後に隠す。

手の中の感触で、カードがぼろぼろに崩れていくのがわかった。

おいおいおい……何十年と頑張ってた湯呑みはともかく、あんたまでそこで力尽きるんかい……。

とにかく危なかった。こんなのを見られていたら、軽く一騒動もちあがっただろう。緊急回避成功にほっと息を吐いて、そして気付いてみれば店員さんが、全力で変な奴を見る目を私に向けている。

うん、そりゃそうだ。


「お、お客様、あの……? カードを回収させて頂きませんと……」

「す、すいません、えーと、そう、交換は次にします! いまちょっと荷物一杯ですんで!」

「……あ、そ、そうですか。でも商店街共通の商品券一枚ですけど……」

「あー、あー……えっと、その、と、とにかく今はいいですっ! それじゃー!」


私は荷物を抱えて、逃げるように店から去る。

声は追ってこない。きっと絶対、ポカーンと背中を見ているんだろう。想像の中の視線が痛い、痛い。

……せめて記念品貰うまでは頑張って欲しかった、ほんのちょっとは取り返せそうだったのに。

50メートルほど小走りに離れて、いっかい後ろを振り返って、んで溜息。

目下新たに現れた問題は、スタンプの願いを叶えた結果こうして両手に抱える羽目になってる大量のパンと、揚げたてメンチカツをどうやって処理するかだった。どうもこうも食べるしかないんだけど、親に何て言おう。保存するにしたって冷凍庫に入り切らないぞ。

善行を為すには、それに比類する労苦を背負わねばならない。

ありきたりっちゃありきたりな格言の重みを、私は今、身を以て噛み締めている。パンとメンチカツで。


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