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総長戦記 009話 弱体化

【筆者からの一言】


またもや主人公不在話

1936年 『満洲と中国』 


 日本による満洲での麻薬栽培と密売は計画的に行われていた。

 満洲国自体が日本の指導で麻薬栽培と密売を行いその利益を国家収入としている。 

 その満洲から華北に流される麻薬密売の責任者が甘粕正彦であった。

 

 その華北から得た麻薬の利益は関東軍に流される分と、麻薬の流通販売に携わった者とで配分されている。


 その関東軍に流された麻薬の利益は主に特務機関の工作費として活用されていた。 

 特務機関の正規の予算は少なく、全く足りなかった事から、麻薬から得た利益で補填していたのである。

 

 関東軍は満洲という日本から離れた地にいるせいか、とかく独自の行動をとりたがる。

 独自に蒙彊方面への工作活動をしきりに行い、この地の中華民国からの独立を目論んでいた。

 その工作費の殆どが麻薬から得た資金であった。

 

 だが、状況は変わる。


 226事件以降は関東軍も閑院宮総長の粛清を恐れ、その行動を自粛せざるをえなかった。

 関東軍に入っていた麻薬の利益も閑院宮総長に押さえられ、これまでより遥かに少ない額しか与えて貰えないという事態に陥った。

 

 その結果、資金繰りの苦しくなった特務機関による蒙彊方面での独立工作は低調になって行く。




 華南と華中における麻薬の密売は、参謀本部第二部に新たに新設された第8課を頭として、上海に設けられた工作機関が行った。


 第8課長の影佐禎昭中佐が選んだ工作機関の責任者は元新聞記者で満州事変にも一枚噛み、更には中国の裏社会にも詳しいという男であった。

 その名を里見甫と言う。


 里見甫が取り仕切る工作機関は第8課では「里見機関」と呼ばれた。

 里見機関は中国の民間組織「青幇」「紅幇」と深い関係を結びイランから密輸した麻薬を密売し大きな利益を上げる。

 里見甫は後に阿片王と呼ばれるほど華南・華中における阿片密売の重要人物となる。


 史実でも里見甫は帝国陸軍の依頼で麻薬売買を行うが、今回の歴史では史実に比べ2年も早く麻薬売買に手を染める事になったのである。


 今回の歴史において「里見機関」が麻薬により上げた利益は、その多くが新設された日本の大陸における利益調整機関「興亜院」を通して新兵器開発に回される事になった。




 参謀本部第二部第8課長の影佐禎昭中佐には偽札偽造の任務も与えられていた。

 この任務名は「杉工作」と名付けられる。


 ドイツから中華民国が使用しているのと同じ印刷機が第三国に設立した偽会社を通じて輸入される。

 日本での偽札偽造は影佐禎昭中佐自身が責任者となり、現地での偽札流通は大陸に渡り民間運送会社を経営していた阪田誠盛社長を協力者兼責任者として行われる事になる。 


 史実においても日本陸軍において「杉工作」という名の偽札偽造工作は行われている。

 一説には当時の日本円に換算して40億円とも70億円とも言われる中国の紙幣「法幣」が、日本の工作機関により生産され、軍や工作機関により中国大陸で使われたと言う。


 しかし、一説によれば日本の偽造法幣は生産コストが高く、刷ればするほど赤字になったとも言われている。

 ただし、それは偽造法幣の登場が大戦後半という日本国内でのインフレが進み、あらゆる物資が高騰する傾向にあった為に生産コストが嵩んだとも言う。


 閑院宮総長はこの偽造法幣の生産については、できるだけ生産コストを抑える事を命じている。

 幸いな事に史実の時よりも日本のインフレが進んでいない事もあり、その点については達成されるが、偽造法幣の完成には、それなりの歳月を要する事になった。

 しかし、それでも今回の歴史では史実よりも3年も早く偽造法幣が登場する事になる。

 

 そして更に後には偽造は法幣に限らずドル、ポンド、ルピー等の紙幣についても行われる事になる。



 こうした日本の工作機関の活動により中華民国での麻薬汚染の実態は史実よりも酷くなり、後には大量の偽札が流通する国となった。

 その状況は確実に中華民国の国力を弱めて行く事になる。


 

 【to be continued】

【筆者からの一言】


麻薬や偽札関連の説明に正しくない部分がありますが、史実におけるその分野について、きちんと語ると長くなりそうなので、強引に簡略化しました。

この歴史では…という設定としてご了承下さい。



史実における裏の世界は複雑怪奇!


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