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総長戦記 0017話 彼の地にて

【筆者からの一言】


内容的には第16話の続きです。

1938年 『中国』


 閑院宮総長の命により組織された土肥原賢二中将指揮する対中華謀略工作の特務機関は「土肥原機関」と呼ばれ、その指揮下に下部組織が編成される。


 華北での謀略工作を担当するのが白井茂樹大佐の「竹機関」

 華中での謀略工作を担当するのが山本募大佐の「菊機関」

 華南での謀略工作を担当するのが和知鷹二大佐の「蘭機関」

 中国の奥地、四川省方面での謀略工作を担当するのが今井武夫大佐の「桜機関」


 史実においても「土肥原機関」と、その下部組織「竹機関(もしくは竹工作と呼ばれた)」「菊機関(もしくは菊工作と呼ばれた)」「蘭機関(もしくは蘭工作と呼ばれた)」は存在している。

 しかし、その任務は長期化した日中戦争を終結させようと様々なルートを通じての中華民国との和平工作である。


 それが今回の歴史では皮肉な事に史実とは全く真逆の任務を与えられた事になる。

 なお、今回の歴史においては史実とは各工作機関の責任者が違う場合や、担当地域が違う場合も見受けられる。

 ただ、全員が史実でも中華民国との和平工作に従事していた事は共通している。


 土肥原賢二中将にしても史実では帝国陸軍において一、二を争うほどの人格者であり、軍紀に厳しく、中国戦線でも部下に対して「奪うな、焼くな、犯すな」という方針を徹底し、中国人を見下したり不誠実な事をする事は無かったと言う人物である。


 中華民国政府において蒋介石のライバルの一人と言われた李宗仁将軍は、実際に土肥原賢二中将と会って話をした時の印象として、彼を諸葛孔明のような儒将の風格があり、土匪(民に害を為す犯罪者集団)などと鬼の如く悪く言うのは間違っていると話している。


 だが、今回の歴史では、皮肉にも土肥原賢二中将は、まさに中華民国政府に対する土匪の行いをする任務を与えられたのである。


 史実において和平交渉工作に関わった者達が、今回の歴史では真逆の任務を与えられた理由は分からない。

 閑院宮総長はこの人選については何一つ語る事はなかったからである。

 ある種の皮肉か、それともただ単に中国通と呼ばれる中国の事情に詳しい者を選んだだけなのか、それは不明である。


 こうした特務機関は、中華民国政府の蒋介石主席に反旗を翻した軍閥や武装勢力に軍資金や武器を提供し反日統一を掲げる要人を暗殺し内乱を拡大させる。


 提供した武器は主に旧中華民国政府軍の物である。

「日華事変」において日本軍は大量の捕虜と共に、やはり大量の武器と弾薬も鹵獲していた。

 そうした武器はまだ使える物ではあったが、日本軍の物とは規格が違う物が多い為、日本軍が装備すると補給体制が複雑になる。

 それ故に、日本軍で使用するよりも武器援助として活用されたのである。

 

 援助した軍資金の出所は「杉工作」によって造られた偽造法幣である。

 偽札を軍資金として渡していたのである。


 つまり、「土肥原機関」は鹵獲兵器というあまり失っても惜しくない兵器と、偽札という陸軍の予算にはあまり負担にならない資金により、謀略工作を行っていたのだった。


 この鹵獲武器と偽札の援助は閑院宮総長の発案である。

 これについては「信用できない裏切者に与えるのは中古の旧式武器と偽札で充分だ」と閑院宮総長が語ったという話もあるが定かではない。

  

「土肥原機関」の工作は一定の成果を上げ続ける。

 裏切りと暗殺と内乱の嵐を中華に撒き散らし、ひたすらその大地を血で染め上げた。

 それにより多くの無辜の民も犠牲となり、いつ果てるとも知れない戦乱は中華の地力を確実に落としていったのである。


【to be continued】

【筆者からの一言】


これにて中国の話は一旦終わりです。

当分、中国の話は出て来ません。

出てこない間にも日本の特務機関の工作により中国は酷い内乱状況に陥っています。

中華民国政府内も色々変動しています。

「日華事変」の敗戦で蒋介石は一旦、政府主席の座を退いたりする等々……

再び中国が大きく取り上げられる時に、その辺の事情は纏めて書かれる事になるでしょう。

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