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残された者達へ  作者: 灰色 有
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壁の向こうの楽園

僕が立ち上がる頃には数人の男女が靄の手前まで進んでいた。

ここからでは後姿しか見えないが、戸惑いのある行動には思えなかった。

もしかしたら彼らは僕と同じ様にこの体験を経験済みなのかもしれない。

辺りを見渡すと23人、やはり状況は前回と同じ様だ。

あれからどれくらいの時が経ったのだろう。

僕の着ている制服に酸で出来た穴や跡は無かった。

あの凄惨な情景は夢だったかと思わせた。

そもそもまだ夢の途中で、本当の僕はバスの中で寝ているだけ、いやそう思いたい。

真っ先に動き出した数人の後を追うように他の人達も靄の方角へと向かう。

僕だけがここでたたずんでも仕方がない。

僕も後列に加わった。


初めの数人は説明を始めた。

要約するとこうだ。

ここには化け物がいて、あの靄の向こうからやって来て、自分達を殺そうと襲い掛かってくる。

私たちにはそれぞれ能力が与えられていて、それで向かい打たなければならない。

この能力はアーティファクトと呼ばれていて、武器の形をしている。

この武器の形は様々で、主に剣、斧、槍、弓からなっているが、まれに違う物もある。

引き出される能力も様々だが、それについてまでの詳しい事はわからない。

武器の生み出し方、能力の引き出し方は危機に陥るか、攻撃性を表せばいい。

すぐに出せる者もいれば出せずに死んで行く者もいる。

「出せる者はすぐにでも出して欲しい、いつ化け物、「アシュラム」が現れるかわからないからな。」

そう言って、語っていた女性は瞬く光を両腕に抱えるとそこから装飾の細かい美しい弓を出した。

「私の能力はアナライズ、瞳に映る物を分析、理解する能力だ。」

それに続いて仲間と思われる3人は続いて自己紹介をする。

「私はエクスプロード、対象の一部を爆破する」

「僕はロッカー、岩を操る?のかな?」

「。。。リフレクトです」

彼らの説明を機にざわつく人々は武器を現す。

単純とも思える自分の新たな能力に驚きながらもファンタジーな体験に笑みがこぼれていた。

この後の惨劇を知らずに。


アナライズは美しい黒髪を単純に後ろで一纏めにしている美少女だ。

彼女の表情は冷たく見えた。

無表情で淡々と説明している様は仲間を増やす為なのか犠牲者を減らす為なのか、その違いすら読み取れなかった。

彼女はじっと靄の向こうを直視し続ける。

「アナライズ、アシュラムは現れそう?」

そう聞いたのはエクスプロードだ。

エクスプロードも綺麗な黒髪を肩で揃えた美人だった。

アナライズと並んで話している様子はとても絵になって、ついつい見惚れてしまいそうになるくらいの。

「あと3分で目視出来るわ、デモンズウォール。これはだめかもしれない。」

「どういうこと!?」

「正確な大きさはわからない、だけど人になんとか出来るとは思えない。」

絶望的な言葉を淡々を話すアナライズに驚きを素直に顔に出すエクスプロード、その姿は対照的だった。

中学生くらいなのかまだ幼い顔をしている少年のロッカーは少女の様な顔で不安そうにうろうろしている。

「聞いた?武器を出せない人は私の所に来て、守れるかはわからないけど無いよりはマシなはずだから。」

胸まである三つ編みを二つ下げたセーラー服の少女は、かけたメガネまで隠れる前髪でとても暗い印象だが、とてもはっきりとした言葉で皆に伝えるとその手に鏡を出した。

「リフレクト。」

そう唱えるとレースのカーテンの様なオーロラが彼女から後に伸びてそれは膜になる。

「この中に居て。」

リフレクトは地面に鏡を置いてそこから離れた。

武器を持った者はアナライズらと共にデモンズウォールを待ち構える。

間もなくデモンズウォールは轟音を響かせて突如現れた。

眼前に収まり切れないくらいの巨大な動く壁は絶望と呼ぶに等しかった。

壁の両側を削りながら進んでくるそれには天使と楽園を描く彫刻が掘られており、進み切った先に天国が待っているという比喩を表しているのかもしれない。

僕はリフレクトの張ったバリアの中で危機感を覚えていた。


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