命の槍
攻撃をし続ける事数分、彼らに疲弊の色が見える。
軍人でもない兵士でもない彼らが何の能力も無く武器だけ渡されてもああなってしまうのは当然だった。
しかしそんな中、赤い人は攻撃をされている中で特に抵抗を見せない。
吐血くらいの攻撃ならしてもよさそうなものだが、溜めているそぶりもない。
恐らくだが血を吐き出すには限界があり、本来は攻撃よりも移動手段に使われる類の物かもしれない。
攻撃が副産物であるとすれば、今受けているダメージによって流している血液や血の池は時間により出せる制約があると推察出来る。
でなければ始めから遠距離で吹き続けるだけで時間はかかれどそれで決着だ。
だからこそ彼らが攻撃をし続ければ血は溜められないし、移動の制約も出来る。
謎なのは槍の彼が攻撃をした時にだけ動きや攻撃の手段が変わった事。
あれは何故だ?
あの時だけ早く動かざるを得なかった…
あの時彼は何をしていた?
僕が思考を巡らせている間も彼らの攻撃は続く。
「どうやったらこいつは死ぬんだ?」
「わっかんねえ!」
「もう死んでんだろうから死なねえんじゃん?」
肉が裏返る間だけのインターバル、軽口を叩く余裕はまだあった。
「いい加減終わりたいんだけどな!」
そういって斧の彼は赤い人の首を刎ねようとした。
しかし硬く、疲れもあり途中で刃は止まる。
すると赤い人の動きは途端に早くなり、腕を掴まれてしまった。
「うわああああああああああああ」
寸での所で振りほどいたが彼の右腕の肘から先は赤く染まっていた。
…そうか!
赤い人は咽喉に急所がある。
血を吐き、肉を裏返すポイントは咽喉なんだ。
あの咽喉を刺して封じたまま攻撃を加えれば勝てるかもしれない。
…しかし問題がある、現状この場に存在するのは剣三振りと斧一丁。
リーチが短すぎる。
咽喉を封じ込めておいてくれといったところで誰が犠牲になってくれるというんだ。
斧の彼は一瞬触れただけで右腕が破壊された。
犠牲になってその後の間が持たなければ意味がない。
槍のリーチがあれば、彼が生きている時に気づいていれば…
せめて僕に扱えるかわからないけど彼の様な槍があれば…
そう思う僕の目の前に光に覆われた槍が浮かんで見えた。
これは…僕の槍…?
光の槍は目にも留まらぬスピードで赤い人の咽喉に突き刺さり、そのまま壁と赤い人を繋げた。
「いまだ!!!」
僕の発した声に応じたのかはわからないが四人は一斉に切りつけ、赤い人が肉片になるまで粉々にした。
酸が散ろうが構わないとするその眼には最後であって欲しい願望が映っていた。