59話
結局丸1日掛かり、ドラゴン族の村へ帰って来たジュンイチ達であった。
「サマルカンド、僕達はこれで帰る事にするよ。休みがもう残り少ないからね。また遊びに来ることもあるかもしれないけど、その時まで元気で」
「ジュンイチ、世話になった。束の間の別れになろう。今回の礼をその内返しに行くので、それまで達者でな」
「礼なんかいいよ。それよりカムリ、これを渡して置くね」
「これは?何ですか?ジュンイチ殿」
「これは、ゴブリンの英雄の楔と武器だよ」
「これは、既にジュンイチ殿の物です。受け取れません」
「これからはカムリ達がこの世界を守らなきゃいけない。元々これは君達の世界の物だ。僕にはもう必要が無くなった。正当な持ち主の君に返すことにするよ。これを使って封印を守ってくれ」
「・・・それではしばらくお預かり致します。またいつ、何時でも、ジュンイチ殿が必要とされた場合は直ぐにお返し致します」
「うん、まあそれでいいよ。じゃあ、またね」
「あー、ジュンイチ、待ってよー、私も帰るわよー」
ジュンイチはサマルカンドやカムリに別れの挨拶をすると、リョウを連れて異世界の門をくぐった。日本へ戻るのだ。
その後、レーコ達はしばらく宴会を続けていたが、リョウが居なくなった為、数日で追い出されるように魔族の土地へ向かい、無事封印を終わらせる事ができた。封印場所は、ケーゴによって立派な建物が造られた。そことエルフ、ドワーフ、ゴブリン、ヒューマン、勿論ドラゴン族の村も魔方陣で繋げられたのであった。
さて、日本に帰って来たジュンイチ達は、残りの冬休みを膨大な宿題を片付ける事に費やした。しかし、今回は後、残り4日間ある。頑張れば徹夜をせずに乗りきれるであろう。翌日から連日、リョウの家で勉強会を行った。
ジュンイチの家で行っても良かったが、娘に飢えているジュンイチの母親のせいで直ぐにガールズトークが始まってしまい、勉強にならないため諦めたのであった。
リオンを倒した後の事は5人で相談していた。それぞれの英雄に自分達の楔を返し、武器を渡そうと決めたのだ。ジュンイチはカムリに、レーコはエルフに、ケーゴはドワーフに、そして、ユーマはヒューマンに渡したはずである。ユーマの楔はダークエルフの物であるが、もはやダークエルフはいない。そこでステファンに預けることにしたのだ。
目の前で一緒に宿題をしているリョウも、楔と武器をドラゴン族に渡したはずである。ふと、ジュンイチはリョウを見つめた。彼女にはもう心操のスキルは存在しないはずである。何故か不思議な気持ちとなり、リョウを見ていると、
「ん?」
リョウが気付き、ジュンイチを見つめ返した。
「いや、何でもないよ」
相変わらずほんわかとなり、思わず口元に笑みが浮かぶジュンイチであった。全く変わらぬ気持ちを大事にしたいなと、ジュンイチは心に誓うのであった。
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冬休みも終わり、また高校生活が始まった。
ジュンイチにも友人が出来、クラスに入ると数人から挨拶された。
「よっ、休み何かした?」
「俺はネット小説読みきったぜ」
「へー、どんなの?てか、宿題やった?」
「やってない。ジュンイチ貸して?」
「いいけど、さっさと写せよ」
などと話していると、
「おはよー、あっ、おはよージュンイチー」
リョウがやって来た。
「お早うリョウ」
「・・へへっ」
「?どうしたの?」
「学校で初めてリョウって、言ってくれたから」
「そうだっけ?」
ほんのり頬を染めるリョウと見つめ会うジュンイチであった。
「よーし、みんな座れー!日直、号令!」
「きりーつ、礼、ちゃくせーき」
「第3学期最初のホームルームを始める。その前に新しく君達の担任になった、神田賢だ。みんな、よろしく頼む」
座りそびれたジュンイチとリョウの前には、新しく担任となったサマルカンドがいた。彼はジュンイチ達に、にっこりと微笑むのであった。
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そこは、深い深い、地の底であった。
彼は指ひとつ動かすことが出来ない闇の中で、蠢いていた。
『失敗しましたー。助けてくださーい。体が溶ける、溶かされて行くー。助けてくださーい・・・』
彼は満足に動くことも、喋る事も出来ないのに、ずっと暗闇の中で祈り続けるのであった・・・




