56話
「ふわぁ、あふ、それではー最後のー作戦会議を始めますぅ」
3日3晩飲み明かしたレーコが、作戦会議を宣言した。
「まぁずは、サマルカンドが、この世界の歴史を語りまーす」
締まらない幕開けであったが、サマルカンドは語り出した。
「少し長い話になる。退屈かも知れないが、聞いてくれ。俺はかなり前に魔族の子供としてこの世に生まれて来た。その頃は魔族とは言っておらず、魔術を使う事も出来ない1部族であった。火を使う事も多くなく、木の実を採取して石臼で引いて食べるような時代であった。
ある日、俺は危険な崖近くの採取を両親に頼まれた。そして、崖から落ちてしまったのだ。腕は折れ、足は砕け、血が流れた。俺は死んだと思った。しかし、気がつくと、元に戻っていた。それから何度も同様な事が起こり、俺は悟った。俺は突然変異だったのだ」
サマルカンドはそのおかしい体質のため、徐々に部族の者から忌み嫌われる様になっていった。本人も何故こんな体なのか分からなかった。次第に部族から離れ、生活をするようになっていた。
しかし、彼はいつまで経っても死ななかった。1世代経った頃、部族の元に戻った彼は、それからは不死王として君臨することとなった。
その後も部族をまとめながら生活をしていく内に、変わった子供を目にする機会があった。火を産み出す子供、風を操る子供などである。そして、その都度その現象を自らの物とし、魔術を産み出したのである。
「俺は部族に魔術を教えていった。そして、周囲の部族から我々は魔族と呼ばれる様になったのだ」
以降魔族は発展した。元来採取などを生業とし、慎ましい生活を好む魔族は他種族へも余り干渉することはなかった。
「長い間王をしてきた俺は、少し生活に飽きてきた。そこで他の者に王位を譲り旅をした。まずはダークエルフの部落に行った」
元々は北のエルフ、南のエルフと呼ばれていたのだが、北のエルフは近くの山脈の照り返しで皮膚が黒いものが多く、ヒューマン族と余り仲が良くなかった為、ダークエルフと呼ばれる様になったそうだ。サマルカンドは彼らにも魔術を伝えた。
更に西へ行き、ドラゴン族の村に行った。彼らには何も教える事ができなかったが、彼らはサマルカンドの不死を崇め、友好を結ぶ事ができた。
更に西へ行き、ドワーフ達と鋼を産み出し、南のエルフとは聖霊魔法を産み出した。
最後に南に行きゴブリン族と会った。その頃ゴブリン族は、ビーストであった。彼らはサマルカンドを畏れ、服従を誓った。サマルカンドは根気強く、彼らに教養を教え、遂に知恵を身につける事ができた。
「俺はこの世界を一週し、また魔族の元に戻って来た。結局ヒューマン族の元へは行かなかった。その頃の彼らはビーストに怯える少数部族に過ぎなかったのだ。ただ一番大きな被害はゴブリンからのものだったため、結果的に彼らは繁栄することができた様だ」
その後、サマルカンドの旅行の結果、6部族の連盟が組まれた。そして、長い間争いのない平和な時が流れたのであった。
「それからの事は、以前多少話した事があるので簡単に言うが、ヒューマン族が魔法を知りたいと訪ねて来たのが始まりだ。そして、魔法で発展した後、魔族を滅ぼし、俺を異世界に飛ばしたのだ」
ここでようやく沈黙が訪れた。サマルカンドが語り終えると、一生懸命話を聞いていたステファンは、鼻をすすった。反対に船を漕いでいたレーコが、目を覚ました。
「ふあぁ、じゃあ、次は私が話すわね」
レーコの話は淡々とした箇条書きの様な話し方であった。
サマルカンドが異世界に送られた後、魔族は直ぐ全滅させられた。その直ぐ後、ダークエルフの部落も全滅させられた。後の部族は100年単位で攻められたが、全滅は免れた。その時にそれぞれの部族の英雄が異世界に飛ばされた様だ。
「そして、それを指揮したのは全てリオンだったようね。何故彼がそんな真似をしたのか、何故長生きが出来たのか、後は推測になるわ。彼はいつしか赤い石を産み出した。そしてその赤い石は、人の命で作る事ができる。そしてその赤い石を使って、寿命を延ばす事ができた。ただ100年単位で人の命を必要とした。だから、100年単位で部族を襲ったと推測できるわ」
それからは、ヒューマン族の天下であった。他の4部族は属国扱いとなり、過酷な税金、過酷な対応、奴隷制度が導入された時期もあったらしい。ただ近年となり、何故か少しずつ待遇の改善が起こった様だ。この変化はレーコにもはっきりした理由は分からない様だ。
「最後に、これだけは確かなことだけど、新しい赤い石は、私たちが持ち去った大きな石がないと作れない様よ。だから、あの石は渡せない、守り抜かないといけないのは確かだわ」
そうレーコは締めくくった。そして、その後はリオン撲滅計画の最終打ち合わせに移ったのであった・・・




